電通スマプラ #22

スマホマーケティングで知っておきたい七つのポイント

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    吉田 健太郎
    株式会社電通 マーケティングソリューション局

この10年弱で私たちの生活とは切っても切れない役割を果たすようになったスマホ。広告・マーケティング活動でも、今や生活者との接点として無視することができない存在になっています。今回は、スマホを活用したマーケティングを行う上でマーケターが知っておきたい考え方や最新事情を、七つのポイントに分けて紹介します。

スマホと生活

 

1.1普及率は約8割

2008年にiPhoneが登場し、スマホ時代が幕を開けました。スマホ普及率はここ8年間でおよそ8割まで急速に伸びてきました。総務省による全国版の「通信利用動向調査」でも、2015年には40代のスマホ利用率がパソコンを上回り、若者だけではなくミドルエージにとっても、スマホがナンバーワンデバイスになってきています。しかし、普及率の伸びもここ数年鈍化してきており、市場の成熟が感じられます。

スマートフォン普及率推移(最利用機種ベース)
 

1.2 iPhoneとAndroidは半々

OSのシェア比率でいうと、iOSとAndroidは五分五分の状況です。ただし、特徴的なのはiPhoneユーザー率が10代~20代女性で極端に高いということ。そして、この層はとてもスマホをヘビーに利用します。多くのサイトやアプリのアクセス数は実際のOSのシェアよりもiPhone率が高くなるため、スマホでのコミュニケーションに関してはiPhoneを重視している傾向があります。

スマホ利用者の機種(OS)タイプ
 
スマホ利用者の機種(OS)タイプ(性年代別)
 

1.3 スマホはコミュニケーション&情報収集メディア

コミュニケーションや情報収集に利用しているデバイス・メディア
 
最も情報収集で利用しているデバイス・メディア
 

「コミュニケーションや情報収集に利用しているデバイスや情報メディア」としてはスマホがナンバーワン。また、利用目的を情報収集だけに絞ると、スマホが3分の2を占める結果に。いつでもどこでも情報収集できるデバイスとして、10代を中心にスマホは生活に完全定着しています。

また、女性はシンプルな使い方で何でも直感的に楽しみたいという志向が強いため、使い慣れているスマホだけでやりたいことを完結する傾向が見られます。その一方で男性はパソコンとスマホを併用する人が多く見られます。ゲームは専用機でプレーしたい、ハイレゾの高品質なヘッドフォンで音楽を聴きたいなど、男性は用途や目的ごとに最適なデバイスを使い分ける傾向があるように、スマホに比べ画面が大きく、キーボードやマウスがあるパソコンならではの用途があるものと考えられます。女性は、スマホでできることはスマホで、男性は、スマホがベストならスマホで、という傾向がありますが、共に情報収集デバイスとしてはスマホが完全に中心になっています。

1.4 使い方は“個定化”

スマホの現在の使い方、これからの使い方
 

「スマホの使い方はいつもだいたい同じ」と回答した人が8割超えで、「今後もその使い方は変わらない」と感じている人はおよそ6割。つまり、スマホの使い方は固定化され始めています。また、一人一人スマホの使い方は異なるにもかかわらず、それぞれのスタイルが定着し始めているという意味を込めて私はこの固定化を「個定化」と表現しています。毎朝の通勤時間やちょっとした隙間時間ができたとき、ついスマホを取り出してお気に入りのアプリを立ち上げる行動は、多くの人にとって経験があると思います。ただし、“いつものアプリ”は人それぞれで、例えばニュースでも経済ネタが好きな人もいれば趣味の情報の人もいるでしょう。また、ニュースでなくゲームや漫画がお気に入りだという人もいるはずです。スマホでいつものアプリを立ち上げるという習慣自体は同じでも、その中身が一人一人異なっているのが「個定化」です。

 

2.“セルフキュレーション”でスマホ利用の最適化

 

