インサイトメモ #51

テレビの視聴量は、女性のライフステージによってどう変わるか?

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    天野 彬
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究員

人生を振り返ってみると、「テレビとの付き合い方はライフステージによって変わってきた」という実感を多くの人が持つのではないでしょうか? どんな番組が見たいかという嗜好性が変わっていくことはもちろん、「どれだけ見るか」という視聴量も年齢やライフステージによって大きく左右されるものです。

現在のライフスタイルに応じてテレビとの関係性やテレビの見方は影響を受けていく―ここではそんな仮説をもとに、特に多様なライフステージを経験する女性を対象として、テレビ視聴の実態に迫ってみます。

テレビ視聴量はライフステージによってどう変わる?

 

テレビ視聴量に影響する要因とは?

日常のメディア行動からさまざまなアクテビィティーに至るまで詳細に分かる日記式調査のデータ「MCR/ex」(ビデオリサーチ)からひもといてみたところ、冒頭の直感に沿うような結果が表れてきました。まず、図表1がその大きな見取り図に当たります。

【図表1】テレビ視聴量に影響する主な要因と影響関係の構造

・左端の「デモグラフィック属性」には、年齢・家族同居状況・仕事の有無や勤務形態に加え、1週間のうちのその日が勤務(通学)日だったか、休日だったかのデータを取り込んでいる。
・上部の「自宅内/自宅外行動」では、通勤(通学)や仕事(授業)の時間など、テレビの視聴量を制約する可能性の高い他の生活行動時間(ルーティン)に関するデータを含んでいる。
・下部の「テレビ意識」「番組嗜好」ではテレビ視聴に対する意識や嗜好するテレビ番組ジャンルを網羅し、「日常生活意識」ではそれらに影響を与えそうな日常生活の意識に関する因子データを取り込んで計算している。

「テレビを見る=ライブ地上波の視聴量」とすると、影響関係をこのように図示することができます。デモグラフィック属性が日常生活意識や自宅内行動などに影響し、それらがまた別の要素に影響し…そしてライブ地上波の視聴量が規定されているという影響関係の構造が見えてきます。

テレビ視聴量に影響する、圧倒的に大きな要因は?

こうした構造に、代表的なスコアをあらためて図示したのが図表2です。

【図表2】効果が大きい10要因

・符号が+ならばその要因が視聴量にプラスに、符号が-ならば、マイナスに働くことを示す。数字の絶対値は効果の大小を示す。
・総合効果(直接効果+間接効果)の大きい要因について、順位を付してその回帰係数を表示した(間接効果・直接効果別の表示は省略)。

図表の①~⑩の数字は、女性のテレビ視聴量の大小に大きくかかわる上位10の要因に順位をつけたものです。ここから分かることを箇条書きでピックアップしてみましょう。

ライブ地上波テレビの視聴量に効いている要因
①年齢が、圧倒的に大きな決定要因となっている。
②仕事や授業など自宅外の行動の時間が長いと、勤務形態によらずテレビ視聴量は小さい。特に⑨フルタイムワーカーの勤務日はテレビ視聴量が小さい。
・他方、習慣的なテレビ視聴を促す③習慣性因子や、⑤ながら視聴性向が高いと、視聴量が大きくなる。
・番組ジャンルでは⑥バラエティー好きが長時間視聴の鍵となっている。
・最終学歴の効果は、仕事の有無や勤務形態によらず大きい。④高校卒⑧短大卒(または在学中)では、大学・院卒(または在学中)と比べ、視聴量が大きい。
・ 専業主婦などを中心に⑥無職の場合は視聴量が大きくなる。
・「テレビの新番組の情報をよく知っているほう」や「今どんな番組が話題になっているかよく知っている」といった⑩テレビ情報探索因子が高いと、ライブ地上波の視聴量が大きくなる。

こうした分析から、個々人のライフステージがテレビ視聴量にいかに影響しているのかが見えてきます。そしてライフステージに従って考察すると、女性のテレビ視聴者における代表的な6つのセグメントが浮かび上がってくるのです。

6つのセグメントに分けられる女性のテレビ視聴者

ここまで紹介してきた「MCR/ex」のデータによってテレビ視聴量と生活行動時間とを定量的に把握しつつ、そこから見えてきた視聴者像に基づいて、電通総研ではオリジナルのグループインタビューを実施しました。そうした定性的な調査の結果も交えて、今どきの女性テレビ視聴者の6つのセグメントを解明しましょう。

これから紹介する6つのセグメントのどこかに、「身近にいるいる!」「自分じゃん」…と具体的な人の顔が思い浮かぶのではないでしょうか。

セグメント①フルタイムワーキングマザー

このセグメントは、出産後も仕事を継続し、仕事と子育ての両立に奔走するフルタイムワーキングマザーです。生活行動時間も「仕事・授業」を中心に長く、6セグメントの中で最長です。
落ちついてテレビを見る時間はほとんどないことがうかがえると同時に、6つのセグメントの中で平日・休日ともに「ながら視聴」の比率が高いというポイントを指摘することができます。

