CES Asiaに行ってみた #01

中国でテクノロジーは独自進化を遂げる

  • Kuribayashi pr
    栗林 祐輔
    株式会社電通 グローバル・ビジネス・センター

「CES Asia」が中国・上海市で5月11~13日、開催された(主催=米国Consumer Technology Association<CTA>)。米ラスベガスで毎年開かれる世界最大の家電製品の見本市Consumer Electronics Show(CES)のアジア版で、2回目を迎えた今年は会場の面積も一段とスケールアップ。世界から425社以上の企業が出展し、来場者は3万人を超えた。現地を視察した電通人の視点から、リポートを3回にわたって紹介する。

CES Asia
 

電通グローバル・ビジネス・センターの栗林です。クライアント企業のグローバル案件を担当する中で、いかに最新テクノロジーをグローバルなビジネスにつなげていけるか考えることが多くなってきています。そんな視点で、個人的な思いも交えながらリポートしていきます。

全体を通じて大きなトレンドとなっていたのは、スマートホームやコネクテッドカーなどのIoT、AI、ドローン、3Dプリンターなど。ラスベガスで1月に実施された本家CESの延長ともいえる内容で、目新しさには欠けていたかもしれません。でもそんな中で発見と感じたのが、テクノロジーが中国独特の進化をしている、ということでした。二つのポイントに整理してお伝えします。

① 特殊なメディア環境による進化の独自性

中国の技術を語るうえ上で考えなければいけないのが、その世界でも類を見ない特殊なメディア環境です。中国では、GoogleやFacebook、Twitterなどのプラットフォーム企業が規制されている現状があります。私自身も、滞在中Googleで検索できなかったり、マップやカレンダーを確認することもできないなど手間取ることが多く、規制を実感しました。そんな環境の下、Baidu(百度/バイドゥ)、Alibaba(阿里巴巴/アリババ)、Tencent(騰訊/テンセント)の“BAT”と呼ばれる3強が、着実に進化を遂げつつあるのを目の当たりにしました。

真っ先に訪れたのは中国の検索サイト最大手Baiduのブース。シリコンバレーで開発中の自動運転機能を搭載したスマートカーの展示を行っていました。Baiduは検索機能と連携する形でマップやクラウドサービスを提供していますが、その他にもスマートカー用にさまざまな機能を開発中のようです。世界の言語の中でも難易度が高いといわれる中国語の音声認識の精度を、どれだけ高められるかが課題になると思われます。

CES Asia
 

Alibabaのブースはお隣のヘルス、ライフスタイル、モバイル、フィットネス、ゲーム、ウエアラブルの会場にありました。Alibabaといえば中国のネット通販最大手ですが、今回訴求の中心となっていたのは、VR(仮想現実)やドローンなど最新のガジェットを、傘下EコマースサイトのTmallで取り扱うという内容でした。Tmallがピーク時には毎秒約8万~10万件の取引があるというモンスターサイトであることを考えると、市場に与えるインパクトは絶大です。CESを主催するCTAの調査によると、中国の人々のテクノロジーへの関心の高さはアジアでも群を抜いており、数年後には市場としてアメリカを抜く可能性があるという議論まであるそうです。

CES Asia
 

Tencentはブース出展はなかったものの、実はいろいろなところでの発表に絡んでいました。そのひとつがTencentの展開するサービスWeChatを活用したスマートホーム・ソリューション。展示では、Wulianというスマートホーム・ソリューションのプロバイダーと連携し、WeChatのアカウントにメッセージを送ると家の中のあらゆる電子機器を操作できることが紹介されていました。WeChatは2015年2月時点のアカウント数が11億件超ともはやインフラと化しているので、こういったソリューションが生まれてくるのですね。

Tencentでもうひとつ面白かったのが、インテルの基調講演でも紹介されていたTGP BOXというゲームコンソールです。インテルの第6世代プロセッサを搭載し、Windows 10と独自のオペレーティングシステムが実装されているとのこと。中国は2000年から15年までゲーム機の販売や流通が禁止されていましたが、一方で大規模な大会が数多く開かれるほどゲームの人気は高いようです。Tencentは米国で複数のゲームソフト会社に出資するなどゲーム事業に力を入れており、もともと世界的にも強い影響力を持っています。今回傘下にWeChatという強力なプラットフォームを持つTencentがゲーム機を出したというニュースは、市場に非常に大きなインパクトをもたらすでしょう。

