アドバタイジングウィークがやってくる! #06

アドウィレポ:岡さん、明日に生かせる「刺激」をください。

  • Izawa
    伊澤 佑美
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 コンテンツ・ディストリビューション部 「週刊?! イザワの目」編集長
  • 池上 翔
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 コーポレートコミュニケーション戦略室

前回までのあらすじ

5月30日から4日間、日本でAdvertising Week(アドバタイジングウィーク/当連載での通称、アドウィ)が初開催されることを知ったイザワ。去る3月からアドウィアジアのキーパーソンを次々に突撃し、アドウィアジアがなんたるかを明らかにしてきた。高まる期待を胸に、いよいよイベント当日を迎える―――。

5月30日、開幕!

イザワ:わー! 増上寺でオープニングガラが開かれると聞いていたけど、素敵―! 雨上がりだから路面に光が反射して荘厳な雰囲気!

アドウィアジアの初日、増上寺(港区芝)でオープニングガラ、つまりオープニングパーティーが開催された
アドウィアジアの初日、増上寺(港区芝)でオープニングガラ、つまりオープニングパーティーが開催された

池上くん:先輩、みーっけ! パーティーを楽しんでくれてますか?

オープニングガラ開会直前まで雨が降り、「雨男」疑惑をかけられる、アドウィアジア広報事務局の池上くん。#雨男
オープニングガラ開会直前まで雨が降り、「雨男」疑惑をかけられる、アドウィアジア広報事務局の池上くん #雨男

イザワ:おー、池上くん。いよいよアドウィが始まったね。ね、ね、今ステージで演奏しているサックス奏者って、20世紀のジャズ界の巨人と言われた、ジョン・コルトレーンの息子、ラビィ・コルトレーン?

ラヴィ・コルトレーン(中央)率いるバンドが生演奏を披露
ラヴィ・コルトレーン(中央)率いるバンドが生演奏を披露

池上くん:そうなんですよ。よく気づきましたね。 って、さては、アドウィのリリースに書いてあったのをチラ見しましたね?

イザワ:あはは、バレたか。

池上くん:それにしても先輩、すごい荷物ですね。

総重量9.8キロのカメラバッグとデイパック。取材のための7つ道具が入っています
総重量9.8キロのカメラバッグとデイパック。取材のための7つ道具が入っています

イザワ:そりゃそうだよ!! 朝からガッツリ取材してるからね。なんたって、今日はアドウィアジアのキラーコンテンツ、TUGBOATによる「CREATIVE ACADEMY」が開講されたのよ!! まだ興奮冷めやらぬ感じでさ! どんな内容だったか聞く? 聞く?

池上くん:この先輩のテンションったら! ノーと言えないですよね(笑)。

イザワ:まず会場が、東京ミッドタウン内のライブハウス、billboard Live TOKYOだったのよね。私、あの会場が好きだから、まずそれでテンション上がっちゃった!

会場内はまるでライブが始まるかのような雰囲気
会場内はまるでライブが始まるかのような雰囲気

池上くん:どんな内容だったんですか?

イザワ:アジェンダは、先日TUGBOATの岡康道さんにインタビューした際に聞いとおりの3部構成で、最初が岡さんと博報堂ケトル・木村健太郎さんのセッション「職人はグローバル化が必要か?」。次が、川口清勝さんがモデレートして、今をときめく3人の女性アートディレクターを招いた「新・女たちのアートディレクション」。最後が、「集結。私はCMをこう作る。」と題して、多田琢さんと麻生哲朗さんがホスト役になって、総勢7人のCMプランナーによるトークセッション。いやぁ、豪華だった! って、池上くんも楽しみにしてますって言ってたのに聞いてなかったの?

池上くん:僕は、広報事務局のスタッフなんで、全部きっちり聞いていられる状況じゃなかったんですよ(涙)。かわいそうな僕のために、シェアしてください!

イザワ:もー、しょうがないなぁ。

海外に出ていい、でも、出なくてもいい

イザワ:最初の岡さんと木村さんのセッションを聞いてびっくりしたのは、タイトルで投げかけている「職人はグローバル化が必要か?」という問いに対して、広告界の人は必ずしもグローバルに行かなくてもいいって岡さんが明言したことなのよ。

池上くん:右も左もグローバル化を唱えている中、ある意味、攻めてますね。

イザワ:そうなの! さっそく、セッションの様子をまとめてみたから読んでみて!


