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ツボをおさえる「目」のつけどころNo.3

「うまいもんプロデューサー」の活用で
「生活者」を生産者サイドに

2016/06/03

多岐にわたる地域の課題解決に向けて、今、多様な取り組みが各地で展開されています。 的確な課題抽出と、独自の着眼点から繰り出す卓越した打ち手からは、さまざまなヒントが見えてきます。キーパーソンへのインタビューとともに事例を紹介します。


三重県 紀北町

世界遺産「熊野古道」の玄関口。熊野灘に面し、岬と入り江が入り組む天然の良港は県内でも有数の漁獲量を誇る。背後には大台山系の山々、日本でも屈指の多雨地帯で豊かな森林が育まれてきた。農林水産資源に恵まれた紀北町はまさに「おいしいもの」の宝庫。だが、全国的な知名度はまだまだ。そんな悩みを解決しようと活用したのは…。


 

「生活者」を生産者サイドに組み込む

「うまいもんプロデューサー」の活用

(左から)商工観光課係長 久保有謙氏、商工観光課商工係主任 樋口貴弘氏、ディーグリーン(地元デザイン会社) 東城氏
(左から)商工観光課商工係長 久保有謙氏、商工観光課商工係主任 樋口貴弘氏、ディーグリーン(地元デザイン会社) 東城氏
 

おいしいものは多くあるのに「紀北町といえば〇〇」といった名物がない。その理由を樋口氏は「紀北町は2005年、二つの町が合併して誕生した新しい町。県内外での町名の認知の低さも一因なのでは」と語る。さらに、商談会を開いてもまとまった量が提供できず、ロットが合わないという生産規模の壁もあった。

そんな紀北町の「少量多品目」という特性を逆手に取って講じた策が、電通が運営する生活者参加型の地方特産品開発支援サービス「うまいもんプロデューサー」(うまP)の活用だ。会員数は6万5000人。地方の食に関心の高い会員との交流で信頼関係を深め、高くても品質の良さで買ってもらえる絆づくりを目指し、15年から取り組んでいる。特設サイトでは久保、樋口、東の3氏が「うまいもんプロデューサー紀北町編集部」として、商品情報を発信。「生産者の顔や商品へのこだわりをしっかり伝えたい。また、“町の中の日常は、外から見れば非日常”と意識して記事を書いているうちに、見落としてきた自分たちの魅力を再発見することもありました」と東氏。SNSでの情報拡散や外部Eコマースサイトへのリンク、プレゼント企画などのウェブ上施策だけでなく、試食会など“リアル”の交流も重視して生活者との絆づくりに努めているという。

これまでサイトで紹介した商品は「保紀丸水産の岩牡蠣」「デアルケ200%トマトジュース」など60件以上。生活者と共に開発を進めている商品もある。久保氏は「2年目は、生活者と築いた関係をベースに、外食産業などBtoBにも注力していきたい」とさらなる活動強化に意欲を見せている。

紀北町でトマト農園を営む「デアルケ」の岩本修さん。自家栽培の新鮮な完熟トマトだけを使用し、使ったトマトの半分くらいの重さになるまで煮詰めて仕上げた「デアルケ 200%トマトジュース」の価格は500ミリリットル3542円(税・送料込み)。うまPで着実にファンを増やしている。
紀北町でトマト農園を営む「デアルケ」の岩本修さん。自家栽培の新鮮な完熟トマトだけを使用し、使ったトマトの半分くらいの重さになるまで煮詰めて仕上げた「デアルケ 200%トマトジュース」の価格は500ミリリットル3542円(税・送料込み)。うまPで着実にファンを増やしている。