Dentsu Design Talk #88

映画監督と広告人による、超アナログ的な制作の秘密「ふたりは なかよし」(前編)

  • Yoshida daihachi pr
    吉田 大八
    映画監督/CMディレクター
  • Tajima keiji pr
    田島 恵司
    株式会社電通 クリエーティブディレクター
「桐島、部活やめるってよ」「紙の月」など、続々とヒット作を生み出している映画監督の吉田大八さんと、電通の田島恵司さんは 20 年来の友人関係。サッカーの試合の対戦相手として出会い、その後、ディレクターとCMプランナーとしてタッグを組み、数多くの CM を生み出してきました。時代が大きく変化する中で、二人の関係はどう変わっていったのか? または、どうして変わらずにいられたのか? 映画と広告の制作の現場はどのように違うのか? このデジタル時代にアイデアをいかに創り出していったか? さまざまな仕事の現場で乗り越えてきたこと、長い関係の中で熟成された仕事術、制作術について率直に語り合います。

 

吉田大八監督が語るCM論

田島:本日のゲストである吉田大八さんは、CMディレクターから映画監督としてデビュー。映画「桐島、部活やめるってよ」で日本アカデミー賞の最優秀作品賞と最優秀監督賞を受賞し、その次の作品「紙の月」でも優秀監督賞を受賞と、今や日本映画界の巨匠ともいえる存在です。大八さんとは、サッカーが縁でお会いしました。

吉田:そうでしたね。僕がサッカーに興味を持ったのはJリーグが始まってからで、30歳を過ぎていました。自分でも無性にサッカーをやってみたくなって、仕事先のサッカーチームに交ぜてもらっていました。でも基本ができていないから、そのうちお荷物扱いされるようになって、それで居づらくなったら、また次のチームへ移る。そんなふうにチームを転々としていた中で、出会ったんですよね。

田島:当時、僕はCMプランナーとしてマツモトキヨシを担当していました。その3本目を企画するときに、それまでの方向性とは少し変えたいなと思い、大八さんのことを思い出した。大八さんがつくった、ある保険のCMが大好きだったんです。

吉田:そのCMは自分で企画をして、自分なりにいい作品ができたという手応えはあったんです。だけど、地味だったこともあり、全く話題になりませんでした。そういうものなんだろうなと思っていたら、電通の田島さんという人が褒めていたよと聞いて、珍しい人だなと(笑)。

田島:それでマツキヨのお仕事で初めて組みました。僕が27歳で、大八さんは32歳のときでしたから、それからもう20年以上の長いお付き合いになりましたよね。今日は、僕から大八さんにいくつか質問をさせていただきます。

吉田:はい、どうぞ。

田島:最初の質問です。僕は演出コンテがディレクターから上がってくるとき、企画がどんなふうになっているかドキドキしているのですが、大八さんが演出コンテをつくるときに気を付けていることはありますか。

吉田:演出コンテをつくるときには、相手を驚かせたい、混乱させたい、そして喜ばせたいと思っています。企画コンテから予想できる演出コンテってあると思うんですけど、そういう予想通りのものを書いて、「ああ、やっぱりね。大丈夫ですよ、合格です」と言われて、しらじらしい雰囲気で打ち合わせが進むようなときはつらい。だから、できるだけ裏切りたいんです。

田島:なるほど、いい意味で裏切りたいわけですね。

吉田:そうですね、もちろん裏切りにはクオリティーが伴う必要があるので、どれくらいアイデアがジャンプしても大丈夫なのかを考えるようにしています。何かひとつ切り込んでいく糸口を見つけて、それを提示して反応が良ければ、裏切ってもそれほど問題は起こりません。演出コンテの裏切りによって目の前の人を驚かせることができれば、オンエアを見る人にも強いインパクトを与えられるという思い込みがあるんです。ですからそれを、演出コンテを考えるときの第一関門にしています。

田島:演出コンテを上げてきたときに、大八さんは黙ってみんなの顔色を見ていますよね。

吉田:みんなが本当はどう思っているのか、聞いても本心は分からないこともありますが、顔を見ているとよく分かるのです。ディレクターは誰でもそうしていると思いますよ。演出コンテを出す瞬間が一番の勝負です。

田島:CMプランナーも演出の力で企画をジャンプさせてほしいと常に思っています。ですから出来上がってきたものが予想だにしないような良いものだと、うれしくてしょうがないんです。ですから演出には、いい意味で暴れてもらいたい。一方で僕らは、暴れてもらえられるように、がっちりクライアントとの信頼関係をつくっておかないといけないと思っています。

吉田大八監督

 

CMディレクターはサッカーでいうフォワード

田島:大八さんは、仕事を断ったことってありますか?

