イキですてきな仲間たち―電通を創った男たちⅡ― #11

耕さん!
才能へのなりふりかまわぬ愛【跋】

  • Masuda yoshio pr5
    増田 良夫

国会図書館に「岡田耕訳」の書籍が2冊ある。もしやと思い、ご子息の森夫さんに尋ねたら、やはり耕さんの仕事だった。1959年、白揚社から、O.P.ブレランド著『うそとほんとの動物記:あなたの知らない動物200話』が。翌1960年にダヴィッド社から、ウエスレイ.C.クラーク編『明日のジャーナリズム』が発行されている。かたや子どももたのしめる動物記。かたや現代ジャーナリズムを深掘りした論考だが、訳文はもちろん、とりわけ「訳者あとがき」に耕さんの息づかいがふつふつとしている。

森夫さんと
森夫さんと
 
 

「その夜、ざっと目を通すつもりで、(原書を)読みはじめたのですが、面白くて、とうとう一晩で読み上げてしまいました。いま校正刷りに目を通しながら、この訳書が、せめて原書の半分くらいでもおもしろいかどうか、とても心配です」
(うそとほんとの動物記)

「本書は(中略)アメリカの現代ジャーナリズムの将来という大きなテーマを中心に(中略)学生や一般人を対象にして、できるだけ平易に述べている。しかし、読者の方々がいささか食いたりないものを感じられたとすれば、その責任の半分は原著に、もう半分は訳者の非力にあるかもしれない。もしそうだとすれば、私はほんとうに申しわけないと思う」
(明日のジャーナリズム)

 
 
『うそとほんとの動物記』『明日のジャーナリズム』表紙
『うそとほんとの動物記』中表紙と『明日のジャーナリズム』表紙
 

心配とか、申しわけないとか。こんなところにも、前髪を指先でクルクルからめる耕さんの人柄は出てしまうのである。

それにしても、筆者は耕さんのジャーナリズム論には感服した。「訳者あとがき」にまとめられた一文を抜粋しておく。半世紀以上まえのインクで書かれたものであることを念頭に読まれたい。

「現代ジャーナリズムのもっとも基本的な特質は、その企業性にあるといっていい。(中略)現代ジャーナリズムを構成している各メディア企業は、新聞・雑誌・放送から映画にいたるまで、膨大な資本と設備をかかえており、そこには資本の法則が貫徹している。(中略)そこでは現代ジャーナリズムの社会的機能としての情報の伝達も商品化される。近代ジャーナリズムに見られたような、一定の主義主張や、党派的立場は姿を消し、かわって商品市場としての平均読者の平均関心が、客観主義報道のスローガンをかかげながら現われる」

『明日のジャーナリズム』が発行された1960年は、耕さんが人生の密林をくぐり抜けようとしていた時期と重なる。念のために訳者紹介を見たら、こうあった。

1932年生まれ
早稲田大学教育学部英文科卒
朝日新聞東京本社ジスイズジャパン編集室を経て、現在、朝日広告社企画課員
コピイ・ライター

有楽町か、銀座か、あるいは新橋界隈か、小さな喫茶店の片隅で、28歳の耕さんとひとつ年上の梶祐輔さんが、コーヒーをすすりながら日本の広告の未来について熱く語りあっている。そんなようすが目に浮かぶ。

付記。
これは、岡田耕さんが亡くなったおりに編まれた『くるくる掲示板』(2001年3月)から、掲示板に寄せられたみなさんの言葉を拾い、つぎはぎしたものです。無断で引用いたしましたこと、みなさんにはこの場を借りてお詫び申しあげます。また、内容に関する責任はすべて筆者にあることをお断りしておきます。

〈 完 〉 


◎本連載は、電通OBの有志で構成する「グループD21」が、企画をしています。

プロフィール

  • Masuda yoshio pr5
    増田 良夫

    1942年東京生まれ。東京都立大学法経学部・経済学科卒。65年電通入社。コピーライター。第四クリエーティブ局局長。電通テック常務。もっか一人の妻・七匹の猫と同居生活。坊城浩の筆名で閑文字づくりの日々を送る。

バックナンバー

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