ミレニアルズと「未来のスキル」 #09

AR×スポーツが拓く未来の産業のポテンシャルに迫る(前編)

  • Profile fkuda dentsuho
    福田 浩士
    株式会社meleap
  • Web
    能勢 哲司
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 事業開発室
  • 14580463 1225228107497344 1248304897 n
    天野 彬
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究員

「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今存在していない職業に就くだろう」(Cathy Davidson, ニューヨーク市立大学ディスティングイッシュトプロフェッサー)と言われるほどに仕事の未来が不透明なこの時代に、新世代のデジタル・ネイティブ世代=「ミレニアルズ」の取り組みから“未来のスキル”のかたちを模索します。

私たちが今回フォーカスするミレニアルズは、「ヒザがガクガク震えるほどの面白さを創造する」というビジョンを掲げるmeleap代表の福田浩士さん。数々の注目すべきデジタルアプリを開発してきた福田さん率いるmeleapがいま仕掛けるのは、HADOという新世代のエンタテインメントツールです。

ではHADOとは何か?それを理解するためのコンセプトムービーがこちら。ウェアラブル端末とAR(Augmented Reality:拡張現実)を活用した新しいゲームでもあり、これから普及していくであろう新たなスポーツ=「テクノスポーツ」でもあるのです。

HADO:https://www.youtube.com/watch?v=GVE8jvxceSo

スポーツとゲームはメディアを変え産業そのものを推進する力を持つキーコンテンツです。その二つが今後10~20年のスパンでどうアップデートされていくのか、その大きなうねりの中心にいるmeleapの福田さんとともに、未来に向けて求められるスキルやビジョンについて話を深めました。

かめはめ波を打ちたい。子どものころからの夢に技術が追いついた

天野:福田さんは大学院時代からの知り合いで、当時から良い意味で変わった感じを醸し出していたのですが、ここ最近起業して面白いサービスをどんどんローンチしている様子を見ていました。HADOの話を中心に聞いていこうと思うのですが、社会的に見ても、スマホ、タブレットといったデバイスが進化する中で、ヘッドマウントディスプレー(HMD)など体に密着するようなデバイスへの注目度が高まっているという背景がありますよね。

能勢:そうした背景も含めて、今回は情報テクノロジーとスポーツがもたらす生活や産業面でのインパクトにフォーカスしてお話できればと思っています。まずは、自己紹介を兼ねて現在メーンで取り組んでいる事業について教えてください。

福田:私がCEOを務めるmeleapでは、「世界をおもしろくする」というビジョンを掲げていますが、ARを追求することで何かおもしろいことが起こりそうだと考えています。

創業する前は、Kinectとプロジェクターを使ったアイデアで試行錯誤していたのですが、できることが限られていますし、体験的な驚きやより強い革新性を追い求めていきたくなり、ウエアラブルに方針を転換して2014年1月に会社を設立しました。

また、2013年にライゾマティクスの映像を見て、バーチャルと組み合わせることでこんなにおもしろくなるのか、と影響を受けたこともあったと思います。

能勢:そのようにして事業の方向性が定まっていったわけですね。それでは、いまのHADOに至るまでには?

福田:ARとウエアラブルで何をやりたいか考えたときに思い出したのが、子どものころからの夢である「かめはめ波」を打つことでした。

あと、リアルで「モンスターハンター」のようなことができたら楽しいだろうなとか。街にモンスターが現れて、知らない人と団結して一緒に戦う、コミュニケーションするという体験を実現したくて、「HADO」を始めました。

能勢:そういうピュアなモチベーションとテクノロジーのかけ合わせは、最近のスタートアップに多い特徴でもありますね。

福田:HMDや腕のセンサーを付けることによって、ARでかめはめ波を打つことは実現しましたが、その体験を最終的にどう仕上げるか、つまりゲームにするのかそれとも別の形にするのかというところで悩みました。会社には元ゲームプランナーだったメンバーもいて、ゲームにするのかどうか話し合った結果、「スポーツ」として出していこうという方針になりました。それを私たちは「テクノスポーツ」と呼んでいるのですが、ゆくゆくはF1などのモータースポーツがそうなったように新しいスポーツ市場になり得ると思っています。

「テクノスポーツ」はジャンルとして駆動力を持つか

福田:スポーツとして普及すれば、例えば競技の施設利用、スポーツ用品販売、スポンサー、国際大会になればテレビの放送権など、盛り上がるほど経済・社会的な与えるインパクトが大きくなります。