CES Asia

 

② 14億人国家が競う進化の多様性

自動運転やロボティックス、ウエアラブルなど、テクノロジーのバズワードとなっている領域には数多くの企業が出展していましたが、中でもVRとドローンは特に多い印象を受けました。VRは端末本体だけでなく、よりリアルな体験をさせるための周辺機器も目立ちました。

例えば、Pico Neoと小派の2社は何とも大がかりな仕掛けでVR体験を提供していました。

CES Asia
VRのゲームコンテンツが体験できるPico Neoのマシン
 
 
CES Asia
4KでのVR視聴を訴求した小派

VR用のヘッドマウントディスプレーといえば、オキュラスのような箱型のものを思い浮かべますが、印象的だったのはメガネ型を発表している企業が多かったことです。特に中国のスタートアップDlodloのデバイスはサングラスにしか見えないのに、ヘッドマウント型と同じ視野角で映像表現ができるとのこと。

CES Asia
Dlodlo

少し前に、グーグルが支援するMagic Leapの次世代AR(拡張現実)技術のデモ映像が話題になりましたが、ARやその先のMR(Mixed Reality/複合現実)に関する展示も見られました。ちなみに16年2月、AlibabaがMagic Leapに約8億ドルを出資。今後の展開が注目されます。

その他、ラスベガスのCESではみかけなかったCES Asia独特のものなど、目立っていたものをご紹介します。

Mcloud Digital Technology などの3Dテレビ
4K、8Kも美しくて魅力的ですが、個人的にこの裸眼3Dディスプレーの分野はちょっと楽しみです。写真では伝わりづらいですが、本当に裸眼で3Dに見えます。ただ、少し角度がずれたときは酔いそうになりますが…。

CES Asia
Mcloud Digital Technology の3Dテレビ
 

Cowa Robotのロボットスーツケース
持ち主を認識して、歩くと自動でついてくる魔法のようなスーツケース。内蔵されているセンサーで周りの人を避けてくれて、しかも見失ったときには遠隔操作でロックをかけることができるなどの細やかな機能付き。出張の際にこれで羽田空港を歩くとものすごく目立ちそうです。今後クラウドファンディングのKickstarterで出資を募り、予定では今年の9月に販売されるそうです。

CES Asia
 

Intel とLenovoが共同開発するCurie搭載のハイテクシューズ
こちらはインテルのボタンサイズの超小型プロセッサーCurieを搭載した靴型のウエアラブルデバイス。普段の生活にまつわるデータが取れるという点で大きな技術革新ですね。Intelの基調講演で発表されていたのはXSportやゲームでの活用ですが、その他にも無限の可能性を感じます。

CES Asia
 

全体として感じたのは中国のテクノロジーに対する貪欲さ。技術は常にものすごいスピードで進化しています。過去に日本企業が世界で大成功を収めたことは確かですが、技術というフィールドで競争が世界的に広がっている今の時代、成功する要因の一つは発信のスピードだと思います。その点で、中国は非常に勢いがある。今回CES Asiaで見られたように、新しい技術への取り組みも早く、世界への発信も強力です。今回、日本企業の出展がほとんどなかったのは、リスクを含めてあらゆる角度で検討が行われた結果かと思いますが、日本企業が技術であらためて世界を席巻するためには、他国に先駆けた驚きを与え続ける必要があるのだと感じました。さらに、私たち電通人にとっても、このテクノロジーの領域に、世界で勝負をしようとするクライアントをサポートするためのさまざまな解や活用法があると信じています。

次回は電通グループの展示をご紹介します。

プロフィール

  • Kuribayashi pr
    栗林 祐輔
    株式会社電通 グローバル・ビジネス・センター

    1986年生まれ。2011年電通入社。デジタル、営業を経て、2016年からグローバル案件担当部署で、インアウト、アウトインのクライアント案件の推進を手掛ける。ハイテクなイノベーションと、ローテクな自然に興味アリ。

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