18歳のリアル #04

イマドキの「若者」と「大人」は、似ている!?

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    古平 陽子
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター/電通総研 主任研究員/プランナー

選挙権年齢が18歳以上に引き下げられることを受け、18歳を中心とした若者への社会的な関心が一層高まっている。その一方で、「18歳(若者)」と「大人や社会」の間には、分かり合えていない壁のようなものがあるのではないか――。

電通総研18歳プロジェクト「Project18」では、キャリア教育活動を行う認定NPO法人カタリバが提供する「マイプロジェクト※」に参加する高校生との対話を実施。高校生のリアルな姿に迫ると共に、彼らと大人、彼らと社会をつなぐための手がかりをひもとく。

※マイプロジェクトは、身の回りの課題を解決するために、高校生自らプロジェクトを立ち上げ実行することを通して学ぶ、プロジェクト型学習(PBL=プロジェクトベースドラーニング)プログラムです。

 

Project18×高校生:ぴよさんの場合

今回インタビューした若者はぴよさん(女性・仮名)。
彼女は高校の授業の一環としてマイプロジェクトに参加。テーマに取り上げたのは「相撲」で、中高生プラザの場を借りて大相撲にまつわる本棚を作り、相撲を同世代に広める活動を続けている。
ここでは、ぴよさんへの取材から発見した、「高校生」と「大人や社会」をつなぐ手がかりを三つ紹介していく。

 

Findings①

「身近なこと・楽しいこと」で入り口がセットされると、自分から遠い話題やテーマでも興味を持つ!

「高校生が興味を持ちづらい相撲の普及をテーマにしたのはなぜ?」という問いに、ぴよさんはこう答えた。

「たまたまテレビの歌番組で歌う力士を見て、『めっちゃ歌うまい』と思ったのがきっかけ。その後偶然テレビで相撲を見たら、その人が出てて勝ったんです。もと もとスポーツ観戦は好きだけれど、相撲は誰が見ても勝ち負けが分かりやすい。お母さんに『面白いね』って言ったら、『今度国技館に見に行ってみようか』っ て。
国技っていうと入りづらいけど、歌ってた力士をきっかけに私がはまったように、(同世代のみんなにも)もっとスポーツ観戦感覚で楽しんでもら えたらいいな。力士になりたい人も見る人も減っているので、『この相撲離れを食い止められるのは私しかいない!』『私がやろう!』と思ったんです」

ぴよさんの発言で注目したいのは、相撲への興味の入り口が「歌」であったことだ。もともと興味のないテーマでも、歌という高校生の日常や関心ごとに近いきっかけがあったからこそ、相撲の世界に入り込む動機になった。
また、相撲の魅力や面白さを発見できると、「相撲離れを食い止められるのは私しかいない」と課題解決への使命感を得て、アクションを起こしている点にも注目したい。
ぴよさんの場合は母親が相撲への関心を後押ししたが、このように興味を駆り立てるスパイスを大人から与えることができれば、日本の未来や社会課題についても、高校生が面白がって参加してくれるポテンシャルを感じた。

イラストレーション:川辺洋平
 
 

Findings②
大人からの本気の「いいね」が、次のアクションをうながす

では、ぴよさんの「相撲を広めたい」という思いを、アクションにまで移せたのはなぜだろう?

「マイプロジェクトでは、どんなことをやったらいいかをメンターと話し、思いついたアイデアを見せて、『これおもしろそう』とメンターとピックアップしていく感じかな。当初、アイデアはいくつか上がったものの、1カ月くらい何も進んでなくてどうしようって時に、メンターが『アイデアにあった本棚だったらすぐできるよ!作ろう!』と言ってくれて。
メンターは、助けてくれる存在に近いかな。『自分で動かないと変わらないよ』って私たちが動くようにうながす大人や先生もいるけど、最終的に自分が動かないといけないから、『ああ、そうか』で終わっちゃう」

生活の中にSNSが浸透している高校生には、「いいね」と言ってもらえる肯定の感情がまずは必要だ。しかし、多くの人からなんとなく承認されることは、彼らにとっては日常茶飯事だ。
だからこそ、ただの「いいね」ではなく、本気の「いいね」で背中を押してもらえること、アイデアを議論し合える場があることが、アクションやチャレンジにつながる。高校生がアクションに移すには、やはり大人の適切な力添えが欠かせない。

イラストレーション:川辺洋平

 

Findings③
上から目線ではなく、心地よくだましてもらいたい

ぴよさんと話していると、「好きな大人」と「苦手な大人」を明確に線引きしていることに気付いた。その違いは、何なのか。

「バイト先の大学生は、『大学どうするの?』とか自分に一番タイムリーな話を振ってくれる。話題が近いのもあるし、同じ目線で話してくれるから親近感がある。メンターは大人だけど、すごく話を合わせてくれているし、(上手に)だますというか、私が動かざるを得ないところまで強引に引っ張って連れてくる感じ。結局それがいい結果につながっているのかな。反対に、『これ、やれ』って感じだったり、私たちの話を聞こうとしない大人にはがっかりする」

若者とのコミュニケーションにおいて、「上から目線はNG」とよく言われる。ぴよさんも、「話題や目線を合わせてくれる大人に親近感がわく」と答えているが、着目したいのはそこではない。
高校生との対話で必要なのは、「大人からの尊重」(承認されている安心感)と、「心地よいだまし」だ。大人から上から目線で「こうしなさい」と命令されるのは嫌だけれど、大人に引っ張っていってもらいたい。そんな揺れ動く気持ちがあるからこそ、心地よくだましてもらえることを待っている。

 

まとめ

Findings を三つご紹介したが、これらは彼らだけでなく、「大人」にもあてはまるだろう。大人だっていくつになっても、背中を押してくれたり、心地よくだましてくれるような大人を求めている。つまり、「18歳(若者)」は、決して特別な存在ではないのだ。

「18歳(若者)」と向き合うとき、大人は目線合わせやテクニックに気を取られがちだが、テクニックが必要なのではない。「大人」が大人であるが故に言えない本心や、大人同士の間で忘れがちな大事なことに気付かせてくれる、そんな鏡のような存在として「18歳(若者)」をとらえることの方が重要だ。そうすれば、「18歳(若者)」と「大人や社会」の距離はもっと良い関係になる。
「Project18」では、引き続き18歳(若者)のリアルに迫っていく。

 

プロフィール

  • Kodaira profile
    古平 陽子
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター/電通総研 主任研究員/プランナー

    2000年入社。マーケティング・プランニング部門を経て現在は電通総研で生活者・トレンド研究に従事。「女性/ママ/家族」「次世代育成」を専門領域とし、インサイト開発からプランニングまでを行う。
    「電通ダイバーシティ・ラボ」「ママラボ」にも所属し、「Project18‐電通総研 18歳プロジェクト-」「女性活躍推進プロジェクト」「ライフ・ユニットプロジェクト」を手掛けている。

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