若者が分かれば未来が見える ~「若者離れ」発売記念連載~ #05

自分らしく生きるには? 若者と大人が仲良く生きるには?:松岡茉優×吉田将英

  •     2016
    松岡 茉優
    女優
  • Yoshida
    吉田 将英
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター フォーサイトディレクター

電通若者研究部(電通ワカモン)の新著「若者離れ」。若者の新しい価値観をひもとくと同時に、若者と大人のより良い関係性を考察した本書では、女優として活躍中の松岡茉優さんと、電通ワカモン代表の吉田将英さんの特別対談も収録しています。今回は、その対談の一部を抜粋してお届けします。今の若者がリアルに感じていること、そんな若者たちと向き合うためのヒントがそこにはありました。

(左より)松岡茉優氏、吉田将英氏

 

「私は私であるだけでいい」と信じる勇気

吉田:今回、松岡さんに話をお聞きしたいと思ったのは、さまざまな場所で、「私=I」をちゃんと持って、大人とも分け隔てなく関わりながら活躍されていることが非常に印象的だったというのと、なによりも心に響いたのが、松岡さんの「私が私であるだけでいい」というモットー。今の若者には、彼らが育ってきた時代背景や周りが見え過ぎる情報環境が原因で、「自分らしさ」を肯定できない人が増えています。松岡さんも若者の一人でありながら、どのようにして「私が私であるだけでいい」という考えに至ったのかが気になります。

松岡:私も昔から周りのことを気にするタイプです。人から「髪を切った方がいいんじゃない?」と言われたらすぐに美容室に行きましたし、主演が決まったときさえ、「どうして私なんかが」と思い悩むことがありました。実は、今も自分に自信があるわけじゃないんです。でも、ありのままの自分を選んでくれる人がいるのに、後ろ向きなことを考えるのはすごくもったいないと思うようになって。自分を信じてくれる人のためにも、「私がいい!」と思い込むようにしています。
「私が私であるだけでいい」はおまじないのような言葉ですね。

吉田:ありのままの自分が認められることほど、うれしいことはないですよね。

松岡:はい、「こっちでいいんだ」って。同世代にアツい人はたくさんいるし、私に似ている人もいるけれど、私は一人しかいない。だから、周りに合わせる必要はないんです。「こんな私にだって選ばれる理由があるはずだ!」という根拠のない思い込みを続けているうちに、最近は自分と他人を比較することはほとんどなくなりましたね。

 

不安や迷いにフタをして、一歩を踏み出す

吉田:スマホでいつでも情報を探せる環境は便利な一方で、例えばお昼ごはんを食べるだけでもネットの情報を見ないと店が決められないなど、好きやおいしいという感覚でさえも常に客観性と照らし合わせなきゃいけないことに息苦しさを感じている人もいます。

もう少し大きな話で言うと、若者が大学入試や就職といった人生の岐路を選択するタイミングで、「情報が多過ぎて、本当に自分が好きなことが何なのか分からない」「好きなことを信じ切る自信がない」という悩みがあるとよく聞きます。松岡さんは好きなことを仕事にされていると思いますが、そういった迷いを断ち切る秘訣はあるのでしょうか?

松岡:お芝居が好きな気持ちはずっと変わらないけれど、仕事なのでうまくいかないことや、リズムが狂うことも当然あります。大学にしろ、どんな職業にしろ、好きな気持ちだけではうまくいかないこともあると思うんです。だからこそ、自分の心が少しでも動くものを信じ込むことが大切なのかなって思っています。数ある選択肢を悩み続けるのではなく、心が動くものを一つ選んで、とりあえず動く。私はそうしてきました。

吉田:迷っているよりは、進んだ方がいい?

松岡:時には、自信や根拠がなくても、前に進む勇気が人生を変えるきっかけになることもあります。あえて、自分の心に自分でフタをするというか。

吉田:不安や迷いにフタをするということですね。情報に対しても?

