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Facebookが実現する「人ベース、フルファネルのマーケティング」とは

2016/10/06

    フェイスブック社は、9月20日に開催されたad:tech Tokyo 2016でプレゼンテーションを行った。その中ではFacebookだけでなくInstagram、同社のアドネットワーク「オーディエンスネットワーク」を使ったマーケティングの可能性が語られた。本稿では特に広告媒体としてのFacebookについて最新情報を中心に紹介する。

    Facebookが構築するオーディエンスネットワークの強みとは

    フェイスブック社の中村穣氏は「Facebookが提供するフルファネルのマーケティングソリューション」というテーマのレクチャーで、広告媒体・アドネットワークとしての同社の潜在価値を強調した。

    実名登録制であるFacebookを活用したマーケティング施策の利点はターゲティング精度の高さだ。中村氏は「(商品やブランドの)潜在層から購買層まで、年齢・性別・居住地・興味関心などのデータを基にして、あらゆる状態の生活者にターゲティングできる点がFacebookの強み」だと述べた。

    日本国内においては高精度の半面、リーチ数に懸念の声が上がることもあったが、同氏は国内でFacebookが2600万人・Instagramが1200万人のユーザーを保有しており、特にInstagramはこの1年で1.5倍のユーザー増加を記録していると発表した。加えて同社が2015年末から独自に構築しているアドネットワークの「オーディエンスネットワーク」についても、既に3100万リーチに達する規模になっていると紹介した。「Facebook、Instagram、オーディエンスネットワークには重複したユーザーもいるが、高いターゲティング精度を保ったまま、リーチ数も問題なく担保できる」(中村氏)

    特にオーディエンスネットワークは、昨今モバイルからのインターネット利用が一般化する中で、ニュースアプリや家計簿アプリ、携帯キャリアのサービスポータルサイトなど、生活者が肌身離さず持っているスマートフォンの中で広告配信ができる点を強みとしている。また、広告枠を保有する媒体との連携によって、「例えばニュース一覧の中など、フィード形式のネイティブな枠への出稿が中心になっていることも魅力だ」と中村氏は話した。

    Facebookとニールセンが取り組む効果測定の最適化

    続く「Measuring people, not cookies」と題されたレクチャーでは、フェイスブック社の大志摩丈嗣氏とニールセンの三村寛氏が登壇した。フェイスブック社では複数の調査会社と提携して効果測定を行っており、ニールセンとはリーチ数の測定に関する取り組みを行っている。

    大志摩氏は「ガートナーの調査によると2018年までに消費者は平均3台のデバイスを持つといわれており、また現在も人口約74億人に対して79億のデバイスが存在しているといわれている。つまり、デバイスやインターネットブラウザーのクッキーを基準にしてリーチ数を測ると、広告効果を見誤ってしまう」と話し、2社が取り組むピープルベース(people-based)によるリーチ数測定の重要性を語った。

    「ある広告100リーチの詳細を調査したところ、人数では68人へのリーチだったという実験もある。私たちは、実際のリーチ人数はそれよりももっと少なく、フリークエンシー(配信頻度)はもっと高いと考えている」(大志摩氏)。

    フェイスブック社のデータをパートナーとして活用するニールセンの三村氏は、ピープルベースでリーチ計測をする際の二つのポイントとして、①リーチとフリークエンシーをうまくコントロールすることと、②想定したターゲットにどのくらい広告が届けられるかという「オンターゲット率」を高めることを挙げた。

    ①のフリークエンシーについては「クッキーを基に計測すると1UUに対して5回というレポートになっていても、人を基準に見ると、実際は1人に対して15回くらい同じ広告が出ていることもある。これは特に認知拡大を目的にしたキャンペーンだと致命的」(三村氏)と、現状で起こり得る課題を紹介した。また同社の調査によると、サイト閲覧中に現れる動画広告がきっかけでブランドを嫌いになった人は17%、そのうち「広告のしつこさを理由にしている人」は65%という結果もある。

    ②についても同じく、「ウェブ上での行動を基に推量したターゲティングの場合、全ての広告がターゲットにきちんと届いているとは限らない。米国での18~36歳をターゲットにした2万件以上の広告キャンペーンを調査したところ、オンターゲット率の平均は全体で56%、さらに男性でセグメントをすると46%に下がり、女性セグメントの場合33%になってしまう」(三村氏)と課題を指摘し、「こうした課題に対しては配信先と、ターゲティングで参照するデータとを最適することが解決策になる」(同氏)と付け加えた。

    これらの課題を踏まえ、ニールセンはフェイスブック社などと連携して、2000万人規模のパネルを活用したDigital Ad Ratingsというサービスを提供している。二ールセンの計測タグが埋め込まれた広告では、主にパソコン用ブラウザーのクッキーとFacebook IDとの掛け合わせや、スマートフォン1台ごとに発行されるIDを識別することなどでピープルベースの広告配信・効果測定を実現するというものだ。

    フェイスブック社はこのようなパートナーとの連携によって、Reach(どんな人にどれだけ届いたか) だけでなく、Resonance(どのような態度変容が起きたか)、Reaction(広告がどれだけ売り上げに貢献したか)という三つのRを指標にした効果測定を行っている。同社は、Facebookの特徴を生かした高いターゲティング精度と、Instagramやオーディエンスネットワークも活用した広告在庫という質・量の両面で、マーケティングプラットフォームとしての存在感をアピールした。