スパイクスアジアに参加して #02

話題になることと、広告賞をとることは違うのか

  • Kondoh yusuke pr
    近藤 雄介
    株式会社電通 第5CRプランニング局 コピーライター

はじめまして、電通第5CRプランニング局のコピーライター、近藤雄介です。応援部出身、海外経験なし。グローバルに逆行する私が急きょシンガポールに派遣され、スパイクスアジア2016で世界のアイデアを目の当たりにしてきました。驚いたところや、あれれと思ったところなど、大海を知った井の中の蛙(かわず)が、アウトドア部門を中心に振り返ります。

 

主戦場は、テクノロジー×ローコンテクストなアイデア

今回は新たなコンペティション「YouTube Creative Hack」が行われたり、セミナーでは「ポケモンGO」「Facebook」「LINE」などが扱われたりと、メインはデジタルクリエーティブに。また、今年のカンヌライオンズの流れから、AIやVRなどのテクノロジー系のセミナーが並び、受賞作品にもそうした新技術の活用が見られました。

「テクノロジーはあくまで手段であり、評価すべきはそのアイデアである」と繰り返される中、いずれも「その技術がいかにworkするか」「どんな課題を解決し、社会に貢献するのか」を特に重視していた印象です。

YouTubeブース 上位3チームには投票もできました
 

TOUCHABLE INKの3冠

受賞作品では、サムスンのTOUCHABLE INKの3冠が目立っていました。今年のカンヌでも数々の部門を受賞しましたが、今回はデザイン・ヘルスケア・イノベーションの3部門でグランプリ。

視覚障害者の課題を、サムスンの技術で鮮やかに解決した“for good”な点はもちろん、しっかりと企業ブランドの向上につながった点が評価されました。

ガラパゴス化した課題は、評価されにくい

おやっと思ったことも。受賞した日本の事例の中には、それほど国内で知られていないものもありました。逆に、日本では話題になったのに、受賞を逃した作品も。「国内で話題化し広告機能を果たすことと、海外広告賞を受賞することは、必ずしも一致しない」ということなのでしょうか。

プレゼンイメージを見ると、日本の評価されなかった事例に一つの共通点がありました。それは、課題の説明が長いこと。プレゼンボードは通常、課題と解決したアイデア、その結果などが分かりやすく書かれますが、選に漏れた事例は、説明の長い傾向がありました。つまり、一から説明しないと、そもそも異文化の人には理解してもらえない。そして理解してもらったとしても、「へえ、そうなんだ」とどこか人ごとで見られたり、うまく伝わっていない点が残念でした。

受賞作品を見ると、先ほどのTOUCHABLE INKの課題は、視覚障害者。視覚障害者が読むための特殊プリンターはとても高価なので、熱を加えることでインクがふくらみ、触れるようにしたというアイデアは、説明しなくとも全世界の人々が理解できるものだと思います。

その他の事例でも、「SNSでイライラしたツイートが多い日は、リアルタイムでチョコの値段を下げる」(スニッカーズ)など、ローコンテクストな文脈が目立ち、課題もアイデアもひと目で理解できる特徴がありました。

海外広告賞受賞のためには常識なのかもしれませんが、初めて参加した立場としては、とても新鮮に感じました。「企画は一言で言えないとダメだ」という有名なお言葉を再認識した瞬間でもあり、さらに海外では「課題も一言で言えないとダメだ」という部分も加わるのだと思います。プレゼンボードの前でプレゼンはできないので、読んだだけで伝わることを意識したいです。

アウトドア部門も、ローコンテクストなアイデアが

アウトドア部門は、屋外広告を評価する部門です。ポスターやビルボードはもちろん、公共空間を利用して消費者へブランドメッセージを効果的に伝えた事例が並びます。

各部門のプレゼンボードを全て見ることができました
 

今回のグランプリは、カンヌと同様Brewtroleumが受賞。課題は「低迷するビール業界の売り上げを向上させること」。アイデアは「ビール製造で出た副産物からバイオ燃料をつくり、ガソリンスタンドで販売すること」。「世界を救うためにビールを飲むぜ」という言い訳をつくったことで、売り上げが10%上昇したというものです。

分かりやすい課題と、先進的なテクノロジーの合わせ技で、なるほどこういうものが受賞するのか、という典型だったと思います。ビール業界がこんなことまでするのか、という意外性と、実行力もすさまじかったです。

ビールでつくった燃料を販売するガソリンスタンドを展開した
 

アウトドア部門でGOLDを獲得したもので、個人的に好きなのが、PACIFIC BRANDS UNDERWEAR GROUP AUSTRALIAの“THE BOYS”です。

下着メーカーである同社は、男性に下着を選んでもらおうと、気温や風速で変化する巨大ビルボードを設置しました。ぶら下がっているのは2人の男性「BOYS」です。気温が下がると2人の「BOYS」は縮んで上に上がり、気温が上がると垂れ下がって、下に伸びます。そして風が吹くと揺れます。“As your boys do”あなたのムスコがそうであるように。

この挑戦的なコピーもあり、受賞が発表された会場は、どっと笑いが起こりました。温度センサーや風を感知するセンサーなど、先進的なテクノロジーを駆使していながら、ユーモアあふれるアイデアを堂々とやりきることで、文化を超えて評価されました。

やはりこの手のネタは、世界共通なのですね。しみじみ感じました。

ぶら下がった二つの玉が、気温に合わせて伸びたり、縮んだりする
 

グローバル企業が地域に受け入れられるためには、柔軟に現地化することが必要だとセミナーで訴える場面があったスパイクス。しかし受賞には、現地化し過ぎない分かりやすい課題とアイデアが必要でした。

ちゃんと地域で愛されて伝わる広告と、海外で評価されるアイデアを両立することは難しいですが、名ばかりの広告賞ではなく、納得の受賞を目指したいですね。

プロフィール

  • Kondoh yusuke pr
    近藤 雄介
    株式会社電通 第5CRプランニング局 コピーライター

    高校・大学の7年間を応援指導部にささげ、日本各地の学校に応援を指導。また、大学時代は文化麺類学の観点から「ラーメン二郎」を研究し、本気で卒論に。2014年電通入社。以来コピーライティングやCM企画などクリエーティブ業務をゼロから勉強中。2年目の春に制作した早慶戦ポスターで、2016年TCC新人賞、OCC新人賞、FCC賞など。目標は、脱・一発屋。

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