2.1データ容量を懸念する意識の浸透

データ通信容量に対する意識
 

毎月下旬になるとスマホの通信容量がオーバーし、通信速度が遅くなる経験をしたことはありませんか? 調査でも、「データ通信容量を気にする」スマホユーザーは半数を超えています。これは、2014年に始まった新料金プランで顕在化した問題で、それまで一般的な通信容量は7ギガバイトでしたが、2ギガや5ギガなどの低容量で安い料金プランが普及し始めました。これにより、かつての半分ほどのデータ容量しか利用できなくなるため、Wi-Fiを利用したり、できるだけ余計なデータ通信をしないようにしたりという意識が高まってきました。2000年代の初めに「パケ代高い」という言葉が一般化していたころと同じような状況かもしれません。また、2016年9月に大手通信会社から20ギガ/月のプランが提供されたことで、今後、意識の変化が起こる可能性はありますが、全体として変化が起こるまでは少し時間がかかるでしょう。

2.2 利用が伸びているサービスはキュレーションとニュース

スマートフォンでの各サービス利用率推移(過去半年間利用)
 

このデータでは1年半前と比較して、ゲームや音楽、動画など、ほとんどのコンテンツの利用率が低下しています。一方、利用率がアップしているキュレーションサイトとニュースアプリは、“まとめている”ことがポイント。これまではいろいろなところに散在していた情報を自分で探していましたが、知りたい情報がまとめられたコンテンツは非常に効率的だと、ユーザーたちも感覚的に気付き始めました。スマホはコミュニケーションをすることが第一目的のツールであるため、コミュニケーションや趣味に関連しない用途で無駄なデータ容量消費を極力控える意識が、この傾向を加速させているのだと思われます。

2.3 既に一般化していたもう一つの容量懸念

iPhone利用者が増えたことは、デバイスの内部メモリーの容量懸念を定着化させました。使っている期間に比例して、写真などで内部メモリーはどんどん使われていき、空き領域は減っていきます。最近ではアプリが大容量化していることも内部メモリーに影響を与えています。iPhoneシェアの高い若年女性の中では、内部メモリーの確保と快適な使い勝手のために、使わなくなったアプリは習慣的にどんどん削除しています。ホーム画面1枚分しかアプリを入れていない人も珍しくありません。使うアプリを整理し、どこに何があるか、すぐに分かるようにするという、日々のスマホライフを快適にする環境整備は、ヘビーユーザーの中では当たり前のことになっています。

<女子高生のホーム画面>

1画面しかないAさん(左)、平均的な2画面のBさん
1画面しかないAさん(左)と、平均的な2画面のBさん(右)
 

<女子大学生のホーム画面>

平均的な2画面のCさん
平均的な2画面のCさん
 
Dさんは3画面だがデスクトップアイコンはかなり絞られている
Dさんは3画面だがデスクトップアイコンはかなり絞られている
 

2.4 セルフキュレーション

まとめられたコンテンツに快適さを感じるのは当然ですが、個人個人でスマホの使い方自体をキュレーションし始めている現象も垣間見えます。以前は面白そうなアプリやゲームなどいろいろ試してはみたものの、結局利用しなくなるため、新しいものをなかなか取り入れない「個定化」現象(上記1.4参照)。これはある意味マンネリ化ともいえますが、ようやくスマホを自分らしく、自分に最適な形で使うことができるようになってきた証しでもあります。

個定化=個人のスマホ環境の快適さ。

自分にとって十分な快適さと新しい情報の発見もあり、友達とも仲良くできるという環境を自分でつくり上げていくこと。これを私は「セルフキュレーション」と呼んでいます。

 

3.スマホはResponse MediaからAttractive Media に

3.1 スマホという沼

コンテンツの世界にハマることを“沼”というのですが、スマホもある意味“沼”なんだと思っています。スマホの中で気になったことは、大抵の場合リンクが貼られていて、タップ一つですぐに内容を確認できます。さらに、魅力が要約されていることも多く、コンテンツそのものや関連した画像や映像もすぐに見ることができるので、「気になった、タップした、気が付いたらハマっていた」という道をたどっていることも少なくありません。そこまでいかずとも、つい気になったことは、タップさえすれば、すぐにその内容を知ることができるため、すっかりスマホ自体が浅い沼になっています。

「スマホ沼!?」イラスト:下 穂菜美(電通 マーケティングソリューション局)
イラスト:
下 穂菜美(電通 マーケティングソリューション局)

3.2 SearchからDiscoverへ

必要な時にネットを使っていたSearch時代→肌身離さずネットを持ち歩くDiscover時代

 

 

