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デジタル活用で成果を出すにはNo.15

クライアントの期待を超える提案力。支えるのは社内のシステム部門

2016/05/16

デジタルパフォーマンスマーケティング領域で成果創出を追求するネクステッジ電通の強みの一つが、社内にシステム部門を抱えていることです。今回は、アーキテクトの泉正太氏と運用を担当する廣瀬一徳氏に、システム部門が運用部門をどのようにサポートしているのか、またネクステッジ電通が持っているテクノロジーについて聞きました。
※株式会社ネクステッジ電通は、2016年7月1日付で「株式会社電通デジタル」となりました。
(左から)ネクステッジ電通の廣瀬さんと泉さん
(左から)ネクステッジ電通の廣瀬一徳さんと泉正太さん

人手による作業を自動化することで、広告運用が効率化、精緻化する

──まずお二人の業務内容を教えてください。

泉:私は、テクノロジーを用いて課題解決を行うソリューション開発部門テクノロジーグループに所属しています。担当する業務を大きく分けると、社内の業務管理システム開発、既成の広告管理ツールをクライアントが導入するときの支援やコーディネート業務、そしてクライアントの課題解決のためのソリューション構築のスクラッチ開発の三つになります。

これらは全て労働集約型の仕事を自動化し、精度を向上させ、業務改善を目指す取り組みになります。

廣瀬:私は部署をまたいだ仕事をしています。一つがクライアントの広告運用の部署です。クライアントによって広告に求める要件が異なりますので、それぞれに最適化したツール導入の提案などもしており、当社のテクニカル担当者と連携しながらクライアントと折衝を行います。そしてもう一つが海外の新しいDSP、広告配信システムを調査し、国内での実現可能性の調査をする、使い方を試すといったR&Dのような業務です。

異なる業務に思えるかもしれませんが、クライアントの広告効率を上げるために、運用やシステム構築をサポートしたり、新しいシステムがあれば取り入れるという点で、同じ軸にあると考えています。

──ネクステッジ電通の中にシステム部門があることの価値はどこにあると思いますか?

泉:ネクステッジ電通の業務は、一つに運用型広告の精度を高めて効果を最大化することです。そのアプローチの大前提として、Google AdWordsを筆頭とした配信プラットフォームの正しい理解と知識が必要です。そこから先、クライアントごとに異なるマーケティング課題への柔軟な対応、運用サイクルの精緻化、PDCAの加速を具体的に実現するためには、テクノロジーの活用が必要となるケースがあります。

もちろん、配信プラットフォームの特性を正しく理解していれば、人手による作業、コンサルのナレッジだけでも、広告の最適化対応としては及第点、必要十分の成果は上げられるかもしれません。しかし、さらにそこにテクノロジーを使えば、PDCAを高速化させ、より一歩踏み込んだ効率的な広告配信ができます。われわれシステム部門の存在意義はそこにあります。

ネクステッジ電通の泉さん
テクノロジーを使えば、PDCAを高速化させ、より一歩踏み込んだ効率的な広告配信ができます。

クライアントが認識する前に、課題を指摘し解決に導く提案をする

──運用部門の立場から、テクノロジー部門があることはどんなメリットがありますか?

廣瀬:テクノロジーでの解決が必要な案件があったときに、社外のSIerのようなところに外注することは可能ですが、その分調整のためのコミュニケーションコストがかかります。市場のサイクルが早い中で、スピーディーに提案、解決していくために内製化が最も効率がいいと実感しています。

私の仕事では、クライアントからテクノロジーに関する対応を求められることも多い。社内にシステム部門があることで要件が発生した時点ですぐに連絡できることが心強いです。

さらに、クライアントが課題と認識していない場合でも、私たちが課題に気付けばシステム部門と連携して新しい提案も行います。現在、たくさんのクライアントに対応するよりも、一つのクライアントにじっくり対応する体制ですので、より踏み込んだ課題解決をしていくように心掛けています。

深く踏み込むことで、クライアントの売り上げと配信している広告の関連性、そもそものサイトの構造の問題などが見えてきますので、クライアントに言われる前に先に提案して、次のフェーズに進むというような「前のめりの提案」をしています。これは、テクノロジーグループと有機的につながっているからこそできることだと思います。

ネクステッジ電通の廣瀬さん
クライアントが課題と認識していない場合でも、私たちが課題に気付けばシステム部門と連携して新しい提案も行います。

──クライアントが気付いていない課題ということではどんなことがありますか?