真剣なまなざしで語りかける岡さん。#渋い
真剣なまなざしで語りかける岡さん #渋い

岡さん:今の僕の年齢のこともあるかもしれないけれど、英語がすでに得意な人は別として、苦手な人がこれから英語の勉強に時間をかけて、海外ピッチに出る必要があるのかな。無理に英語を勉強するくらいなら、クリエーターとして他にやるべきことがある気がするんだよね。その時間があったら、相当数の映画も見られるし。

岡さんと話すのは2回目だという木村さん。#とてもそうは思えない #すごいモデレーター
岡さんと話すのは2回目だという木村さん #とてもそうは思えない #すごいモデレーター

木村さん:僕は、学生時代バックパッカーをやった経験があって、国境を越えて影響与えるとか、分かり合うということに自分のテーマがあるので、グローバルな広告やコミュニケーションプランニングにロマンを感じているんです。だから、自分自身にグローバルでやりたい気持ちがあるかっていうことが大切です。でも、岡さんも海外ピッチにチャレンジしていたことありますよね。

岡さん:電通を辞めた後、海外にも出てみたいと思って、ロンドンにタグボートの窓口を開いたんです。海外のピッチの中でも世界同時キャンペーンみたいな大掛かりな場合は、クライアントが直接ピッチの参加社を募るんじゃなくて、世界で今一番イケているクリエーティブエージェンシーはどこか、日々チェックしている専門のコーディネーターによって選ばれた5〜6社が参加する仕組みになっているんですよね。

なので、まず自分たちの存在を知ってもらう必要がある。だから、コーディネーターに毎月、作品集を送ってましたね。するとある時、ピッチに出られることになって、いつものようにグラフィックのカンプをつくってプレゼンしたら、「こんなに完成品みたいなものを持ってきてはダメ。いたずら書きみたいなスケッチとコピーだけで、まずはアイデアだけを見せてよ」と怒られてね、予選で落ちました。

木村さん:岡さんが予選で、ですか。

岡さん:最初はルールが分からなかったからね。でも2度3度やっているうちに、決勝には残るようになりました。でもどうやっても最後で勝てないんです。負けの理由は、僕らが日本にいるからってこともあるように思います。だって、もしそのロンドンのクライアントから急いで来てくれと言われても、日本からだと、丸一日くらいかかってしまうけど、ヨーロッパのクリエーティブディレクター(CD)なら数時間で駆けつけられるからね。東京が重要なマーケットになっているならともかく、多額の予算をかける世界同時キャンペーンのCDを東京に置くなんて、物理的に難しいと思うんだよね。

その証明というわけではないけど、試しに韓国企業による世界キャンペーンのピッチに出てみたんです。そしたら勝った。ヨーロッパのCDよりも、東京からの方がいち早く駆けつけられるからね。でもアジアで勝っても自分としては気分が乗らなくて、海外ピッチに出るのはやめちゃいました。だから僕の海外戦績は1勝7敗。ロンドンに移住すれば、勝てるかもしれないね。英語も話せるようになるし(笑)。それには、外国に骨をうずめる覚悟がないとね、そう甘くないんだなと思いました。


池上くん:岡さんでも海外では1勝7敗って、ある意味衝撃的だなぁ。

イザワ:でも岡さんは、決して悲観的なわけじゃないのよ。今のグローバル化の波に乗りたい人は乗ればいいけど、他の選択肢もあるし、日本で職人技を極めることを否定する必要はない、という考え方なの。例えて言うなら、日本の職人が作った「究極のネジ」を見れば、世界の人もそのすごさが自然と分かる道もあるっていうかさ。

うまくしゃべろうと思わない

池上くん:他に刺激になったことはなんですか?

イザワ:たくさんあって全部は伝えきれないんだけど、私が面白かったのはプレゼンの話かな。

池上くん:どんな話ですか?

