広告領域から、新しいビジネスモデルをつくる UT Picks

  • Hiroki
    中村 洋基
    PARTY クリエーティブディレクター/ファウンダー
  • Juntanaka
    田中 潤
    PARTY エグゼクティブプロデューサー
  • Takamiya norikuni pr
    高宮  範有
    PARTY チーフストラテジスト
  • Aokikengo
    青木 謙吾
    株式会社電通 第5CRプランニング局 アート・ディレクター
  • Naokitanaka
    田中 直基
    株式会社電通 CDC/Dentsu Lab Tokyo コピーライター/クリエーティブ・ディレクター

最近のデジタル広告の中でも、異彩を放っているのが、ユニクロの T シャツブランド「 UT 」の新キャンペーン「 UT Picks 」。
「あの人が選ぶ、君の UT 。」というキャッチフレーズで、タレントや文化人たちに「ピッカー」となってもらい、 PICK UP =キュレーションしてもらった T シャツを月額制で販売する、というビジネスモデルを構築したのは、電通+ PARTY の異色混成チーム。さっそく制作陣に話を聞いてみました。

UTPicksロゴ
(左から)高宮範有(PARTY)、小泉敬太(電通 第11営業局)、田中直基(電通 CDC)、青木謙吾(電通 5CRP)、田中潤(PARTY)、中村洋基(PARTY) ※小泉さんはアテンドということで、いっさいしゃべりませんが、特に気にしないでください。

(左から)高宮範有(PARTY)、小泉敬太(電通 第11営業局)、田中直基(電通 CDC)、青木謙吾(電通 5CRP)、田中潤(PARTY)、中村洋基(PARTY)
※小泉さんはアテンドということで、いっさいしゃべりませんが、特に気にしないでください。

オリエンの瞬間、すでに仮説はあった。

会議風景

——早速ですが、どういうふうに、この「 UT Picks 」を思いついて、提案したのでしょうか?

田中(潤):もともとは、「 UT をどう盛り上げてセールスを増やすか」という、通常の課題設定でした。 今はT シャツの中身で選ばれているけど、この先「 UT だから」で買われるようなブランドになりたいと。実際、ここ数年で UT のクオリティーはぐっと上がってるんです。

中村:UT は、他のユニクロ製品と一線を画したブランドで、あのユニクロっぽい「シュッとした感じ」より、「カルチャー感」が大事、ということも重要なファクター。無地じゃなくて、グラフィック T です。「グラフィック T を着る」ってことは、なんらかのメッセージやカルチャーを帯びるんですね。

高宮: CMありきの企画 ではなく、デジタルファーストということだったので、いわゆるスペシャルサイト的なキャンペーンから一個抜け出たものを提案したい、とオリエンを聞きながら思っていました。

中村:当時「サブスクリプションモデル」 (定額モデル )というのがマイブームでして。Spotify 、 Apple Music 、 Hulu といった「ライセンスを付与するのみで、使っても別に減らないコンテンツ」はサブスクリプションになりやすいんだけど、減ってしまうものも月額制になったら面白いんじゃないか?と考えていました。たとえば牛丼とか。「サブスクリプション牛丼ってどうかな?」とか。

高宮: オリエンのときに、もうすでに盛り上がってましたよね。「 T シャツのサブスクリプションってないのかな?」って。「人に選ばせる」という軸ができたのは、実はその後です。 「 airCloset 」 などの先駆者もいたので、挑戦しがいがありましたね。

UT って、実は 1200 種類もあるんです。多すぎて選べない。そこで、「見立て」「目利き」のような人たちが毎月送ってくれる、というアイデアになっていきました。クオリティーと量が担保されているUTだからこそ成立する企画だな、と。

会議風景

このアイデア、なんで通ったんでしょう。

—— プレゼンは、順調に通ったのでしょうか? いわゆる広告の分野で新しいビジネスモデルを提案するのは、とても大変そうな印象を受けるのですが … 。

田中(潤):実は、はじめに3案プレゼンしたんですが、全部新しいビジネスモデルの提案でした。

田中(直):そこがすごいですよね。ぼくと青木さんがチームに呼ばれたときも、ある程度コンセプトが固まっていて、そのあと出したアイデアも自然にビジネスモデルになった。

中村:以前、ラジオ 「澤本・権八のすぐに終わりますから。」 でゲストに来てくれた堀江貴文さんが「音楽業界のタイムマシン経営ができる」と話してました。たとえば、 Spotify のような月額課金、初音ミクのような N 次創作、 AKB48 のようにCD を投票券として売る、など新しい試み、はたいがい音楽業界から始まっている。そこで成功したモデルを他の業界でトレースする、というのは一つの発想法としてあると思います。

高宮:プレゼンはすんなり通りました。現代の時流に合っていたのかな、とも思います。社長をはじめとしたユニクロの皆さんがすぐに決断してくれたのが大きかったですね。

中村:ぼくらがどう、というより時代なのかもしれません。ひと昔前の、 Flash でスペシャルサイト作っていた時期には通らなかったと思う。みんなが少しずつ「あ、デジタルのうまい使い方ってこっちなんじゃないか」ということを考えているはず。

田中(潤):そのあとの、月額制を現行のシステムで実装するなどのこまごました部分は、とっても大変でしたけどね(笑)。

ぶっちゃけ、どうですか?