ガラケー時代は、テレビや友人との会話などでつい気になったこと(Attention)があり、それをネットで調べる(Search)という行動パターンが主でした。当時、モバイルマーケティングの業界では、ガラケーは気になったことがSearchとして顕在化する、Response Mediaといわれていました。しかし、スマホが生活の中心になってきたことで、調べなくてもタップ一つでいろいろなことが知れるようになりました。お気に入りのサイトやアプリで気になる情報を見つけたら、そのままシームレスに別のサイトへ遷移してより深い情報を知ることができ、すぐにまた元のサイトに戻ってくる。自分の興味があることが効率的に得られるサイトやサービスが普及し、利用するサイトやサービスが絞られるセルフキュレーションが進み、毎日のスマホ利用の中で“Discover”(情報を探索する)サイクルが出来上がりつつあるのだと思います。

3.3 Attractive Media

スマホのセルフキュレーションによる利用の最適化、個定化によって3.2に書いたように次々とサイトを遷移して情報を得ていくDiscoverサイクルが生活者の中に形成されています。さらにメディア自体もユーザーの気になったことがSearchなどのアクション(反応)で反映されるResponse Mediaから、一つの気になる情報をきっかけに意識的なアクションがないまま“沼”的に引き込まれていくAttractive Mediaへと進化してきているのです。スマホは、毎日同じような使い方であっても気になることと出合え、気になったことは能動的な検索行動がなくてもすぐに詳しく知ることができる、興味が見つかるメディアになっています。

ResponseMedia→AttractiveMedia
 

3.4 SearchはKPI

ユーザーのスマホ上での行動が検索起点でなくなってきた今、検索が持つ意味も変わり始めています。実際に、あるブランドについて検索をした人としていない人を比べると検索行動をした人の方が明らかに購買意向も具体的検討率も高い、という結果になっています。スマホでは気になったことの大半で検索をせずに、詳しく知ることができるため、能動的、意識的に検索をしたサービスやブランドは一定のマインドシェアを得ることに繋がります。従って、消費プロセスの中で検索行動が持つ価値が以前より明らかに高まっているので、興味を持つ、購買意向を測るKPIとして“Search”の活用が有効です。

 

4.ユーザーの行動は「スルーからScanへ」

 

4.1 情報スルー⇒新しい興味探索

情報過多となり、情報との向き合い方でも「スルーする」という言い方をしますが、そもそもメディア接触の多くは興味がある情報を探すために行われています。さらにスマホでは、自分が好意を持っているメディアやサービスに絞って利用するセルフキュレーションが進んだことで、ポジティブスパイラルが生まれ、ユーザーはスマホで常に自分の関心ゴトや興味を探索しているのだと思います。

4.2 Scanは耳から目の時代へ

気になる情報は文字や画像でも自然と目に留まりますか?
 

スマホの画面をスクロールしていて、興味がある情報に自然と指が止まることを、「Thumb Stop」(親指が止まる)といいます。自分がチェックしている人の発言や写真など、人それぞれポイントは違いますが、注目すべきはほとんどの人が「自然と目が留まる」ということです。昔は情報の発信源といえばテレビや人の話が中心で、「耳よりな情報」というフレーズを使ったように、聴覚からの情報収集に重きが置かれていました。その手段がスマホに変わったことで、耳は退化し、目が進化してきたのかもしれません。
この行動をScanと呼ぶことにします。

情報は耳から入るか、目に留まるか
 

4.3 Scanの実態

考えるのではなく、無意識的に「あ!」と気になる写真やテキストがあります。本能的に「キレイだな、面白そう」と感じるものや、好みの異性の写真や好物の食べ物など、つい目が留まった経験があると思います。他にも、自身が所属している会社やひいきにしているスポーツチームの名称は、テキストというより記号(形)として認識して目に留まりやすくなっています。

イラスト:下 穂菜美(電通 マーケティングソリューション局)
 

スマホの画面を見ていると次々と気になることが出てきます。しかし、私たちには一行ずつ文章を読んで理解し、必要なことを抽出するのではなく、文章や画像が混在するフィードの中から瞬時に“自分ゴト”を識別できるような能力が備わっています。

 

5 後付けSensorの存在

 

