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ケルンから世界へ 急成長dmexcoのトップに聞いた

2016/09/26

    dmexco

    世界最大級のデジタルマーケティング・カンファレンス「dmexco」が、9月14、15日、ドイツのケルンで開催された。今年8年目を迎え、2日間で参加者5万700人、展示企業1010社と、去年に引き続き過去最高を更新。メディアマーケティング業界のイベントとして、CES、MWC(モバイルワールドコングレス)、カンヌライオンズと並ぶ「ビッグ4」と称されるまでに成長した。メガエージェンシーやグローバルプラットフォーマーの幹部らは年間を通じてこれらのイベントに参加し、「グランドスラム」と呼ぶ者もいる。閉会後来日した共同創業者のクリスチャン・ムッフェ氏に聞いた。


    dmexco
    オープニングで登壇するムッフェ氏。

    dmexcoを立ち上げたのは2009年。まだまだ従来型のテレビやプリント媒体が圧倒的に強いころでしたが、FacebookやYouTubeが加速度的に浸透するなど、デジタル化の波は確実に来ていました。私たちは興隆するデジタルテクノロジーが、単に目新しいデバイスを生み出すだけでなく、コミュニケーションの在り方そのものを変容させるであろうことを、おぼろげながら予見しました。そして、デジタルが企業のマーケティングや人々の生活習慣に与える影響を、ビジネスの視座から捉えるイベントが必要だし、そこに大きなチャンスがあると感じたのです。当時、他にそのようなものは見当たりませんでした。もう一人の創業者、フランク(・シュナイダー氏)は展示会のプロで、Yahoo!やAOLでの経験を経てきた私には、コンテンツやビジネス戦略面に知見がありました。こうして、カンファレンスと展示会を組み合わせ、ビジネス視点に特化したユニークなBtoBイベント、dmexcoが誕生したのです。

    当初は欧州がメインターゲットでしたが、この8年で1月のCES、3月のMWC、6月のカンヌライオンズと並ぶグローバルイベントに成長しました。四つのイベントはちょうど時期的にも適度に間隔が空いていて、メディアやグローバル企業、エージェンシーなどのCクラス(CEO、CMOなど)が定期的に顔を合わせる恰好の場になっています。

    一見、どのイベントでも同じようなテーマが扱われているように見えるかもしれません。例えば今年は、VR(仮想現実)やAI(人工知能)、IoT、ウエアラブルなどが共通して話題となりました。でも、それぞれ焦点や取り上げ方が異なります。コンシューマ・エレクトロニクス分野最大の見本市であるCESはBtoCでプロダクトやテクノロジー寄り。自動車業界をいち早く引き入れるなど先陣を切っていますが、新たに出現しつつある自動車のスクリーンが、コミュニケーションやストーリーテリングにどのような影響をもたらすのかまでは深く掘り下げない。同様に、MWCはモバイル、カンヌライオンズは広告キャンペーンの領域でのデジタル化がテーマです。dmexcoは、徹底的にビジネス視点でマーケティングや経営におけるデジタルの意義や示唆を追求します。マーケター、メディアやテクノロジー企業のリーダーたちが腰を据えて、お互いとじっくり向き合う場となっているのです。

    そこに、短期間にここまで成長できた理由があると考えています。私たちは、今時代を動かしているキードライバーが何なのかをとことん考え、そのキーパーソン同士を掛け合わせます。直接話合う姿を見ることはなかなかない者同士が登壇し、肩を並べ、マーケティングとテクノロジー、あるいはメディアが交差する部分を徹底的に掘り下げる。それこそがdmexcoの醍醐味です。例えば、プログラマティックはホットトピックだけど、テクノロジー寄りの議論になりがちです。dmexcoでは、それがストーリーテリングの可能性を拡大するのか、クリエーティビティーを高めるのか、場合によっては年をまたいで議論します。2016年は、参加者や参加企業の数で新たに記録を達成したけど、数字よりも重要なのはそこで何が起こっているか、ということ。デジタルエコノミー時代の、ビジネスとイノベーションのプラットフォームたるクオリティーなのです。

    dmexco
    かつて衰退の一途と思われたAOLは、ベライゾンによる買収を経て、今年米Yahoo!を傘下に収めつつある。これらの統合でユーザーは1億人を超え、さらには2020年までには2億人を目標にするという。今や、モバイル時代にFacebookやGoogleとも比肩する世界のプラットフォーマーへの意欲を見せるAOL、その再生の立役者、ティム・アームストロングCEOは、メディアコムのスティーブン・アランCEOとの対談でその戦略の道筋を語った。
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    ネスレのポール・ブルケCEOは、150年の歴史を持つ日用消費財メーカーが、いかにデジタル企業へと変容と遂げようとしているか、その舞台裏を披露。世界中の拠点から選ばれたリーダーたちがトレーニングを受けるDigital Acceleration Team(DAT)や、若年社員が幹部に「逆メンターシップ」を行うシステムなどを紹介。
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    ビッグデータ時代に、膨大なデータを使ってどうビジネスインパクトを高めるか、あらゆるチャネルを横串にしたカスタマーエクスペリエンスを提供するにはどうしたらよいか。データから価値を生み出すか、IBMのチーフ・デジタルオフィサー、ボブ・ロード氏、Yahoo!の最高売上責任者、リサ・ウッツシュナイダー氏、カラのグローバルプレジデント、ウィリアム・スウェイン氏など5人のグローバルリーダーたちが議論した。
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    ミレニアル世代が支持する新しいジャーナリズム、VICEは今やディズニーやFOX、Netflixなどと提携し58の国と地域へと拡張する。創業者兼CEOのシェーン・スミス氏はWPPのマーティン・ソレルCEOとの対談で、今の時代における「ニュースメディア」の在り方と可能性を語った。

    電通イージスネットワーク(DAN)は、dmexco創設2年目、まだ電通と統合する前から参加しています。ブースの内容は非常にプロフェッショナルで、常に攻めの姿勢を見せており、今年も会期を通じて盛況な様子でした。去年までは広告会社が共同で「エージェンシーラウンジ」を設けていましたが、各社それでは狭過ぎるということでそれぞれ外に飛び出して今年からなくなりました。広告会社自身が積極的に自己アピールをし始めたことを象徴していると思います。ご存じの通り、今やメガエージェンシーだけでなく、IBMやアドビなどの異業種がデータ領域における優位性などを打ち出して広告の領域に進出しています。目の離せない状況が続きそうですね。

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    dmexcoは進化し続けています。今年は新たな試みとして、今後非常に重要な領域となる動画に特化したコーナーを設けました。Facebook、NBCユニバーサル、BuzzFeed、VICEなど、さまざまな領域でのトッププレーヤーたちが、dmexcoのためだけに制作したプレゼンテーション動画を上映したのです。このような、動画に特化した試みは他に類を見ないものです。さらに、VRやドローンに焦点を当てた展示も行ったり、自動車業界の参加も増えました。私の仕事は、次に何が来るのか、世界中で嗅ぎまわること(笑)。来年もぜひご期待ください。

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