僕は、魔法を使いたい、かめはめ波を打ちたいというこだわりがあって、それを圧倒的現実感で作り出したいという思いがあり、それを実現するのがHADOなんです。

それから「ヒーローになれる世界」って楽しいだろうなと思っていて。ヒーローといっても、リアルに世界を救うというのはあり得ませんが、スポーツ化してみんなが憧れるトッププレーヤーになるというのならあり得ますし、それも1つのヒーローの形だと思っています。

天野:競技を作ってスポーツ市場として盛り上げるというのはおもしろいですね。

福田:はい、目標としては2020年には国際大会を開催して世界が注目するイベントに育てたいですね。プロプレーヤーがいてスポンサーが付く状態です。さらに2030年代には、スポーツという枠からさらに拡張し、人々が日常的に魔法を使ってコミュニケーションできるようにしたいと思っています。

能勢:5年~15年スパンで考えているのは、技術の進化や普及の問題ですか?

福田:特にハードウエアの問題ですね。今は手軽さからスマートフォンを使っていますが、ハードウエアが進化しないと、スポーツとしての体験も進化しないと考えています。

スポーツなら、当たり判定もシビアでないと競技として成立しないですよね。サバイバルゲームが競技になれないのは当たり判定がつけられないことに一因があります。ですから、当たり判定が厳密にできるためには、ハードウエア、ソフトウエアの進化が必要です。

能勢:なるほど。ハードウエア領域への進出については?

福田:ハードウエア開発も、やれる機会があるなら躊躇なくやりたいと思っていますが、ベンチャーの場合は大企業とコラボするのがよいでしょうね。

天野:ゲームにも、梅原大吾氏のようにプロ・ゲーマーと呼ばれる人がいて、スポンサーがついたりすることで彼のプレイが大きなビジネスインパクトを生むものになっていますよね。少し前であれば「プロのゲーマー」は想像できなかったはずで、そう考えていくと、福田さんが言う「2020年になるとプロのテクノスポーツの選手が生まれる」という主張にもリアリティがあると感じられます。こうしたスポーツ×情報テクノロジーのトレンドについて考えを聞かせてください。

福田:超人スポーツ協会(http://superhuman-sports.org/)というものがあるように、情報テクノロジーにこだわらず、テクノロジーと掛け合わせたスポーツは今後盛り上がりますね。ドローンのレースなんかは早く市場ができそうです。

拡張現実と「身体の拡張」

天野:こうした観点から見たHADOの今後の展開を教えてください。

福田:HADOでは身体性を重視しています。指先ではなく、リアルの場で体を使うということにこだわっています。バーチャルリアリティーというよりも、まさにオーギュメンテッドリアリティー(拡張現実)ですね。

例えば、敵から身を隠すのに机の下に潜る、攻撃を防ぐというようなリアリティーだったり、仲間とアイコンタクトしたりパスを出したりすることができるのがおもしろいです。

天野:実際の場所も活かせるというのが面白いですね。そういうアフォーダンスを活かせると、より体験がリッチになる。

能勢:ところで、福田さんはリクルートの出身ということですが、そのときからリアルとバーチャルを追求されていたのですか?

福田:学生の時から身体を拡張したいという強い気持ちがあって、それをどうすればいいか試行錯誤していました。リクルートに入ったのは、いずれ身体拡張のビジネスをやるなら営業力が必要ということでそれを身につけるために入社しました。昔から、年上の男性、おじさんが苦手で話せなかったので(笑)。リクルートに1年いて話せるようになり、起業しました。

天野:実は、学生のころは建築学を専攻されていたんですよね。

福田:はい、繰り返しになりますが学生時代から「身体の拡張」をテーマにしていて、体を拡張する方向の一つの可能性として建築がありました。思想としては荒川修作氏に近くて、三鷹の天命反転住宅は、自分が学生時代に建てられたものですが、可能性を感じる一方で建築に取り組むには費用も時間もかかり限界があるなと思い方針を変えてバーチャル要素を考えました。

能勢:荒川氏の岐阜の養老天命反転地は学生のときに行きましたが、大人が楽しめる不思議な場所ですよね。

福田:動きたくなりますよね。自然にアクションを起こさせる力はすごいと思います。

アトラクション施設にテクノスポーツを導入してみた結果…

能勢:過去にはKinectを使っていたということですが、ARやセンサーの方がおもしろいと思ったきっかけは?

福田:ウエアラブルは表現力が違いますし、革新的なことができると思います。あとはセンシング技術の向上でインプット、アウトプットの質も上がるでしょう。

Kinectかウエアラブルか、というところではセンサー(デバイス)を環境に設置するか、体に設置するかという違いだと思います。今はまだ環境がメーンですが徐々に体に移っていき、いずれ体に埋め込まれるなどして意識しなくなり、また環境に戻っていく、という循環になると思います。例えば壁や天井など至る所にセンサーが埋め込まれているような時代が来るのかもしれません。どこにデバイスが装着されるかは時代によって変わってくるでしょうね。

天野:HADOはイベントで使われているということですが、使った人の反応はどういう感じでしょうか?