5.1 センスの良さはSensorの感度

目に留まる⇒ScanによるSensorの発動

Scanした膨大な情報の中で、興味があるものだけに目が留まるのは、そこにはSensorが存在しているためです。最近話題のIoTデバイスでもScanとSensorは一体で動作し、イノベーションを起こしています。例えばペッパーのようなロボットは、カメラやマイクで情報をScanし、それを即時にSensorが識別し、AIが理解・判断して反応します。ドローンや自動運転車もScanとSensorで人や危険を識別し、AIが判断して動作しています。人のスマホ閲覧時も同じように、目で画面をScanして感性や感覚というSensorで識別し、目が留まります。ScanはSensorと一体化して機能しています。

昔から“センスが良い人”と言いますが、情報感度が高く新しいものやこれから流行そうなものに気付くことができる人という意味で使われています。これまでは情報発信コストが高かったこともあり、感度が高い人からそうではない人へ情報が流通していくことが一般的でしたが、スマホやSNSの普及によって誰もが気軽に情報発信ができ、それによって価値観も多様化する時代になりました。これからは特定の人だけでなく、一人一人のSensorを働かせることが必要になってきているため、このSensorに着目しています。

IoTデバイスの場合→人に置き換えると…
 
 

5.2  5種類のSensor

私たちが持つSensorは、大きく5種類に分類できます。

●本能型センサー

空腹時においしそうな料理写真に目が留まる、異性のタイプや好きな色など、理屈ではなく本能的に反応。

●趣味型センサー

好きなアーティストや野球チーム、アニメのキャラクターなど、個人の趣味にまつわる情報に反応。

●季節型センサー

ハロウィン時期のコスプレや、花見の季節に桜が気になる、夏休み前に海の写真に気持ちが動くなど、時期的に関与が高まる事柄に反応。

●話題型センサー

季節とは関係なく、自分の周囲でトレンドになっていることや、マイブームになっているものに反応。

●刷り込み型センサー

テレビCMなどから短期間に集中して発信される情報が、自然と刷り込まれて反応

 

5.3 Sensorを捉えるポイント

これらのSensorを発動させるためには、三つのパターンが存在します。

 

パターン① ダイレクト

商品そのものやベネフィットに直接反応するパターン。本能型・趣味型・季節型センサーはこのパターンによって発動。商品カテゴリーやブランドへの高い関心があったり、抱えている課題にマッチしている・商品やサービスをすぐに利用する必要に迫られていたりするケースがこれに該当する。

<ダイレクト例1> 

ダイレクト例1
 

<ダイレクト例2>

ダイレクト例2

パターン② 間接

ダイレクトには反応しないターゲットに対して、違う興味のSensorを活用して興味喚起をさせるパターンで、本能型・季節型センサーが発動する。具体的にはきれいな写真でのアテンションキャッチ、自分に近い人や影響を受けている人からの情報などを使って、別の角度からアプローチするといったケース。

<間接例1>

間接例1
 
 

<間接例2>

間接例2

パターン③ 仕込み

メルマガ会員など個別にコンタクトできるターゲットに対して、クーポンやイベントを告知してSensorを反応させるパターン。また、テレビCMの大量出稿で商品名などを刷り込み型センサーに残しスマホで反応させることや、戦略PRなどによりターゲットの周囲で流行している空気をつくり話題型センサーを発動させるケースもこのパターンになる。

<仕込み例1>

仕込み例1
 

<仕込み例2>

仕込み例2
 

6.メディアの人格化、コンテンツの振る舞い

 

6.1 テクノロジーのカオス化

 

<これまでのコミュニケーション領域>

これまでのコミュニケーション領域
 

<これからのコミュニケーション領域>

これからのコミュニケーション領域
 

マーケティングテクノロジーの進化によってコミュニケーション領域は拡大しています。これまでのような、ある程度のボリュームゾーンにそれなりに大きなファクトを伝えるということだけでなく、興味・関心などに応じてファクトもターゲットも細分化した施策が実行できるようになりました。しかし、実際には文字通りにOne to Oneでコミュニケーションすることはコンテンツ制作面から見ても困難であり、現状はバナーやデジタル広告をセグメントごとに最適化する程度にとどまっているのが一般的です。

マーケティングコミュニケーションでできることは増加しましたが、バリエーションも機能も多岐にわたるツール群は、どのように活用すべきか分からないほど増えています。以下は「カオスマップ」と呼ばれる表ですが、これだけ多くのプレーヤーがさまざまなサービスを提供しており、非常に複雑な様相を呈しています。

<マーケティングツール カオスマップ>

出典:LUMA Partners LLC.