松岡:はい。いろんな情報や選択肢があったとしても、「これ!」という確信を持つことで前に進めたことが私にはありました。ちょっとでも心が動いたものについて、めちゃめちゃ心が動いたことにして(笑)。進んでみて違うと思ったら、また戻ればいいんです。

吉田:いつの時代の若者も人生の岐路で迷うことはあると思うのですが、今の若者は本当にたくさんの情報を浴びて、たくさんの選択肢を持っていますよね。3個の中から選ぶのと、30個の中から選ぶのとでは感覚が違います。だからこそ、多数の選択肢や情報をシャットアウトする時間が重要ですよね。

 

ゆとり世代だって、ついていく大人を選ぶ

吉田:ちなみに、松岡さんはどんな大人が好きですか?

松岡:難しいですね(笑)。仕事の話になってしまうのですが、私が尊敬できるのは宝くじが当たっても仕事を辞めないような人です。

吉田:お金ではない何かで動いている人?

松岡:そうですね、運命というか。本当に仕事が好きで、一生逃れられないぐらいの勢いで仕事をしている人たちから、とてもいい刺激を受けています。

吉田:それはある意味、松岡さん自身、宝くじが当たっても辞めない仕事を見つけたということでもありますね。全人類がそういう気持ちで仕事に臨めたら理想的かもしれないですが、そうではないにしろ、進路に迷っている若者が自分の運命だと思えるものに出合えるチャンスを、少しでも増やしていけたらいいなって僕は思います。

松岡:そうですね。いろんな生き方があっていいと思うのですが、いま私がやる気に満ちていてガツガツしているので、そういう人たちに憧れているのかもしれません。

吉田:ちなみに、僕の父は仕事が好きじゃない人間でした。家族を養うために働いているのであって、自分の仕事に愛着はないのだと。そんな父の価値観を若いころはよく理解できませんでしたが、大人になって話してみると、父の人生の目標は仕事ではなく、家族を支えることだと分かったんです。好きを仕事にすることが必ずしも正解なのではなく、人生の目標やプライドの置き場所によってさまざまな仕事のカタチがあっていいんだなぁと思いました。

松岡:確かにそうですね! 私は家庭を持っていないし、家族を支えるということが想像もつかないけれど、そういうプライドの持ち方も立派ですよね…。今、私はすごく感銘を受けましたよ!

吉田:よかったです(笑)。このように大人にもいろんな価値観や考え方があるのと一緒で、若者にもいろんな人がいますよね。でも、つい大人は「近頃の若いやつは」「これだから、ゆとりは」とひとくくりにしてしまう。逆に若者は、「おじさん」などの塊で見てしまう。僕たち日本人は特にそうかもしれませんが、年が違う人たちと上手に対話ができていない気がするんです。

松岡:よく分かります。私は年上を敬う日本人の性質が大好きなので、それを廃したいとは思いません。でも、年功序列が美徳になり過ぎるともったいないですよね。たとえば、現場でも年配のスタッフが一番指導力を持っているのは確かなんですが、新しいことにチャレンジする局面では、若い人の意見が新しいものを生み出す可能性もあります。そういうときに無視することなく、耳を傾けてくれる大人はやっぱりステキだと思います。もちろん、年上に対するリスペクトは欠かしません。でも、ゆとり世代だって、ついていく大人は選んでいますよ(笑)。

吉田:それはけっこうドキッとするメッセージですね(笑)。

松岡:基本的に私は、生きてきた人の年輪にはかなわないと思っていますけどね。今はネットでどんなことでも調べられるけど、実際に体験した人の言葉には全くかないません。若い人によくあることですが、ネットで得た情報をさも自分が体験したことのように発信してしまうのは怖いですよね。

吉田:確かに、ネットの普及で情報量の年功序列は崩れつつありますが、その情報を冷静に精査しないと、いわゆる「知ったか」になってしまう。

松岡:そう、私自身がそれをしてしまいがちなので、本当に怖いです。だから、実際に体験した大人の意見をもっと聞きたい、それこそもっと対話をしていきたいですね。

 

「大人VS若者」ではなく、思いやりでつながる

吉田:松岡さんたちの世代の、情報や周りの目との向き合い方は、受け止めてしなやかに流すような柔軟さがある気がします。たとえばネットで批判されたとき、少し上の世代なら「うるせぇ」とマッチョに突き放す人が多い印象ですが、松岡さんたちは「確かにそうだな」と悩みながら、迷いながらも進んでいくようなイメージなんです。