イザワ:どんなプレゼンをしたら勝てるかっていう話から、プレゼンにしゃべりのテクニックはいるかどうか、という話題になって…。


岡さん:僕の場合、うまくしゃべろうとは思ってないですね。毎週プレゼンをやってるので、もちろんポイントは分かっているし、うまくしゃべることもできるんだけど、口がうますぎるのは愛されないんじゃないかと思ってね。

でも、アイデアが面白ければ、つまらなく話をするほうが難しいですよ。アイデアが面白くないのに、それを面白く話すことができたら、それは詐欺。いずれバレます。だから、必要以上にうまくしゃべることはいいことじゃないのかも。何を言おうとしているのかさえ分かれば、巧みな弁説はいらないと僕は思うね。

木村さん:自分の企画を実現させたいって思っていたら、そのやりたい気持ちが自然と伝わりますよね。プレゼン技術よりも、中身。まず、自分が信じている企画かどうか、ということが大切ですよね。


イザワ:ってな具合。ともすると、企画書の見せ方の技術で、どうってことないアイデアを素敵に見せることもできたりして、つい目先のテクニックに走りがちな時があるから、なんだか自分を反省したよ。

池上くん:僕も反省します…。ついつい、企画書でカッコつけたくなっちゃうんですよね。

イザワ:だよね。ともかく、学びあり、笑いありだったよ。木村さんから岡さんへの「10個のYES NO質問」とか、岡さんの人間味が出て面白かったなぁ。

木村さんの巧みな質問に思わず、笑いもこぼれる岡さん(左)
木村さんの巧みな質問に思わず、笑いもこぼれる岡さん(左)

池上くん:あぁ、聞きたかった!! 他のセッションはいかがでしたか?

イザワ:川口さんのセッションは、今注目の30代女性アートディレクター(AD)の3人、えぐちりかさん、吉田ユニさん、上西祐理さんが登場したんだけど、同世代の同性として刺激的だったな。女性って、いろんなライフステージがあるので、私自身、将来にある種の不安もあったんだけど、思いの強さというか、芯がしっかりしていれば大丈夫なんだって思った。

パワフルな3人の女性ADを前に、川口さんがタジタジする場面も
パワフルな3人の女性ADを前に、川口さんがタジタジする場面も
左から、上西祐理さん、吉田ユニさん、えぐちりかさん#女性は強い
左から、上西祐理さん、吉田ユニさん、えぐちりかさん #女性は強い

池上くん:なるほど~。

イザワ:えぐちさんなんて、あんなに尖った作品つくってるのに、2人のお子さんの子育て中って聞いて、心の底からびっくりポンだったよ。

池上くん:えぇ!

イザワ:働き方やプライベートのあり方は、人それぞれの考え方があるけど、私はカッコいいと思ったな。上西さんが「会社を辞めても辞めなくてもいい状態にしておくことが目標」と言っていたけど、名指しで仕事が来る状態にしておくことって、これからの働く女性にとって目指すべきひとつの方向性な気がするよ。

CMづくりは鈍重な仕事?

池上くん:そしてラストは、CMプランナー大集合ですね?!

イザワ:そう! 聞きごたえあったな~。ともかく、有名CMを手がけている超多忙な人ばかりで一堂に会する機会なんて、そうそうないだろうから、登壇しているみなさんも楽しそうだった。

TUGBOATの麻生さん(左)、多田さんが進行役を務めるも、個性あふれるゲストたちをまとめるのは至難の業?!
TUGBOATの麻生さん(左)、多田さんが進行役を務めるも、個性あふれるゲストたちをまとめるのは至難の業?!
左から、山崎隆明さん(代表作:リクルート ホットペッパー「アフレコ」、サントリー「細マッチョ」など)、澤本嘉光さん(代表作:ソフトバンクモバイル「ホワイト家族」、東京ガス「ガス・パッ・ チョ!」など)、福里真一さん(富士フイルム「フジカラーのお店」、サントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」など)
左から、山崎隆明さん(代表作:リクルート ホットペッパー「アフレコ」、サントリー「細マッチョ」など)、澤本嘉光さん(代表作:ソフトバンクモバイル「ホワイト家族」、東京ガス「ガス・パッ・ チョ!」など)、福里真一さん(富士フイルム「フジカラーのお店」、サントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」など)

池上くん:で、で、ヒットCMをつくるコツはなんだったんですか??

イザワ:ノウハウというよりも、どう取り組むかという「姿勢」が大切なんだなと思ったよ。スタープランナーって、もっとヒラメキというか、スマートに考えているかと思っていたけど、とんでもなかった。

池上くん:というと?

