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鍛えよ、危機管理力。No.10

企業が社会的信頼を失ってしまったら…心構えはできていますか?

2016/05/24

今回は、私たち企業広報戦略研究所がご紹介している「危機管理ペンタゴンモデル」の中の「再発防止力」に関連するテーマ「ブランド・リカバリー(信頼回復)広報」についてです。

■「再発防止力」は信頼回復の大前提

当研究所では、再発防止力を「危機発生の経験と向き合い、より効果的な危機管理や社会的信頼の回復を実現していく組織的能力」と定義しています。危機管理力調査(2015年3月)の結果によると、各企業の担当者が「企業に必要な5つの危機管理力」の中で最も弱いと認識している対応力です。

「再発防止力」は社会的信頼回復のための大前提。何か起こってしまった時にこそ、「パブリックリレーションズ=社内外ステークホルダーとのより良い関係づくり」が問われます。平時から社外の有識者からの意見を聞いたり、社員に危機意識を醸成する機会を設けておくことがいかに重要か、広報担当のみならず、トップを含め全社員が意識しなければならない要素といえます。

 

■信頼回復の遅れ=ブランディングへの影響大

ステークホルダーとの関係性が崩れ信頼を失墜させてしまう企業の不祥事は、メディアの報道姿勢とも相まって、立て続けに起こっているような印象を持っているのではないでしょうか。そして、企業に対する不信感ばかりが増大していく…。 

振り返ると2000年初頭、食品偽装やリコールの問題などが多発し、大きな社会問題になりました。ここ数年においてもさまざまな事象が見られますが、関わるステークホルダーは株主・投資家から社員、消費者まで幅広く、その関係性に悪影響をもたらしています。回復が遅れれば遅れるほど、企業のブランディングに影響していくことは明白です。

今や、企業価値を形成する要素として財務情報のみならず、ESG(環境、社会、ガバナンス)など非財務情報が重要視されるようになってきている中で、何か起こったときの対応が企業の持続可能性を左右していきます。

 

■ “変わる感”を見せる3つのキーワード+1

それでは不祥事が起こってしまった場合、どうしたらよいのでしょうか。緊急時の対応を経て、中長期的なステークホルダーとの関係性修復の取り組みがブランディングに作用します。ポイントは企業・組織として変わっていく状況を、トップをはじめ社員一人一人が伝え続けることです。

“変わる感”を見せる3つのキーはマネジメントの仕組みなどの「組織」、例えば情報管理など起こった事象に関連する設備などの「ハード」、組織風土を変える体制などの「ソフト」です。そしてプラス1は「コミュニケーション」。

それぞれにおける取り組みについてファクトを明確にすることで充実させ、そのファクトを基にバランスよくコミュニケーションを図っていく。ステークホルダーに真摯に向き合い、徐々に理解・共感を得ていくことで、ブランド回復につなげていくことができます。

ステークホルダーとの関係性修復の観点で最も重要なのが「ソフト=人」です。企業風土や社員の価値観をどのように変えていこうとしているのか。最も重要でありつつ、変化をもたらすのに時間を要し、形として表れにくい要素です。だからこそ、組織を担う「人」が基盤となる「ソフト」の部分が変わっていくことをいかに伝えることができるかがポイントになります。

 

■「ソフト(人)」に効くブーメラン効果

企業への信頼が失われていく中で、組織を構成する社員一人一人へのダメージは多大なものです。信頼回復に向けて、真摯に伝え続けていくには重要なステークホルダーの一員である社員の自信と誇りを取り戻さなくてはなりません。人を中心とした取り組みとその変化、一人一人の思いを伝え続けることは、社内外に影響をもたらします。

社外に積極的に伝えていくことも非常に重要な要素です。信頼回復の過程と共に変わっていく状況を社外に伝えることで、徐々にステークホルダーに期待を持ってもらう。それを社内にフィードバックし、社員のモチベーションにつなげていく。そのプロセスそのものがブランド回復に良い影響を与えていきます。

 

もちろん、不祥事といってもその状況、背景はさまざま。どのような事象であったのか、どの主体に、どこまでの影響をもたらすものであったのかによって、信頼回復に向けた取り組みの内容、推進体制、要する時間、伝えるタイミングなども異なってきます。

何か起こってからでは遅いのです。事業活動が社会に与えるインパクトを踏まえたシミュレーションを行い、今一度、信頼回復に向けた「3つのキーワード+1」を考えてみませんか。危機管理担当者をはじめ、コミュニケーションに関わる全ての人にお伝えしたい、とても重要な視点です。