吉田:「断わる」という感じではないですね。打ち合わせをする前に企画コンテを見せてもらって、「多分こんな演出コンテを描きそうです、そういうふうに変えられるかどうか聞いてみてください」と言うことはあります。それは多分通らないだろうなと思うような演出のときです。

田島:そこは大八さんの優しさですね。演出コンテのときに急に「えー!?」というものを持ってこられても困りますから。CMの現場でプロデューサーに求めることは?

吉田:サッカーで考えると、CMディレクターはフォワードだと思うんです。クリエーティブディレクターやプランナーが監督で、自分が起用されるかどうか、プレーするタイミングも含めて監督によって決まります。自分は呼ばれたところで試合をするという感覚ですね。

そういう意味では、監督のことを尊敬するけど、自分とは合わなかったんだなと、試合が終わって思うことはあったかもしれません。それはしょうがないことですよね。フォワードにもいろんなタイプの人がいますし、監督にも好みがあるでしょうから。勝ち続けていてすごいなと思う監督でも、あの戦術に俺は合わないだろうなとか、そういうことはあります。

田島:チームマネージメントはどうですか。カメラマンや美術さんなど、チームを決める時の決めごとはありますか。

田島恵司氏
 

吉田:決めごとはありませんけど、撮影に関わるスタッフを決めるときは、撮影現場を想像して、どういう人にお願いするのがいいかなと考えます。クライアントがどういうところで、タレントは誰でとか、クリエーティブスタッフは指示がきついタイプなのか、放任タイプなのかとか、トゲトゲしい現場になりそうだとか、いろいろありますよね。1週間ロケに行くのと、スタジオで2時間かけてつくるのとでも全然違う。2時間でつくるときにスロースターターな人は呼べないなとか、撮影現場や仕上げ作業のときにストレスを感じなくていいように、そういうことを想像しながら考えます。

田島:「この演出コンテだからこの絵だ!」ということからスタッフィングすると思ったんですけど、そうではないんですね。

吉田:もちろん、それもあります。こういう絵で撮りたいというイメージが自分の中にあれば、そういう撮影が得意そうな人に頼むとか、あるいはそうでない人のときでも、自分がやりたいことを丁寧に説明する時間が取れればいいわけです。

田島:ありがとうございます。次に、映画の話を聞きたいのですが…。

 

※後編につづく
こちらアドタイでも対談を読めます!
企画プロデュース:電通イベント&スペース・デザイン局 金原亜紀

 

プロフィール

  • Yoshida daihachi pr
    吉田 大八
    映画監督/CMディレクター

    1963年生まれ、鹿児島出身。CMディレクターとして国内外の広告賞を受賞する。2007年『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で長編映画監督デビュー。第60回カンヌ国際映画祭の批評家週間部門に招待され話題となる。その後の監督作として『クヒオ大佐』(09年)、『パーマネント野ばら』(10年)。『桐島、部活やめるってよ』(12年)で第36回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞受賞。『紙の月』(14年)で第38回日本アカデミー優秀監督賞受賞。最新作『美しい星』を2017年公開に向け製作中。

  • Tajima keiji pr
    田島 恵司
    株式会社電通 クリエーティブディレクター

    1968年生まれ。グループ・クリエーティブディレクター。20年前にマツモトキヨシのCMシリーズで吉田大八さんと初タッグを組み話題となる。その後、桃の天然水シリーズや白元、三菱地所などでもCMを共作。最近はユニクロなど数多くの作品のクリエーティブディレクションを手掛けている。

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