新明解「戦略PR」 #42

相談6:「リ・ポジショニング」って、常識はずれに思われませんか?

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

断言しましょう!「既成概念を打ち破ってこそ、リ・ポジショニングなんです!」

はい、最近なんか分からんけど声を張りたい気持ちで一杯の私です。そうそう、やはり最初に良い発声しておくとプレゼンなんかでもリズムがノって来ますよね。で、ちょっとしゃべり過ぎちゃう今日この頃です。皆さまいかがお過ごしでしょうか。さあ今回も「#教えて井口さん」行ってみましょう!

ところで、最近めっきり寒くなり、冬服への衣替えも皆さますでに終えられたはず。ちょっと思うのは、以前のような「大きなはやり」ってのがファッションにも感じられないな、と。もちろんトレンドというのはあるんですが、「ファッションも人それぞれでいいじゃん!それが個性なんだからさ」みたいな風潮ができあがっちゃいましたよね。個人的にはそれは大歓迎!いつもはやりを気にしてあれやこれや買い物しているとお小遣いもすぐなくなっちゃうもん。とはいえ「あ、あれまた着てる!去年も相当着てたよね」とか思われるといやですよね。でもオシャレさんは、ちょっとした工夫で既存のアイテムをうまく着回しているじゃあーりませんか。そこで、こういう工夫がPRでも活用できないのかなーと。

あえてズラした使い方で新たな価値を見つける

そうです。ここでも「リ・ポジショニング」に頼ってみたいと思います。前述のような「ちょっと違った使い方で新しく見える」ってのは、ファッションのみならず、いろいろなことに当てはまるのではないでしょうか。料理の仕方や歌の歌い方、仕事の進め方などなど。実はそれぞれに「正当なやり方」が存在していて、それを自身の工夫でアレンジすることが「自己流」というものなのだと思います。しかし、皆が思うそもそもの「正当派」とか「本流」が一番いいものなのか、正しいものなのかと考えると、どうなんでしょう(でたー、疑い深い性格!)。もしかするとそれらの価値観は、これまでに外部から植え付けられてきただけのものであり、常識として誰も否定してこなかっただけなのかも知れません。そしてそういうところを掘り下げた中から発見された新事実は、意外性をもって強く意識に突き刺さるんですよね。

たとえば「10分どん兵衛」(キタ━(゚∀゚)━!かなり近場にキター)。40年来、メーカー側が提示してきたカップ麺の作り方を、たった一人の体験談が覆してしまったということですよね。5分でいいんだよ、というのをわざわざ倍の時間をかけて作ってみたところ、それが図らずも通常の作り方よりも美味しくなってしまったという結果に。「リ・ポジショニング」PRでいうところの「季節や時間、場所など、その製品やサービスを利用するシチュエーションを変えてみる」という視点に当てはまるのかもしれません。

自身が定めた「常識」にとらわれてしまっていないか?

往々にしてメーカーから提示される情報には、メーカー側から見た最高のベネフィットを提供できるであろう環境(シチュエーション)が提示されるわけです。生活者にとっては、それがいわば与えられた「常識」であり、トリセツにもそのような指示がされているわけです。これを初っぱなから無視して自己流で使い始める勇気ある、ある意味無謀な生活者はそうそういないでしょう。しかし、前回コラムのように「ロングセラーであるが故の悩みを持つ製品」については、メーカー自らこの「常識」を拡大解釈しつつ新たな価値を提示していくということが必要なのではないかと思うのです。

シチュエーションを変えてみる

「10分どん兵衛」は生活者側で偶然にも「常識外の正当」を発見し、それにメーカー側がお墨付きを与えるという、いわば合気道的な形で花開きましたが(このメーカーの勇気ある決断が私は好きですが)、メーカー側がこういう視点を持って新たな価値発見に取り組んでもいいのではないかと思うのです。「場所や時間、季節」など当該製品が持つ「常識」を超えて、「これをどこで食べたらさらにおいしく感じるだろうか」、あるいは「いつ食べたらさらに体にメリットがあるだろうか」、はたまた「この季節に、あえてこの製品を売ったらどうだろうか」などと考えていくと、新たな価値が見えてくるかもしれません。

このように「シチュエーションを変えてみる」という視点で、既存の「常識」を超えてみようとするのも面白い頭のトレーニングになりそうですよね。ひとつだけ気を付けたいのが、無責任に常識を覆せばいいわけではないということ。あくまで、なおざりにしてきた製品規定の常識を、イマイマの外部環境に照らし合わせて再定義しようという姿勢が必要なのです。食品・飲料におけるロングセラー商品の多くが、生活者の味覚を日々分析し、それらに合わせたマイナーチェンジを数年毎にしているというのは、もはやご存じのことと思います。その取り組みを、より高いレイヤーで当てはめてみるということ。さぁ、早速始めてみませんか? そして次回は「使い方を変えてみる」のリ・ポジショニング手法をご紹介しましょうね。お楽しみに!(イエーイ、また引っ張れたでー!)

プロフィール

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

    1990年電通PRセンター(現電通パブリックリレーションズ)入社。コミュニケーションデザインを手掛けるチーフPRプランナー。
     
    企業のコーポレートコミュニケーションから、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体広報まで、幅広く手掛ける。最近では、熊本県の赤い特産物をアピールするため仕掛けた「くまモンほっぺ紛失事件」のPRプランを手掛け、世界的なPR業界紙「Holmes Report」が主催するアワードで「世界のPRプロジェクト50選」に選出された他、多数の口コミを起こしたキャンペーンとして、世界的な口コミアワードである「WOMMY AWARD」を日本で初めて受賞。Holmes Report「The Innovator 25 Asia-Pacific 2016」(アジア太平洋地域のイノベーター)選出。
    その他「Cannes Lions」「Spikes Asia」PR部門、「SABRE AWARDS ASIA PACIFIC」「PRWeek Awards Asia」「ヤングカンヌPR部門日本代表選考」審査員。2013年6月に「戦略PRの本質~実践のための5つの視点~」(朝日新聞出版)を上梓。自治体PR事例をまとめた「成功17事例で学ぶ自治体PR戦略」(共著:時事通信社)も好評発売中。

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