廣瀬:売り上げを最大化したいというクライアントのニーズに対して、広告効果がどの程度あったのかを正しく計測できなければ、その後どこに投資すべきかが明確になりません。クライアントによっては、過去の指標を元にオーダーを頂くこともありますが、そもそもその指標が本質的かどうか、という指摘から始めることがあります。

例えば、売り上げを見ていると「原因は分からないけれど、売り上げが伸びている」というときがあります。つまり、設けている指標が売り上げと相関していないため原因を特定できないんですね。しかし、指標としていない別の値が相関していることがあります。これは、評価すべきKPIがずれているのであり、評価指標を変えるべきだということになります。

もし別の指標を計測するべきだということになれば、クライアントに提案して承認してもらいますが、広告の計測のためにシステム環境を変えないといけないことがあります。売り上げに貢献しているのはどの施策なのか計測し、投資効果を見ていくためにも指標を正しく設定する必要があるからです。

システム環境の変更は技術部門と連携して対応しますが、必要なときに電話1本、場合によってチャットですぐに相談できることは大きいですね。

人力では不可能な膨大な広告配信データを自動管理

──指標が相関していない、というのはなぜ発生してしまうんでしょうか。

廣瀬:以前、担当させていただいていたクライアントで、認知拡大のための大規模な広告キャンペーンを打ちました。翌月以降、「新規の会員登録、WEB経由の申し込みが前月比、昨年同月比で大きく伸びている。しかし、どこ経由か分からない」というお話がありました。経路をたどれないのは、導入されているシステムの問題ということでした。この場合は、包括的にユーザーの遷移を見られるようにシステムを変えることでコンバージョンにつながる施策を発見し、正しい投資をしていくことを目指しました。

なお、このような問題を抱えているクライアント様の場合、解析ツールを活用出する環境が整っていないことも多いので、Google アナリティクスなど解析ツールのインプリメンテーションも併行してお任せいただくこともあります。

──テクノロジーによる業務の効率化、改善について具体的に教えてください。

廣瀬:ECサイトのクライアントの場合、商品情報を加工して広告配信に使うケースが多いのですが、大規模なECを運営されているクライアントは、商品点数が10万点以上あり、さらにサイズ、カラー、価格などさまざまな情報があるため、到底通常の環境で編集できる量ではありません。しかも、商品ですから売れたものはなくなり、新しい商品が日々追加されていきます。

毎日更新される膨大なデータを人力で加工するのは不可能なので、テクノロジーが不可欠です。そこで、クライアント社内にシステムを構築し、デイリーで商品データを加工してサーバーにアップロードするというスキームをつくりました。

また、ECサイトのクライアントの場合、検索広告のキーワードが数百万件ありますし、必要なキーワードも毎日変わります。また、商品データをクローリングするので、在庫のない商品については広告を配信しないといったことも自動的に可能です。人力では不可能な細かい設定を高いクオリティーで、精緻に毎日運用できる体制を構築しています。

購入意欲に合わせた広告配信量の最適化で、コンバージョンが4倍になった事例も

──具体的な事例についても教えてください

廣瀬:曜日や時間、デバイスによって消費者の購入意欲は異なります。購入意欲はクライアントの指標によって導き方は異なりますが、例えば広告配信の結果としてのコンバージョン、あるいは利益率などから導き出します。購入意欲が一番高まっている時に広告を出稿することで、より効果を高めることができます。

例えば、夕方以降の自宅にいる時間ではパソコンからの購買意欲が高まりますが、お昼の時間帯はパソコンが下がって、スマホが上がる、ということがあります。ユーザーの生活スタイルとの相関から、購買意欲のデータを元に配信量を調整しています。

ユーザーの生活スタイルとの相関から、購買意欲のデータを元に配信量を調整しています。

広告でいうと、Google AdWordsでは購買意欲に合わせた広告配信量の設定ができましたが、Yahoo!プロモーション広告ではできませんでした。Googleで試したところ非常に良い結果になりましたので、Yahoo!プロモーション広告でも対応したいということで、社内の独自システムであるnxdb経由でYahoo!プロモーション広告のAPIと連携できるようにしました。

購買意欲によって広告配信量を調整した結果、広告の効果が31%アップした事例があります。モバイルだけで見ると、約4倍高まった事例もあります。一般的に、パソコンの方が販売量、購入単価が高い傾向があるのでパソコンに合わせた広告を配信しますが、購入意欲に合わせてモバイルの配信量を変えただけで、これだけの効果が出てきたんです。

購買意欲は天候によっても左右されます。外部の天気データのAPIと連携させて、広告の配信量を変動させるということもやっています。このシステムは汎用的に利用でき、クライアントの期待に合わせて指標も変えられます。

──コンバージョン4倍の改善はすごい効果ですね。後編はnxdbについて詳しく伺がっていきます。