6.2 絞られてきたメディア

コミュニケーション施策としてコンテンツを出し分ける場合は、個人単位ではなく、まずはメディア単位で考えることをお勧めします。なぜなら、セルフキュレーション(上記2.4参照)によってスマホ利用は「個定化」しているので、人気のメディアは絞られてきており、マーケターがそれぞれのメディア特性やメディアごとのターゲットを理解し、うまく使いこなすことができる状態になっているためです。そしてスマホでのコミュニケーションは他のデバイス以上に、メディアに応じて発信するファクトを分ける(変える)、コンテンツの見せ方やメッセージを変えていくことなどが重要です。

6.3 スマホはコミュニケーションツール

テレビは基本、受動的に見るだけのデバイスですが、スマホは人と会話したり、つながったりするためのデバイスである特性から、ユーザーは無意識的にコミュニケーションツールとして接しています。これはガラケーの時代も同様で、スマホになりより顕著になってきました。ガラケー全盛期のモバイルマーケティングではコミュニケーションにつながるようなネタを提供することがセオリーでした。スマホではメッセージアプリやSNSなどのコミュニケーションツールがメディアとしても機能するようになったこともあり、生活者はメディアに対しても人とコミュニケーションするような姿勢で向き合ってます。このポイントを理解することが、スマホマーケティングで効果を出すために非常に重要になります。

6.4 Instagramのインフルエンサーが持つポリシー

トレンドが発信されるメディアとして注目されているInstagramには、インスタグラマーと呼ばれるインフルエンサーがいます。インスタグラマーの特徴は、格好良さやかわいさより、「どれだけ自分らしいか」を重視して投稿しているところです。Twitterは言語(思考)をテキストにするので必然的に人格が出やすいですが、自分らしい写真を使って人格(キャラクター)を表現するのがInstagramのユニークネス。ユーザーたちはこれらのメディア化した個人の情報に触れる中で、一般的なメディアにも人格を感じるようになってきています。

「インスタグラマーの投稿時のこだわりって?」イラスト:下 穂菜美(電通 マーケティングソリューション局)
 

6.5 メディアも人のような”キャラ”が重要

多くの若年女性ユーザーを持つMERYを例に挙げると、「今すぐできる明日かわいくなれること」をコンセプトに、読者にとっては特別な友達のような地位を得ています。親近感のある口語体の文章や、「毛先までちゅるん」「あざと可愛い」など女子的な表現を多用したコンテンツが特徴です。

また、モデルや女優ではなく、ユーザーと同じ目線を持つキュレーターが読者の共感を得られるような記事を投稿することで、友達とおしゃべりをするような感覚でアプローチをしています。

各メディアでは、編集者やキュレーターが自身の見られ方を意識し、客観視した投稿によってそのメディアらしいキャラクターを構築しています。その結果、読者はそれぞれのメディアに、人格(キャラクター)を感じられるようになってきています。

イラスト
イラスト
 

6.6 メディアへ抱く好意

スマホユーザーは、メディアとも人とコミュニケーションするように向き合っています。そのため、好意のあるメディアしか人は見なくなります。自分にとってどんな存在なのか、それが人格として感じられないとどんどんやりとりがなくなります。セルフキュレーションが定着したということは、LINEで友達を整理するようにメディアも整理されていくことになります。例えばMERYは「かわいくなることに一生懸命な女友達」であり、ユーザーの存在を意識してかわいくなれることを一生懸命話しかけてくれます。インスタグラマーに好意を持つのと同じように、頻繁に利用する人ほどメディアのキャラクターに好意を持っています。

6.7 Who is saying?

特定の層に確実にリーチできるメディアだとしても、そのメディアならではのキャラクターで読者に語り掛けなければ、読者の反応・共感を得られずスルーされてしまいます。6.5、6.6で例に挙げたMERYに限らず人格化されたメディアでは、そのメディアらしいコミュニケーションでコンテンツを提供することが特に重要です。広告の企画で“What to Say”“How to say”は今も変わらず大切ですが、スマホ時代だからこそ“Who is Saying?”、つまり「誰がそのファクトを話しているのか」という人格を明確にした上で、それぞれのメディアに好意がある人と会話をする意識が求められています。

