加速する越境EC #02

中国越境ECのリアル~13億人の巨大市場を狙え(後編)

  • Yamagishi norihiro pr
    山岸 紀寛
    電通イージス・ネットワーク中国 CEO
  • Profile kanno dentsuho
    神野 潤一
    株式会社電通 プロモーション・デザイン局 アクティベーションプロデューサー

前回に引き続き、電通イージス・ネットワーク(DAN) 中国のCEO 山岸紀寛氏と電通プロモーション・デザイン局神野潤一氏が、中国EC市場の現状と越境Eコマース(EC)のこれからを語った。


越境ECの拡大は止まらない

神野:中国でECは、もはや単なる売り場ではなく、ブランディングやコミュニケーションの場と化しているようです。そうなると、それを活用するメーカー企業側に「ECとは何なんだ?」という混乱が起きませんか? 例えば、売り場と捉えるか、それとも、メディアと捉えるかによって、担当部署や対応する予算が違うといったような。

山岸:まさにご指摘の通りの問題が起こっています。先ほどふれたように、あらゆることがモバイル上でできるようになってきていて、そしてそれらはもちろん連携している。サービスが連携・統合されていくということは、購入プロセスでいえば、認知獲得、理解促進、購入、決済の全てが一つに集約されることを意味します。

当然、クライアント内でも、ブランド担当部署と営業担当部署それぞれのバラバラな目線ではなく、今までの役割分担を超え全体感を持って戦略を立てることが求められています。両者を合わせた機能を持つEC部署が設けられるケースも出てきています。

そうしたクライアントニーズに応えるために、われわれも早急に体制整備を進めています。広告周りのことに特化するのではなく、戦略立案、店舗オペレーション、集客、CRMといった全てのプロセスに対応することが必須となってきているのです。

神野:日本でも同じことが起こっています。ECのメディア価値が高まるにつれ、クライアント内でもブランド担当部署と営業担当部署が一緒に動く機会が増えてきました。

山岸:中国ではEC広告がデジタル広告の30%を占めるほど市場としても大きくなっていて、この動きを裏付けている。見せる場としてもECのプラットフォームを活用することが当たり前になってきていて、昨年はアリババのEC広告収入が前年比で44%増加したという発表もありました。

神野:多様なサービスがモバイル上で融合される一方で、それを活用する企業側もそれぞれの立場でこれに対応しているということですね。拡大する市場に資本が集まるスピード感があって中国のダイナミズムを感じます。

高まる日本商品への人気

神野:このような環境下、越境ECも拡大を続けているようですね。

山岸:中国のユーザーから見れば、越境ECを活用するのは自然な流れだと思います。国外に行かずとも欲しい外国商品が手に入るのだから、活用しない理由がない。

中国では、2015年には越境ECがEC全体の売り上げの6%を占めたという統計もあります。今後も大きな伸びが予想されている。

中国越境EC
経済産業省電子商取引に関する市場調査(単位:億円/()内は対前年比)
 

神野:経済産業省の調査では、2015年に約8000億円程度であった日本から中国への越境EC販売額が2019年には約2兆3000億円にまで拡大すると予想されています。

また中国での統計によれば、海外EC利用人気国・地域別ランキングで、日本は米国に次いで2位にランクされています。日本の商品への人気が高いようですね。

中国越境EC
中国网絡購物市場統計調査 2015.12
 

山岸:冒頭にも話したように、中国のユーザーも目が肥えてきて、安心・安全な商品を求めるようになってきています。日本製品は高品質というイメージが定着しており、越境ECで人気があるのは必然だと思います。

神野:当社独自で行った調査では、中国のユーザーが越境ECに求めることは「商品の質」と「信頼感」、また、輸入品の取り扱いが豊富で中国国内で買うよりも安いからという理由で活用されています。活用の際は、しっかり情報収集もしているし、評価の高いサイトでの購入意向が高く出ています。

