コンテンツマーケティングの現場から #32

企画って、どうやればいいんですか?どう実施すればいいんですか?

少し前の話になりますが、今年もコンテンツマーケティング部に新入社員が配属されました。
彼の中ではいま、企画、コンセプト、メッセージ、テーマ、構造、切り口など、先輩から指示される抽象的な言葉が複雑に絡まり合って、何をどうアウトプットしたらよいのか、全てが混とんとしています。

「ふわっとした言葉ばかり渦巻く世界で、どうやって企画を考えていったらよいのか」「コンセプトも決まった。メッセージの方向性も決まった。では、これらを具体的なコンテンツ企画にどうやって落としていったらいいのか」。

今回は、彼のような企画初心者に向けて、コンテンツマーケティングのアートな側面について少しお話ししたいと思います。

1)コンセプトワードを使わずに伝えられるか

クリエーティブの訓練でよく言われるのが、「おいしいという言葉を使わずに、おいしいことを表現せよ」という教えです。

当たり前の言葉ではなかなか伝わらない。言葉よりも強い伝え方として、ノンバーバル、つまりテキストのない表現方法もある。こういった一段上の伝え方を実現するためには、伝えるべきメッセージの「意味」を理解し、感覚で捉えている部分を言語化して、カタチにしなければなりません。さらにディテールの端の端まで考え抜くと、言語の論理性の残ったコンセプトが再び直感・感覚に昇華され、受け手の気持ちに届きやすいものとなる瞬間があります。そういう感覚を身につけることも訓練の一つです。

2)切り口はあるか

「切り口」という言葉も、企画においてはしばしば使われます。商品やサービス、あるいは伝えようと決めた情報すなわちメッセージを、どういう視点から捉え、どうやってその視点を保ったまま語るか、といったような意味です。

コンセプトとともに大きなメッセージの方向性が決まったとしても、具体的な企画、アウトプットに落としていく過程にはまだ無数の切り口が存在します。ここを探していくのも、企画する人間の仕事です。

ウェブ時代の文章は、目の前で起きていること、調べたことをそのまま並べる記述がスタンダードになりつつある、という話も耳にしますが、英作文の始めに置く「thesis statement」ように、伝えるべき切り口の軸をまずつくること。これが新しく見えれば、そのまま情報価値にもなる。重要なポイントです。

3)どんな気分にさせたいか

メッセージのロジックばかり追いかけていると欠落しがちなのが、「気分」の部分です。
クリエーティブではしばしば、「読後感」と表現したりしますが、コンテンツに触れたとき、触れた後にどんな気分になってほしいか、を考えることも重要です。

たとえば、わくわくして明日からのエネルギーが湧いてくる感じを残したい、ということもあるでしょうし、忙しい毎日の中でこのコンテンツでちょっとホッとしてほしい、ということもあるでしょう。これらは、実際にコンテンツを制作していく中で、具体的な言葉や口調、デザインや音楽などによって醸し出されてきます。送り手側に、どんな気分にさせたいかという視点がないと、せっかく良いことを伝えているのに全然良いと思ってもらえない、そもそも見てももらえないといったことが起きてきます。でも、送り手が面白がってこの「気分」の部分で遊び過ぎてしまうと、伝えるべきメッセージが伝わらなくなってしまう。このバランス感覚も訓練が必要とされます。

4)その企画をどうやって説明するか

企画のプロであるかどうかがはっきり表れるのは、クライアントやチームメンバーに企画の説明をするときでしょう。あんな感じこんな感じとディテールの説明はできても、なぜその表現を選んだのか、理由の説明がなかったり、一生懸命説明した理由が主観的、個人的だったりすると、あっという間に企画はパワーダウンしていきます。アイデアや、それを支える周辺要素を考えている企画の時点から、なぜその表現が必要なのか考えてみることが必要です。地道な努力ですが、しばらく続ければアタマの中で直感的に結びつくようになります。

5)制作チームにどうやって伝えるか

人はそもそも同じ言葉で伝えても違うイメージを抱くことが多いため、制作チームに伝えることも、技術のいる仕事です。実際にデザインを起こしてくれる人、ライティングしてくれる人、サイトをつくってくれる人に、企画をどうやって伝えるのか。言葉が足りず、なんとなくしか伝えられなければ、なんとなくのレベルのものしか上がってきません。

だからといって、論理的に整理して伝えるだけだと、必要条件を満たしているだけといった無味乾燥な制作物しか上がってこないので、見る人の気持ちを動かすのは難しくなります。ではどうやって伝えていけばいいのか、どうやって修正していけばいいのか。ここにも訓練と技術が必要になります。

 

デジタルの時代とはいっても、企画力やディレクション力は筋力。知識を身に付けるのでは足らず、カラダで訓練して直感を鍛える必要があります。昔のように5年も10年も修業する必要はありませんが、出てきたものを瞬時に見極められる眼力を備えるには、やはり少し時間がかかります。

デジタルマーケティングの知識を追いかけながら、企画の筋力トレーニングをする。使う筋肉が別々なのでなかなかハードですが、そんな左脳的筋トレと右脳的筋トレを同時に経験できるのもコンテンツマーケティング領域の特徴です。

プロフィール

  • Gunji akiko pr
    郡司 晶子
    株式会社電通デジタル 執行役員

    1992年電通入社。クリエーティブ局で、広告・キャンペーンの企画作業に従事した後、コンテンツマーケティングの領域に携わる。現在は、日用品・ファッション・自動車・レジャー・住宅などの業種で、ブランドエンゲージメント、CRM・ロイヤルティ向上の支援、コンテンツを起点とした顧客獲得支援などを目的に、コンテンツ戦略・企画・制作・運用のディレクションを行っている。
    2014年「コンテンツマーケティング27の極意」(翔泳社)、「エピック・コンテンツマーケティング」(日本経済新聞出版社)の2冊を共訳。講演歴は、2013年、2014年のWOMマーケティングサミット、Outbrainパブリッシャーズセミナー、Web&モバイルマーケティングExpo2014秋、2015 ad tech TOKYO internasionalなど。

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