映像の進化はスポーツをよりプレミアムにしていく

  • Sugiiyama shigeru pr
    杉山 茂
    スポーツプロデューサー
  • Fukuhara ai pr2
    福原 愛
    卓球選手
  • Kitao ichiro pr
    北尾 一朗
    パナソニック 東京オリンピック・パラリンピック推進本部 副本部長

東京2020オリンピック・パラリンピックを控え、スポーツを映す「映像」の新たな進化が始まった。センサーや画像解析がもたらす、データと映像のリアルタイムな結合は、アスリートやファンたちに何をもたらすのか。数々の歴史に残るスポーツ中継に携わってきた杉山茂氏と、卓球日本代表の福原愛選手、パナソニックの北尾一朗氏が、スポーツと映像の未来を話し合った。

左から、北尾一朗氏(スポーツプロデューサー)、福原愛氏(卓球選手)、杉山茂氏(パナソニック 東京オリンピック・パラリンピック推進本部 副本部長)
左から、北尾一朗氏、福原愛選手、杉山茂氏

スポーツの世界は「超映像情報化」時代へ

 

杉山:スポーツはあくまでアスリートありきで、人々が「あの選手を見るために、会場に行きたい」と思うことが大切。映像技術の進歩は、その気持ちを呼び起こす一役だと考えています。例えば、テレビがカラーになったとき、競技だけでなく選手のファッションに注目が集まりました。「あの選手を見に行きたい」という動機が芽生えたのです。

福原:映像については本当に素人の私ですが…やはり映像技術の発達はスポーツ人気につながると感じます。今はスーパープレー集などをたくさん見られるので、「あの選手のあの技をやってみたい」とチャレンジする人たちが増えてきましたよね。

北尾:私たちも、映像はスポーツを盛り上げて「会場に足を運びたい」と思ってもらうための主要ツールだと考えています。精細な映像を追い求めるのもその一つですし、大型ビジョンの開発も、会場でより楽しんでもらうためといえます。

福原:見ている方だけでなく、選手がより強くなるためにも、映像の進化は大切だと思います。昔は対戦相手のビデオテープを一本一本見て研究していたのが、今はSDカードに保存できるので、合宿先などで手軽に見られるようになりました。また、卓球では各国にビデオ担当がいて、ライバル選手の試合映像を必ず撮影。それを基に、選手の細かな研究が行われています。

杉山:映像から伝わる情報が、勝敗を分ける大きな要素になっている。スポーツの世界は、いわば「超映像情報化」が進んでいるといえるでしょう。

杉山茂氏
杉山茂氏
 

見られなかった情報を技術で可視化

 

北尾:私たちパナソニックは、国際オリンピック委員会(IOC)のトップパートナーを長年務める中で、映像技術を蓄積してきました。それらを生かし、「プレミアム・スポーツコンテンツ」(下部コラム参照)の事業開発を推進しています。

福原:卓球のコンセプト映像(下部コラム画像)を見せていただきましたが、スマッシュ時のボールのスピードが表示されていましたよね。こういった情報は選手も気になるところですし、いろいろな対策が練れそうです。

北尾:東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて、映像技術の力を選手の方に使っていただきたい。そのひとつとして、今まで見られなかった情報を技術で可視化していくことを目指しています。

福原:卓球の場合、対戦相手を研究する際は、いくつもの視点から細かく分析しなければいけません。なので、映像分析の進歩は選手にメリットを与えると思います。

福原愛選手
福原愛選手
 

杉山:映像技術が発達すると、選手それぞれの動きや能力がより明確に伝わります。その結果、選手は現状よりさらに“その上”を具体的に求められますよね。これがもたらすのは、競技レベルの向上。それは現代のスポーツが持つすさまじさといえるものです。

健康スポーツ市場の掘り起こしにも期待

 

北尾:画像解析が進めば、勝敗を決めるポイントや強さの秘訣(ひけつ)も明快になるかもしれません。今後は選手の緊張度合いなど内面的な情報も見られるようにしていきたいですね。

福原:もし選手の体の状態まで表示されたら、ファンの方もより楽しめるかもしれません。私たちアスリートにとっては、まず結果を残すことで皆さんに興味を持っていただかなければなりませんが、その上でこういった技術の力を借りられればうれしいです。

杉山:スポーツの醍醐味(だいごみ)は結果に至るまでのプロセスです。映像や情報を伝える側がそこをうまく扱えれば、東京2020においてファンに新たなスポーツ観を提供できるでしょう。テレビがスポーツファンに残すレガシーになります。

北尾:トップ選手の身体能力を可視化することで、健康的なスポーツの習慣が国民全体に広がっていくかもしれません。

北尾一朗氏
北尾一朗氏

杉山:大いに期待したいですね。これからのスポーツは、「健康と美容と社交」を打ち出していくべきです。福原選手を見て一般の人が卓球を楽しむようになる。それは人々の健康的で楽しい生活にもつながるでしょう。

福原:スポーツにおいて映像がどれだけ大切なのか、今日のお話であらためて痛感しました。これからはもっと映像が進化して、選手が「透明」になっていくかもしれません。その中で私たちは、映像の力を借りながらも、一方では映像に負けないような力をつけたいですね。映像でも分からないような、すごい技術を目指して頑張ります!


 

プレミアム・スポーツコンテンツとは

〜東京2020に向け、新たなスポーツ体験を〜

従来のスポーツ競技映像に、これまでリアルタイムで表示できなかったさまざまな情報を付随させる仕組み。具体的には、センシングによる選手の生体情報、スポーツ画像解析によって得られる競技データ、スポーツ科学による分析情報などを付加・統合する。選手の脈拍や疲労度といった身体状態や、ボールのスピン数、選手の挙動がデータ化され、競技映像と共に表示することを想定している。データ表示により、選手強化や育成のバックアップ、新たなスポーツ観戦の可能性、フィットネスにおける健康スポーツへの応用を視野に入れる。

パナソニックと電通はプレミアム・スポーツコンテンツの事業開発で今年2月提携。2020年を照準に映像とデータをフル活用した、新しいスポーツ体験の開発・事業化を目指している。

プロフィール

  • Sugiiyama shigeru pr
    杉山 茂
    スポーツプロデューサー

    1936年生まれ、東京都出身。59年からNHKディレクターとしてアマチュアスポーツのほぼ全競技をカバー。60年代後半からはオリンピック中継に携わる。98年にNHKを退局。現在はスポーツ番組制作会社で活躍。

  • Fukuhara ai pr2
    福原 愛
    卓球選手

    1988年生まれ、宮城県出身。ANA所属。幼少期から卓球を始める。ロンドンオリンピック女子団体銀メダル。

  • Kitao ichiro pr
    北尾 一朗
    パナソニック 東京オリンピック・パラリンピック推進本部 副本部長

    1962年生まれ、大阪府出身。86年に入社。DSC(デジタルスチルカメラ)事業部長を経て、2014年から現職。東京オリンピック・パラリンピックに向けた新規事業開発の責任者として、数多くのプロジェクトを推進中。

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