イザワ:ヒットCMをつくるコツについて、山崎さんは「あきらめずに粘ること」、澤本さんは「根性」、福里さんは「毎日考えること」って言ってたからね。福里さんによると、CMを考えるって「鈍重な仕事」らしいよ。

池上くん:ど、鈍重! イメージとまったく違う表現ですね。でも、一見華やかに見えることこそ、地道な努力が必要なんだろうな…。

左から、権八成裕さん(代表作:サントリー ビタミンウォーター「速水いまいち」、全日本空輸「SMAP沖縄の歌」など)、村田俊平さん(代表作:宮崎県小林市「ンダモシタン小林」など)
左から、権八成裕さん(代表作:サントリー ビタミンウォーター「速水いまいち」、全日本空輸「SMAP沖縄の歌」など)、村田俊平さん(代表作:宮崎県小林市「ンダモシタン小林」など)

イザワ:そうゆうことなんだよね。権八さんも「毎回、ものすごく苦しい」って言ってたもの。「知見や、持ってる世界など、自分の全部で取り組むこと」がいいものをつくるコツだって。

池上くん:うーん、身につまされます…。自分がそこまでして毎日の仕事に取り組んでいるか、反省してきた!

イザワ:村田さんは、少しノウハウの要素も入ってて「みなさんのマネをしないこと」、麻生さんは「自分で自分をマニュアル化しないこと」。多田さんは「スタッフやクライアントに、頼ること」って言ってたな。

池上くん:ふむふむ。

イザワ:岡さんが残したいと言っていた後輩への「刺激」は、いろんな形で、それぞれの胸に刺さったと思うよ。

池上くん:ですね。

イザワ:集結したCMプランナーの中で最年少の村田さんが「先輩たちには憧れも尊敬もあるけど、同じ場所には行かない」って話してたけど、そうなんだよね。今回のアカデミーをどう生かすかは自分次第だよね。

池上くん:そうですね。「スゲー」と感じた人も、「スターも意外とフツーだな」と思った人も、その感情を自分の仕事にどうフィードバックするかのほうが大切ですよね。

イザワ:その通り! そもそも「すごい教え」かどうかって、聞いた中身もさることながら、聞いた時に抱いた「感情」を自分の「指針」や「ものさし」にどう変えて行動できるか、っていう「教わった後」にかかってると思うんだよね。それが「刺激を受ける、生かす」ってことだと思う。

池上くん:先輩、今日は真面目ですね。

イザワ:これも「刺激」の成果です!!

池上くん:その調子で、アドウィの取材を引き続きよろしくお願いします!

イザワ:ウィー!!

左から、TUGBOATの多田さん、川口さん、岡さん、麻生さん。
左から、TUGBOATの多田さん、川口さん、岡さん、麻生さん。「刺激」をありがとうございました!

次回は、アドウィで開催されたイベントやセミナーについてレポートします。

プロフィール

  • Izawa
    伊澤 佑美
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 コンテンツ・ディストリビューション部 「週刊?! イザワの目」編集長

    2003年電通PR入社。メディアリレーションズ部にて、企業・団体に関するプロモーションに従事。2011年にオウンドメディア「週刊?! イザワの目」を立ち上げ、編集長に就任。国内外の最新PR事例を取り上げて解説する特集や、旬な人物に迫るインタビューが人気。
    現在は、編集者、ライター、PRプランナーとして、企業のオウンドメディア運営やコンサルティングのほか、広報業界向けメディアへの寄稿なども手掛けている。東洋経済オンラインにも連載執筆中。

  • 池上 翔
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 コーポレートコミュニケーション戦略室

    2008年電通PR入社。イシュー・リスクマネジメント部にて企業・団体の平時および緊急時のリスク対応に従事。2011年に電通プラットフォーム・ビジネス局に出向し、ICTサービスのプロモーション、プラットフォーム関連事業のリスクマネジメントに従事。2012年から2年間、ディレクション局にて通信会社、食品会社、スポーツ関連企業等、さまざまなセクターのクライアントのPR戦略立案・実行に携わる。2014年から現職。企業広報のコンサルティングおよびPR戦略のプランニングに従事。

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