—— というわけで、「 UT Picks 」をローンチしてみた結果、反響は?

高宮:パブリシティー面は、ここ数年ではダントツの結果ではないでしょうか。「ユニクロが新サービスを発表」というニュース性のあるトピックの上にアイデアを積み重ねて、メディアにどう報道されるかを常に意識しながら、コンテンツを作っていきました。ビジネス、エンタメ、ファッションなど、複数のカテゴリーで報道されたのが大きいですね。

田中(潤):記者発表は、テレビ局以下一同ズラーッ!です。

記者発表

—— 気になる、実際の売り上げのほうはどうなのですか?

中村: 突いてくるね ( 笑 ) 。売れてます。

高宮:たとえば開始2週間で売り切れたピッカー( UT を選ぶ人)さんもいらっしゃいます。2カ月たって、売り切れがドンドン増えてきていますね。また「新規率」が高く、 60% は今までユニクロを使っていなかったユーザーでした。

中村:もともとこれ、メチャクチャおトクになるように設定しているんです。 990 〜 1500 円の UTが、全部 990 円で、しかも送料無料ですからね。ぼくと高宮で、ユニクロの T シャツの原価計算を勝手にやって、「この金額だったらこのくらいイケます!」と、クライアントと擦り合わせたりしました。クライアントもぼくらの適当な計算をホンモノの数字に置き換えてくれました。

田中(直):反響といえば、 SNS の声を見てみたりすると、すごい活発ですよね。ユーザーから「この人もピッカーにして!」と早くも叫ばれていたり(笑)。 Instagram にも、ズラーっと、青木さんが提案した「手紙」とTシャツの写真が並んでます。

青木:ちょっとしたことなんですが、毎月ピッカーから UT が届くとき、サインつき「手紙」と同時に、 UT Picks 専用のパッケージで送られてきます。

UT Picks 専用のパッケージ
UT Picks 専用のパッケージ

田中(直):これ、すごく効いてるよね。もらってすごくうれしい。

青木:「 ピッカーが選んでくれたTシャツが毎月届く」って、一種のサプライズ、というかイベントだと思って。その高まる気分をつくりかった、というのはあります。届いたときに、がっかりさせたくないな、って。購入された方は気付かれたかもですが、なにげに、カード裏のデザインは毎月変えてます … !ぜひ、コンプリートしてください。

中村:あと、ローンチして分かったのは、「ギフト用途」というニーズが高いということ。ピッカーには「 BOYS /GIRLS 」といったタグがついているのですが、そのタグに応じて子ども向けだったり、人に買ってあげる、というケースが結構あります。ぼくも シシド・カフカの GIRLSを自分の子どもに使ってます。毎月毎月ギフトが「これでもか」という感じで贈られてくるので、いいですよ(笑)。

高宮: 「ピッカーを選ぶところから、実際にUTが届くまで」ユーザーの新しい体験を作れたなという実感はあります。ただ、いちばん難しいところは、いい走り出しだった、このサービスをしっかりグロースしていけるかということです。ここは、本当にぼくらだけではなく、ユニクロさんと一緒になってやっていけるか、ということになります。インタビューとなると、ついつい良いところばかりを言いたくなってしまいますが、これが次の課題かもしれませんね。

服をえらぶのは、たのしい。

—「UT Picks 」のムービーの世界観や撮影方法でのこだわりはあったのでしょうか?

UTPicks
画像をクリックすると動画をご覧いただけます(https://www.youtube.com/embed/yf5yLo3N2k8)。

田中(直):リアルさを大事にしました。 T シャツだらけの部屋を作って、抜き打ちで選んでもらっているさまを、長回しで撮って、編集しています。よく、広告の撮影だと、事前に選んでおいて、そのあと「さも選んだかのように撮る」とかありますけど、それはしなかった。「ウソに見えないこと」と、選んでいる熱量を大事にしたかったんです。

高宮: 全員分撮るのは、すごく大変でしたよね。カメラの向こう側に、ぼくらが話し相手役というかインタビュアーをして、会話を引き出しながら撮っています。

中村:まず最初に、フリートークで、その人ならではのコンセプトを引き出すところから、始めましたね。

田中(潤):みんな本気で選んで、本気でコメントしている。トークしながら撮影しているので、編集時に「オレの声、邪魔だな」みたいな(笑)。

田中(直):いわゆる「ユニクロっぽい」、なんか整然でシンプルでシュッとした感じ …は避けて、リアルな設定を、と考えて、このシチュエーションにしました。また、ピッカーによって、編集を変えて、それぞれの個性が出るように工夫しています。 