 

7.購買の決め手「知る=興味」と「欲しいより納得」

 

7.1 興味探索か、目に留まったものが興味か

潜在的か顕在的かは問わず、興味があるからこそ目が留まり、その先のページに飛んだり検索したりするものです。メディアやSNSをScanし、気になる情報があるとSensorが働き、知りたい情報にはすぐにアクセスできます。

興味との出会い
 

そして、そこで得た理解は表面的、要約的であってもそれは知ったことになり、浅い知識でも強い興味を持ち、自分の言葉より引用で共感しやすい文脈で語る人が増えています。「好き」だという商品についてどんなものか聞くと、「○○っぽいやつ」という他のものに例える表現や、「超かわいい」「ハンパない」などの形容詞の表現をよく見かけます。つまり、“知る”ということが非常に表面的になったのと同時に、そもそも気になるものしか知ろうとしないため、表面的な“知る”であっても、知った時点ですでに興味を持っている時代になったのだといえます

"知っている":3つのタイプ
 
 

7.2 購買を決めるポイント

では、興味を持ったものは、実際に購入しているのでしょうか。購買決断のポイントは以下の4パターンに分類できます。

①買わずに済むもの

⇒自分が欲しいだけで必要に迫られていない。

②買うことでコミュニケーションにつながるもの

⇒みんなが持っている、会話するために必要。

③買うと決めているもの

⇒すぐ必要ではないためお得な時に買う。

④買わないと分からないもの

⇒お金を払わないと実体験が得られない。

興味を持ったものの多くは①になります。当然①は購買には至りません。購買に至るものは②~④のいずれかになります。

7.3 購買を左右する“納得感”

購買を決定づけているのは、何かしらの理由を持って納得感を得られるかどうか。スマホユーザーには、受け取る情報の確かさや量を確認しながら、「欲しい」から「買う」までのプロセスで納得感を得る、「セルフ納得消費」が増えてきています。領域によっては納得パターンが構築されているものもあります。例えば服は「セール」「限定」「残りわずか」が買うことへの納得感を生み出します。また、キャンプやフェス、テーマパークや映画など、実際に消費体験をしなければ納得感が得られない、「消費体験納得」にもニーズが高まっています。

参考:スマホでモノを売る鍵は「セルフ納得買い」にあり!?[2016.04.19]

 

7.4 新しい購買行動

昔は全体的な商品数も少なく所有欲が旺盛でした。しかし現代では買い物はしたいが、理由なく買うという行動はほとんど見られません。限定、割引、信頼、流行など、スマホユーザーたちは今それを「納得して買う」ための理由探しをしています。そして、その納得感を得ることによって、結果、購買の満足度も上がるという購買行動を行っています。

興味との出会い・納得購買
 

まとめ

前職から約20年間、モバイル領域に従事してきました。そして今、モバイルの象徴であるスマホはリアルな生活に定着しています。スマホは人それぞれで“個定化”し、使う人ごとのセンサーに応じて最適化されつつあり、コミュニケーションで活用できる環境も整ってきました。今後、ほとんどのコミュニケーションでスマホの活用が非常に重要になってくると思い、効果を上げるためのポイントを、ここまで挙げてきました。

「どのような仕掛けで人の目を留めるのか、どんなセンサーを反応させるのか、どのようなキャラクターでどんなコンテンツでコミュニケーションするのか…」

今後もスマホのコミュニケーション活用のポイントだけでなく、事業貢献につながるスマホ活用について考えていきたいと思っています。

プロフィール

  • A 12358prof
    吉田 健太郎
    株式会社電通 マーケティングソリューション局

    情報通信業界コンサルタント
    電通モバイルプロジェクト リーダー/ 電通スマプラ リーダー
    1974年生まれ。携帯電話事業者にて非音声通信の普及促進のためのシステムソリューション開発、商品開発、モバイルビジネスのコンサルティング業務を経て2009年電通入社。
    携帯電話業界の動向を探る独自調査を定期的に実施し、業界並びに生活者インサイト開発業務に従事。デジタル新ビジネスの開発、コンサルティング業務、戦略プランナー、コミュニケーションプランナー等、様々な立場で通信業界、ITビジネスに携わる。
    経営管理学修士(MBA)、日本マーケティング協会 マーケティング・マスター

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