松岡:そうですね。石つぶてに当たって「痛っ、痛っ」ってなりながらも進んでいく感じ。石は当たったらやっぱり痛いですよ。でも一方で、「確かにな〜」と思うこともあります。そこはネット世代というか、ネットの面白さも怖さもたくさん知っている世代ならではの特徴なのかもしれません。

吉田:松岡さんは10代のころから社会と関わりながら、たくさんの大人と接してきたと思いますが、大人からもらった言葉で、今の人生にも影響していることはありますか?

松岡:山寺宏一さんから、「思いやりのある人になってください」と言われたことが、何度も何度も心に響いていますね。思いやりって、押し付けじゃなくてその人を思った上での行動ですよね。愛情と似ていて、誰にでもできることだと思うんです。大人に対しても、そうありたいですね。先ほどおっしゃっていたように、「なんかおじさんたち」というくくりが確かに私たちの中にはあって、向こうは向こうで「なんか若者」っていうくくりがある。でも、本当は同じ人間。人間だから、悪いところもあれば、いいところもけっこうある。だから、思いやりを持って接することができれば、少なくとも日本人同士は言葉が通じるのだから、仲良くできるはずだと思うんです。

吉田:そうですよね。目に見える「いいね!」という評価が重要視されつつある世の中だからこそ、「いいね!」という評価を超えた存在である、目に見えないことも含めた「思いやり」の大切さを再認識すべきです。

松岡:思いやりは無償の愛ですからね。

吉田:人口ピラミッドを見ても、日本はこれからおじいちゃんとおばあちゃんがどんどん増えていくことが分かります。それは無条件で悪いことだとは思わないし、そのような社会ならではの豊かさがあると、僕は思います。でも、「大人VS若者」という対立関係で考えてしまうと、どうしても少数派の若者が生きにくい世の中になってしまいます。そのような対立関係ではなく、お互いが思いやれる関係が築けるといいですよね。

松岡:年配の人たちが若者の幸せを考えて、若者が年配の人たちの幸せを考える。そんな関係が築けたら素晴らしいですね!

<了>

※対談の全貌は書籍『若者離れ』をご覧ください!

 

プロフィール

  •     2016
    松岡 茉優
    女優

    1995年2月16日、東京都生まれ。2008年、テレビ東京「おはスタ」でおはガールとして本格的デビュー。
    2012年映画「桐島、部活やめるってよ」、2013年NHK連続テレビ小説「あまちゃん」などで注目され、2015年にはフジテレビ「She」でドラマ初主演、TBS「コウノドリ」ではヒロインを務めた。俳優業の他、J-WAVE「AVALON」の月曜日ナビゲーターやアニメ映画への声の出演など多方面にわたって活動している。2016年は映画「ちはやふる」(若宮詩暢役)、テレビ東京「その『おこだわり』、私にもくれよ!!」(主演)、NHKドラマ「水族館ガール」(主演)、NHK大河ドラマ「真田丸」(春・竹林院役)に出演。
    2017年はケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出の舞台「陥没」(Bunkamuraシアターコクーン他)に出演が決定している。

  • Yoshida
    吉田 将英
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター フォーサイトディレクター

    2008年慶應義塾大学卒業後、前職を経て2012年電通入社。
    戦略プランナー・営業を経て、現在は経営全般をアイデアで活性化する未来創造グループに所属し、さまざまな企業と共同プロジェクトを実施。
    また、10〜20代の若者を対象にしたプロジェクト「若者研究部(電通ワカモン)」代表を兼務し 消費心理・動向分析と、それに基づくコンサルティング/コミュニケーションプラン立案に従事。
    2009年JAAA広告論文・新人部門入賞。共書に「若者離れ」(エムディエヌコーポレーション・2016年)、「なぜ君たちは就活になるとみんな同じようなことばかりしゃべりだすのか」(宣伝会議・2014年)。
    PARC CERTIFIED FIELDWORKER(認定エスノグラファ)。

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