福田:ハウステンボスでは常設で展示している他、ショッピングモールなどの商業施設、テーマパークなどに設置しています。利用される方は、子ども、ファミリー、外国人観光客が多いですね。今は対人のスポーツではなく、対モンスターのゲームとして遊んでもらっています。

現在は繰り返しプレーするのではなく1、2回の体験を楽しんでもらう段階ですね。対人戦の競技になれば、10回、100回と体験の回数が変わってくると思いますが。

天野:現状、人同士の対戦というより、モンスターとの対戦という形を取っていますね。

福田:その理由は、やはりビジネスにしやすいということがあります。まずは単発のイベントとして始めて、次に常設に移行していき、グッズ販売なども含めて日常的に通うユーザーを作るという流れです。イベント利用は気軽にプレーできることが重要です。モンスター対戦なら一人でも親子でもできますが、対人戦となると知らない人と対戦することになりちょっとハードルが上がるので。

能勢:プレーした感想などはどういったものが?

福田:楽しんでもらっていますね。人によっては有料でも3回、4回とプレーする方もいます。頂く感想としては、「思ったより難しい」とか、あとは「想像以上に疲れる」といったこともよく聞きます。ゲームと思ってなめてかかると、体を動かすので疲れるんですよ。

能勢:ゲームだと思ったらすでにスポーツの要素もあるということですね。

福田:今はゲームのような感覚、つまりまだ競技としての勝ち負けの感覚ではないようです。こういう体験型のゲームはこれまでのテーマパークの文脈になかったので、新鮮に感じてもらえています。

能勢さんや天野さんも先ほど体験プレーで負けてしまいましたが、うまくやらないと勝てないようになっているので、何回かプレーしてもらいたいというのが狙いです。ある程度の難易度を持たせて、負けても満足できるようにしています。

天野:今までHMDなどを使うというと、作品を見るということが中心だったので、参加型は新しい体験だと思います。今後こうしたインタラクティブなコンテンツは増えていくと思いますか?

福田:増えていくでしょうね。例えば脱出ゲームをとってみても、クリアできる人は少数派です。頭を使い体を動かさないと勝てない、負けても満足というところで近いかもしれないですし、見るだけでなく参加してリアクションがあって納得感がある方が楽しいはずだと考えています。

天野:リアルな空間で遊ぶということもあるので、チームワークも大切な要素ですよね。

福田:アトラクションの事業は、プレイヤー同士のチームワークも考慮しながら作っています。その点はスポーツ競技として育てる上でも大事になりますから。


後編では、こうしたテクノスポーツのこれからのかたち、そしてそれがもたらす市場規模などにも触れながら、ミレニアルズが開拓する情報社会のエンタテインメントのかたちを描き出していきます。

 

プロフィール

  • Profile fkuda dentsuho
    福田 浩士
    株式会社meleap

    東京大学大学院卒業後、株式会社リクルートに就職。2014年に独立し、株式会社meleapを設立。「HADO(ハドー)」という名のARスポーツを開発。空間認識技術やヘッドマウントディスプレイ、モーションセンサーなど、ウェアラブル技術を使用した「HADO」は、体を動かし、仲間と協力しながら対戦する新しいゲームの形として、注目を集めている。KDDIムゲンラボ第7期にも参加。ヒザがガクガク震えるほど世界を面白くする!をテーマに掲げ、活動を行う。

  • Web
    能勢 哲司
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 事業開発室

    中国上海市出身。電通で上海万博プロジェクト、自動車メーカー担当営業を経てクリエーティブブティックへ出向。その後、現在の事業開発領域ビジネスに従事。デジタルファブリケーション分野のビジネス開発からスタートアップ企業との協業、異業種とのネットワーキングに注力している。

  • 14580463 1225228107497344 1248304897 n
    天野 彬
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究員

    1986年生まれ。東京都出身。東京大学大学院・学際情報学府修士課程修了。
    2012年電通入社後、マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、2014年から現職。
    スマートフォンのユーザーリサーチを中心に、現在のメディア環境やオーディエンスインサイトを分析している。
    著書に『二十年先の未来はいま作られている』(2012年、日本経済新聞出版社、共著)、『情報メディア白書2016』(2016年、ダイヤモンド社、共著)。その他レポート執筆やセミナー講師など経験多数。

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