知らない商品よりは知っている商品を、より安心感のある売り場で購入しようという意識が見てとれますね。

中国越境EC
電通アドギア・電通共同調査
 
中国越境EC
電通アドギア・電通共同調査
 
中国越境EC
電通アドギア・電通共同調査
 

山岸:先日も越境ECサイトを運営する企業のサイトオープン記念式典に招待されましたが、非常に盛況でした。

神野:日本企業にとっても大きなビジネスチャンスですね。

山岸:中国で人気のある日本製品というと、自動車や家電、AV機器を想像される方も多いと思いますが、最近では化粧品、食品や日用品の人気が高まっています。まさにECとも相性の良いカテゴリーで、日本の企業は越境ECをぜひとも活用すべきと思っています。

神野:話を聞いていると、日本にいるわれわれが考えているよりも、中国と日本というのは近いと感じます。

山岸:それは私も日々感じています。現実には国境があって、言語も通貨も違いますが、商圏という観点では、一つのエリアとして販売戦略を立ててもいいのではないかと感じることが多い。

越境ECは手軽にクロスボーダーの施策が打てるツールでもあるので、中国と日本を股に掛けた展開もやりやすいのではないでしょうか。

神野:たしかに、日本製品を好む巨大市場がすぐそばにあるわけですから「国外」というふうに一線を画して考える必要はないのかもしれませんね。

躍進する中国から世界市場への道を開く

神野:ところで、越境ECに関しては中国で本年4月に税制改正があり、その動向をめぐり一時期市場も混乱しました。ただ、税制改正の影響で増税となり多少価格が上がる商品があったとしても、大きな方向性として越境ECが成長を続けていくというのは間違いなさそうです。

当社の調査でも税制改正により価格に対する意識の高まりは確認されましたが、日本製品の購入意向はまだまだ根強いものがありました。

山岸:税制改正は、直送モデルによる課税回避や代理購入の排除を目的としてものだという話もありますが、いずれにせよ越境ECそのものを否定する話ではなく、むしろ今後も大きな成長が予想されているからこその体制整備と捉えています。

最後にもう一つ、中国EC企業のグローバル化について触れたいと思います。2014年に米・ニューヨーク市場への上場も果たしたアリババの影響力は中国国内にとどまらず、東南アジア、米国などでも存在感を増しています。中国で始まった独身の日も、グローバルトレンドになりつつある。アリババやJD.comと協働することは、彼らの進めるグローバル化の波に乗ることでもあるのです。決して、中国に閉ざされた戦略ではありません。

神野:日本の多くの企業にとって国際市場へ足がかりをつくることは重要テーマです。躍進する中国と上手く付き合うことが世界市場への道を開くことにつながる、そして、越境ECはその第一歩となり得るということですね。

中国越境
山岸紀寛氏(左)と神野潤一氏(右)

 

プロフィール

  • Yamagishi norihiro pr
    山岸 紀寛
    電通イージス・ネットワーク中国 CEO

    1982年電通入社。北海道支社、電通総研を経て、2000年、経営計画室部長、電通IPO、IR関連業務を担当。08年、経営企画局局長、M&Aや経営関連業務全般を担当。12年、電通イージス・ネットワーク事業局局長、海外事業経営管理業務全般を担当。13年、電通China&NorthAsia CEOに就任。その後、電通イージス・ネットワーク中国CEOに就任(現任)。16年からは株式会社電通執行役員(現任)。

  • Profile kanno dentsuho
    神野 潤一
    株式会社電通 プロモーション・デザイン局 アクティベーションプロデューサー

    大手IT企業におけるEコマース事業運営経験から、顧客接点としての売場の価値の多様化を確信し、電通復帰。
    コンサルティングファームにおける事業価値評価等の経験をも総合的に活かし、現在、購買起点での逆算プランニングを行うプロモーション・デザイン局において、数多くの販促施策開発、実施に従事。ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士

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