撮影して意外な発見があったのは、「みんなが UT を楽しそうに選んでいるさま」から、「服を買う楽しさの本質」を感じたことです。「ああ、服を選ぶのって、楽しいんだな」って。それと、登場するTシャツはもちろん全て UTですから、ピッカーが選んでいる様子を通じて、UTが魅力的に見えたのはよかったですね。UT Picksを注文しなくても、この映像をきっかけに店舗に足を運んでくれたり、ウェブでチェックしてくれれば、UT全体の売り上げにはつながっていくので。

—撮ってみて、特に印象に残っているピッカーは?

田中(直):はじめしゃちょーは、すごく彼らしくていいです。

はじめしゃちょー
画像をクリックすると動画をご覧いただけます(https://www.youtube.com/embed/yPxv_1f8T-o)。

中村:各ページの編集も、渡辺潤平さん監修のもと、河合佐美さんが異常ながんばりを見せてくれていて、単純に読み物としてすごくおもしろい。贅沢です。

青木:あと、リアルな中に 「宇宙兄弟」の六太と日々人が交じってますよね。

田中(潤):宇宙兄弟は、大変でした。二次元の六太さんにTシャツを選んでいただくわけですから。ウェブサイト上で、全員、同じ動きをする演出をしているのですが、その動きもやってもらってます。実現するために、いろいろな方にご協力いただきました。

六太・日々人

高宮:ちなみに、けっこう多くの人がスマホでこのサイトを見ているのですが、 パソコンで見ると「コマ撮りアニメーションがすごい!」と驚く方がかなりいます。スマホでも見られるように、ユニクロのSNSで徐々に公開していってます。

田中(潤):ここに書ききれないスタッフの方々、ユニクロとの信頼関係がなかったら成立しなかった企画ですね。

中村:毎月、「今月はこの T シャツだったのか!」と公開されていく仕組みなので、ぜひ毎月チェックしてみてください。そこから買ってもおトクですよ!

プロフィール

  • Hiroki
    中村 洋基
    PARTY クリエーティブディレクター/ファウンダー

    電通に入社後、初期はバナー広告で大量の作品をつくっていたが、その後、インタラクティブキャンペーンを主として手掛けるテクニカルディレクターとして活躍。
    2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。
    人と人とのコミュニケーションに「遊びのルール・しくみ」をひとつ足すことで、単なる日常がエンターテインメントに変わる、という手法に興味を持つ。エンジニア出身であることから、プログラミングやデータが持つ面白さと、SNSなどのコミュニケーションを利用したアイデアを組み合わせてつくる、新しいエンターテインメントを模索している。国内外250以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。TOKYO FMのラジオ「澤本・権八のすぐに終わりますから。」毎週ゲストパーソナリティー。

  • Juntanaka
    田中 潤
    PARTY エグゼクティブプロデューサー

    1979年生まれ。広告代理店を経て、2013年からPARTYに参画。最近の仕事に、コードアワード2016でベスト・イノベーションを受賞した、歯みがきIoT「G・U・M PLAY」や、最新のディープラーニングテクノロジーを利用して、さまざまな「見た目」に対する抽象的な評価を数値化するPARTY自社開発案件の 「Deeplooks」などがある。

  • Takamiya norikuni pr
    高宮  範有
    PARTY チーフストラテジスト

    戦略立案から、企画制作までを担当。「ヨコかな?」「 Song Wig 」「 Deeplooks 」「 mnmm 」 などのPARTY自社開発案件の広報戦略も担っている。Delphys / BlueCurrent Japanを経て、2015年PARTYに参画。PRや体験を起点とした戦略立案、クリエーティブ制作を得意とする。

  • Aokikengo
    青木 謙吾
    株式会社電通 第5CRプランニング局 アート・ディレクター

    1979年茅ヶ崎生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。
    2003年電通入社。グラフィック・映像・空間・デジタルなど領域をまたいだプロジェクト型のアート・ディレクションを実践。カンヌ国際広告賞祭ファイナリスト、日経広告賞・部門賞など受賞。

  • Naokitanaka
    田中 直基
    株式会社電通 CDC/Dentsu Lab Tokyo コピーライター/クリエーティブ・ディレクター

    2004年電通入社。コピー、映像、コンテンツ開発、デジタル領域など、課題に適した手段でニュートラルに企画する。受賞歴にCannes Lions、New York Festival、ADFEST、Spikes Asia、ACC (Film、interactive)、TCC新人賞、グッドデザイン賞、Yahoo! internet creative award、TIAAなど。

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