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アクティブラーニング こんなのどうだろうNo.21

ロシアの学校では、
夏休みが3カ月ある。

2016/07/28

電通総研に立ち上がった「アクティブラーニング こんなのどうだろう研究所」。アクティブラーニングについてさまざまな角度から提案を行っていきます。このコラムでは、ラーニングのアクティブ化に活用できそうなメソッド、考え方、人物などを紹介していきます。

 

日本の小学校に転校して5月がやってきた。しかし、誰も夏休みの話をしないではないか。6月になってもいっこうその話にならない。え、夏休みはいつなの?と聞くと何と7月末まで学校があるというのだ。信じられなかった。 夏なのに、休まないなんて。

ロシアの小中高大の夏休みは3カ月間。6月から8月までずっと休み。そう、文字通りの「夏休み」。5月の後半になると夏休みのことでみんな頭がいっぱい、わくわくし始めるのだ。

ちょっと長過ぎるって? よく学校に復帰できるって? いえいえ、全然余裕です。むしろ、それくらい休むとちょっとそろそろ学校に行きたいなあなんて気持ちも芽生えてきます。

では、ロシアの子ども時代、夏休みに何をしていたのか。メジャーな4つを紹介しましょう。

ロシアの3カ月ある夏休みの過ごし方

○田舎(郊外)のおばあちゃん・おじいちゃん家

この過ごし方は、日本にもありますよね。田舎または郊外に住むおばあちゃん・おじいちゃんの家にしばらくステイする。多くの場合、畑を持っているのでそこで一緒にいろんな野菜や果物を育てる。

私のおばあちゃんも畑を持っていて、マンションの窓の外から見える畑はいつでも見張っていられるから、キャベツ、イチゴ、いろんなウリ科など特に楽しみな野菜や果物を植える場所になっている。

 家からちょっと歩いた所ではジャガイモを育てていた。このジャガイモは趣味で育てるものでも売るためのものでもない。冬の大事な食料だ。なぜならば、ロシアでは、冬は野菜が採れないし、ほとんど買えなかったからだ。だから、夏の間に育てたものを冬の間に食べる。蓄えないと、食べられないかもしれない。いろいろな種類のジャガイモなどを一生懸命育てるのだ。

ベランダにはトマトもあった。ジャガイモ以外の野菜たちは酢漬けまたは塩漬けにして冬に食べる保存食になる。食卓の彩りだ。夏が終わりに近づくと、トマト、キュウリ、ウリ、キノコ、ジャム、コンポートなどが詰まったビンがたくさん家の中に並ぶ(もちろん、今ではスーパーにいけば何でも買えますがこれは約25年前のこと)。

孫たちは、おばあちゃん・おじいちゃんの畑仕事を一生懸命手伝う。野菜や果物の育て方から、肥料のこと、害虫とその退治法。秋が近づくと酢漬けやジャムの作り方などさまざまなことを学ぶ。毎年やれば自然と知識がたまっていく。

リンゴの木やベリーを育てるおじいちゃん・おばあちゃんもいる。それ以外にも編み物、刺しゅう、木細工、伝統楽器の演奏などいろんなことを教えてくれる。親が忙しくてなかなかできないこともここではたくさん体験できるのだ。

○自然に囲まれたダーチャでのんびり

もう一つ過ごし方は、家族とダーチャに行くこと。ダーチャとは郊外にある日本でいう「別荘」。でも、豪華なものではなくかなり質素だ。都会に住む人がそれなりに持っている。

彼らは夏の間、基本そこで暮らし、仕事場にそこから通う人もいるほどだ。何をするかというと、特別何かをするわけではない。自然を楽しみながらのんびりするだけ。

森に行って自然に触れたり、ベリーやキノコやハーブを採ったり、湖や川で泳いだり。ここでも畑で野菜や果物を育てたり。夕方は近所の人たちや家族とトランプやドミノをする。水道がない所もあったりするし、火を起こすためのまきを割ったりするところもある。

都会とは一味違う生活 。子どもたちは森のこと、植物のこと、自然の中で生きること、ちょっとしたサバイバルのことを学ぶ。普段はレンガでできた7階建てのマンションに住んでいる分、ここは自然と共に生きることを家族からどんどん学ぶ大事な場所だ。

○親がいないワクワク感満載のキャンプ

これは、日本でよくある1泊だけキャンプ場にテントを張って過ごすものではない。子どもたちが親元を離れ、1〜2カ月間、日本でいう林間学校みたいなところに泊りながら共同生活していろんなことを学ぶ場所だ。

小1から高3まで行くことができる。でもそんなに簡単には行けないからある種のステータスでもあった。工作をしたり、出し物をしたり、パーティーがあったり、いろんなことをして子どもたちが子どもだけで夏を楽しむ。

キャンプには、数学キャンプなどテーマがあるものも存在する。自分の興味のあるテーマのキャンプに行くとたくさんの同じ趣味の仲間と出会う。どんどんスキルや興味を磨いていくことができる。

近くには、森や海があったりする所もあり、都会とは違う生活を味わいながら子どもたちは一回り成長して帰ってくるのだ。その間、親は親で別の場所でバカンスを楽しんだり、仕事に取り組むことができる。そう、親も1カ月夏休みがもらえるのだ。

○2週間以上ごろごろ家族旅行

ロシア人の憧れ、それは暖かい海。家族で行って、何もしない。海の前でひたすら休むだけ。たくさん泳いで、たくさん寝て、たくさん食べて、たくさんごろごろする 。それだけ。海に行けない人は湖などに行くこともあった。期間は最低でも2週間。でも1カ月行く人もたくさんいる。

冬が長い国だから日光浴は貴重な体験。南の強い太陽で小麦色に焼けた肌が何よりもステータスだ。特に昔はそんなに簡単に行けなかったから暖かい海は自慢の夏休みの過ごし方だった。だから日焼けからシミがたくさんできたおばあちゃんは、若いころからたくさんバカンスを楽しんだ証拠としてそのシミを愛でている。

北の太陽は紫外線が弱いからそんな簡単にはシミにはならないのだ。この過ごし方、何だかもったいないと思う人もいるかもしれないが、ゆっくりするのは意外と大人でも子どもでも一番重要なことだ。

3カ月もあって暇だと思う人がいるかもしれないが、ロシア人はみんな子どものころから休むことをしつけられているし、それを自分なりに楽しむことができる。そこで趣味を見つけたり、スキルを身に付けたり、リフレッシュしたりする。だから、大人になってもメリハリよく働けるのだ。

逆にこの時間がないとみんな長い冬に働く元気と食料を蓄えられないかもしれない。これは、日本のワークライフバランスのヒントにもつながると感じる。

そして、何よりも夏休みだけが長いわけではありません。学校には冬休み、春休み、秋休みももちろん存在する。たくさん休んでいるからといって特に他の国に比べて学力に差はない。むしろ進んでいる教科だってあるかもしれない。

そう考えると休みってなんだろう? 休みそのものが人生の自由研究なのかもしれない。そう考えると各国の夏休み期間は興味深いトピックになる気がする。

ということで、私もしばらくロシア流の夏休みを満喫してみることにする。そうするとこのコラムもしばらくは夏休みかなあ。第2弾の開始時期は未定ですが、続きもぜひ!という要望があれば書こうと思っています。それでは、皆さまも良い夏休みを!