セグメント②パートタイムワーキングマザー

出産後に離職するものの、家計を支えるためパートタイムで仕事を継続しているようなセグメントです。フルタイムワーキングマザーよりも在宅時間が長く、平日のテレビ視聴量も2時間を超えています。また再生視聴量が他セグメントと比較して平日・休日ともに多いのも特徴的です。

セグメント③子育て専業ママ

出産後、子育てに専念するため離職し、育児中心の生活の中で子どもと過ごす時間を楽しむというライフスタイル。一方テレビが大好きで、許されるなら一日中テレビを見ていたいが、今は子どもへの影響を考えて少し控えているといったマインドも持っています。

セグメント④自分磨きシングル

仕事や趣味・友人との交際に忙しい独身女性。テレビ視聴量は、フルタイムワーキングマザーと近い点が確認できます。また特徴的なポイントとして、平日と休日でライブの視聴量に最も差が生まれるのがこのセグメントです(平日83分、休日173分で90分の差)。

セグメント⑤再就職ママ

子どもが小・中学校に進学し、昔ほどは手がかからなくなったことをきっかけに、仕事を短時間勤務で再開。平日は約3時間、休日は約4時間ライブ地上波を視聴しており、ライブとの相性がとても良い層です。

セグメント⑥子ども手離れママ

子どもが小・中学校に進学したことで、子どもが不在の日中は友達とランチをしたり、テレビを見たりするなど、自由な時間を過ごす傾向があります。ライブ地上波視聴は1日約3.5時間です。
また特筆点として、「ながら視聴」の比率は6セグメントの中で最も低くなっています。

今後は「ながら視聴」の女性視聴者層の取り込みが重要

ここまで見てきたように、女性のテレビ視聴者においては、そのライフステージに従ってテレビの視聴量が連動していることを調査からつかむことができました。

一般的に見ても、女性のライフステージとテレビ視聴量の関係では、「晩婚化」や「就業率の上昇」がテレビ視聴量に対してネガティブに作用する傾向が見られます。そしてこの2点は、社会構造のトレンドとして大局的に進んでいくことが高い確率で予想されています。

厚生労働省によると、女性30~34歳の就業率は、2005年には53.7%でしたが2014年には71.0%にまで上昇しています。そして2015年には「一億総活躍社会」といった政策的な方針も示されており、こうした視点からも上記のような構造的トレンドを見定めることができるでしょう。

今回の調査でフィーチャーした「ながら視聴」はその意味で今の時代に合った現象として捉えることができますし、女性の社会進出がより一層進むことで、テレビを「ながら視聴」する女性視聴者層の重要性は高まるだろうという仮説が立ちます。このようにして、ライフステージへの注目から、テレビ視聴行動のこれからを考えるマーケティング的なヒントを抽出することもできるのです。

さらに、電通総研メディアイノベーション研究部実施の別調査をベースにした座談会でも言及したように(詳しくは「ニュース」「メディア」はどう変わる?をご覧ください)、テレビは情報高関与層(全体の20%ほど)以外の80%にも頼りにされる随一のメディアであることが示されています。情報の入手や共有のためのチャネルとして、現代においてもテレビと口コミに頼る層が広範に存在しています。つまり、テレビの今を捉えていくこと、そしてその視聴者層を分析していくことの重要性はなお変わらないことがここに示唆されています。

今回トライしたようなかたちで、テレビの未来を捉える上ではICTの発展といったテクノロジーサイドの変数に加えて、ライフステージの多様化といった生活者サイドの変化を捉えた分析視座を確保することが求められます。そしてここまでの記述から分かるように、本稿内のファインディングスはテレビがいかに社会的な装置であるかということの現在的な証明にもなっているのです。


【電通総研「女性のメディア接触」調査概要】
データ分析調査
●使用データソース:MCR/ex(ビデオリサーチ)
1週間分の日記式生活行動調査データを使用し、テレビ視聴量に影響する主要因を分析

グループインタビュー調査
●日程:2015年3月21日
●対象者:1都3県居住の女性30代
●グループ数:2グループ


 

プロフィール

  • 14580463 1225228107497344 1248304897 n
    天野 彬
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究員

    1986年生まれ。東京都出身。東京大学大学院・学際情報学府修士課程修了。
    2012年電通入社後、マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、2014年から現職。
    スマートフォンのユーザーリサーチを中心に、現在のメディア環境やオーディエンスインサイトを分析している。
    著書に『二十年先の未来はいま作られている』(2012年、日本経済新聞出版社、共著)、『情報メディア白書2016』(2016年、ダイヤモンド社、共著)。その他レポート執筆やセミナー講師など経験多数。

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