加速する越境EC #01

中国越境ECのリアル~13億人の巨大市場を狙え(前編)

  • Yamagishi norihiro pr
    山岸 紀寛
    電通イージス・ネットワーク中国 CEO
  • Profile kanno dentsuho
    神野 潤一
    株式会社電通 プロモーション・デザイン局 アクティベーションプロデューサー

中国でEコマース(EC)市場の躍進が止まらない。「独身の日」とされる11月11日。恒例の大型セールイベントで中国最大手のアリババは、24時間の総取引額が178億ドルと昨年を大きく上回り最高記録を更新した。年率20%以上の成長を続ける中国ECの背景には、経済社会の発展があり、このトレンドは当面継続するとみられている。

一方で、テクノロジーや物流体制の進化は、ECをクロスボーダー化させた。いわゆる越境ECだ。日本のメーカーや小売業にとっては、越境ECを活用して海外の顧客を獲得できる。そこでも、中国の購買力は圧倒的だ。

電通イージス・ネットワーク(DAN) 中国のCEO 山岸紀寛氏と、ECに明るい電通プロモーション・デザイン局神野潤一氏が、中国EC市場の現状と越境ECのこれからを語った。

中国越境EC
山岸紀寛氏(左)と神野潤一氏(右)

BtoCの発展に見る質的進化

山岸:中国に赴任して3年半になりますが、EC市場の拡大は止まらない、という印象を受けています。

神野:GDPの伸びは鈍化しているといわれていますが、中国ECの年率成長率は非常に高い水準を維持しています。年率30%以上の成長を続けており、2015年にはBtoCとCtoC総額で65.6兆円に到達。BtoCだけでも38.8兆円と日本の約3倍です。6.8億人といわれるインターネット人口を背景としたもので、この動きはまだまだ続きそうですね。6.8億人といっても、普及率はやっと半数を超えたというレベルなのでまだまだ成長の余地がありそうです。

中国越境EC
iSearch調べ (e=予測)

山岸:全体的なネット人口の拡大に加え、アリババやJD.comというEC大手が内陸部にもサービス領域を拡大していることが、市場成長に拍車を掛けています。

神野:中国は世界最大のEC大国で、その規模や成長性に目を奪われがちですが、質的にも進化を遂げていますね。その一つに、以前は主流であったCtoC市場の規模をBtoC市場の規模が上回ったことがあると思います。

山岸:ご指摘の通り質的な進化が目覚ましい。BtoCの発展は、実は中国人ユーザーは価格を求めるだけではなく「安心・安全」を求めているということの表れだと思います。何でも買える状況になってきている今、質の高い取引が求められている。

神野:質の高い取引とは?

山岸:CtoCが主流だったころは偽物の問題も多かった。あるいは、きちんと商品が届かないなど物流も未成熟だった。BtoCが主流になることで、信頼性の高い法人が売り手の中心となり、ビジネスの基盤も拡充し、取引に対する安心感が高まってくる。安心してお買い物ができる環境が整ってきています。

中国越境EC

神野:生活におけるモバイルの活用もますます進化しているようですね。

山岸:Baidu、アリババ、テンセントの「BAT」と呼ばれる中国インターネット大手3グループは、モバイル上でチャット、予約、決済、ショッピングなど、さまざまなサービスを展開しています。タクシーの予約から仲間同士の食事代の割り勘まで、モバイルを使ってその場でできてしまう。WeChatやAlipayが生活のあらゆるものと連携している感覚です。

 

神野:生活のプラットフォームとしてモバイルの重要性が増してくると、必然的に「お買い物はECで」という方も増えてきますね。

ECサイトはブランディングやコミュニケーションの場

神野:ところで、中国の方は新しいものを取り入れることに積極的な印象があります。ECが発展する土壌の一つともいえると思いますが。

山岸:それは大いにあると思います。便利なものは何でも使ってみようという気質がある。開発する側も、確立されたテクノロジーでなくとも「まずはやってみよう」という気持ちがあるので技術の進化が目覚ましい。逆にいうと、顧客を引きつけるためには常に新しい技術や仕掛けを取り込んでいかないといけない。

神野:最近の動きではどのようなものがありますか?

山岸:例えば、ライブストリーミングECという手法が、少し前から広まっています。中国の若い世代は他国と比べてもモバイルでのビデオ視聴が盛んで、ライブストリーミングというコミュニケーション手法が流行しています。ライブストリーミングは、一般の方が日常を切り取った映像をライブで配信しながら視聴者とインタラクティブなやりとりをするというもの。これにECの要素を加えたのが「ライブストリーミングEC」です。テレビショッピングを思わせるところもありますが、特徴的なのがキーオピニオンリーダーと呼ばれる日本でいうパワーブロガーのような人たちが、実際に売り場を訪れて商品を購入している様子などをライブ配信したりする。その影響力がすさまじく、ワイワイ盛り上がりながら、短時間で億単位の売り上げにつながることもあります。

似たようなもので、ブランデッドイベントという手法もあります。こちらはタレントなどを活用して、タイアップコンテンツをライブストリーミングするもの。ライブでリアリティーがあるところが非常に受けがよく、ライブストリーミング市場の成長をけん引しています。私たちが今夏にアリババのプラットフォーム上で実施した菓子メーカー・オレオのブランデッドイベントでは、450万人の視聴者を記録しました。

中国越境EC

神野:同様の手法は日本でも見られますが、浸透度にだいぶ差があるように感じます。テクノロジーという点ではトレンドはありますか?

山岸:やはり、VR(仮想現実)は大きく注目されていますね。VR市場は急拡大が予想されており、2015年には2000億円程度であった規模が、2020年には8兆円を超えるとの予想も出ています。具体的な成功事例はこれからですが、VRを活用した取り組みはこれからの1年、どんどん出てくると予想しています。

神野:ECというものが単なる売り場ではなく、ブランディング、あるいは、コミュニケーションの場として活用されていると感じます。日本でも同様の傾向はありますが、一歩先をいっていますね。

後編に続く)

プロフィール

  • Yamagishi norihiro pr
    山岸 紀寛
    電通イージス・ネットワーク中国 CEO

    1982年電通入社。北海道支社、電通総研を経て、2000年、経営計画室部長、電通IPO、IR関連業務を担当。08年、経営企画局局長、M&Aや経営関連業務全般を担当。12年、電通イージス・ネットワーク事業局局長、海外事業経営管理業務全般を担当。13年、電通China&NorthAsia CEOに就任。その後、電通イージス・ネットワーク中国CEOに就任(現任)。16年からは株式会社電通執行役員(現任)。

  • Profile kanno dentsuho
    神野 潤一
    株式会社電通 プロモーション・デザイン局 アクティベーションプロデューサー

    大手IT企業におけるEコマース事業運営経験から、顧客接点としての売場の価値の多様化を確信し、電通復帰。
    コンサルティングファームにおける事業価値評価等の経験をも総合的に活かし、現在、購買起点での逆算プランニングを行うプロモーション・デザイン局において、数多くの販促施策開発、実施に従事。ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士

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