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買収したイギリスの会社で働いてみてNo.5

ロンドン通信:グローバルな職場でよく聞く英単語って?

2016/11/29

「タカシ、この案件はアジャイルな意思決定が重要だ」

「この資料の冒頭にナラティブがないと何が言いたいのか分からないよ」

「ちゃんとローカルチームとアラインできてる?」

ロンドンの電通イージス・ネットワーク(Dentsu Aegis Network、以下DAN)に来て1年7カ月が過ぎようとしていますが、これらはロンドンの職場でよく聞くフレーズの一例です。
電通キャリアの中で15年以上海外作業に携わってきましたが、やっぱり今でも英語には苦労しています。特にロンドンに来た最初の頃は、イングリッシュアクセントに慣れるのに時間がかかりました。そしてアクセントもさることながら、ここに来てさまざまな新しい単語を学び、あるいは日本ではほとんど使わなかった単語をよく耳にするようになりました。今回は、DANでの、この街での働き方をよく表す単語をご紹介します。

一貫性と柔軟性を持って動き出せる状態=Agile

Agile(アジャイル)とは、直訳すると「すばしっこい」でしょうか。最近日本のビジネスシーンでも使われるようになったと聞いています。
「変化の波に飲み込まれないために、Agileな意思決定と対応力が重要だ」みたいな使い方です。

ロンドンで使われる場合には、単に迅速というのではなく、「シンプルなルールに基づく一貫性」がベースにあり、それ故に実現される柔軟性を持った対応力があり、常に動き出す準備が出来ていること、それがAgileであるということです。

現在DANのグローバルチームではクレデンシャル(会社紹介)のプレゼンテーションを新たに制作中なのですが、M&Aなどによって刻々と変容するDANの全容を、タイムリーにカバーすることが必要になってきます。そこで会社紹介のプレゼン自体を9つのユニットに分けることで、それぞれユニットごとに更新を可能にするような構成にすることになりました。さらには9つのユニット全てが完成する前の段階から一部ずつでもリリースして、今そこにあるニーズに対応していこうとしていて、これはまさにAgileの実践例だな、と思いました。ものごとをシンプルにすること、出来ることからやっていくことがAgileにおいてものすごく重要だとも感じています。

agile

誰にでも伝わる、説得力のあるストーリー=Narrative

Narrative(ナラティブ)とは、①Explanation(<理由などの>説明文)②Procedure(手順書)③Information Report(情報レポート)④Recount(再考した文書)⑤Exposition(<包括的な>説明文)⑥Discussion(議論)⑦Description(叙述)と並ぶ 、8大英文書式の一つとのこと。

提案資料の中の、あるまとまった文章、あるいは「プレゼンが全体としてNarrativeである」というような使い方をします。

例えば「このブランドポジショニングとタグラインをつなぐ強力なNarrativeが必要だ」みたいな感じです。それは重要ポイントの箇条書きでもパワーポイントの台割りでもなくて、アタマから読んでいくだけで自然と内容が理解できるような「文章」であることです。

最初は「要は説明文だろ?」と思ったのですが、誰が読んでも同じように理解されるような明快さは勿論のこと、出来るだけ多くの読者に対して説得力のあるストーリー性が求められるため、最近やっと、ただの説明文との違いが理解出来るようになってきました。クライアントへの提案資料は先方の社内で回覧されることも想定して、あるいは社内における資料でも、グローバルに正しく意図が伝わることが必須なので、誰にでも伝わる、説得力のあるストーリー=Narrativeという意識で書かれます。

narrative

同じ方向を向いてスクラムを組む状態=“We are aligned”

Align(アライン)は動詞で「そろえる」とか「整列させる」という意味ですが、受身形で“We are aligned”のように、お互いの間で合意形成されたときに使用することが多いです。“We have agreed”と言うよりも、意思確認が出来ている上で、次にお互いが何をすべきかについてを同じレベルで理解して、次のアクションに備えている、そういう感じがします。一言でいうと、「握手して合意する」のがagreeならば、「同じ方向を向いてスクラムを組んでいる」のがbe alignedということでしょうか。

さらに言い換えると、クライアントとはagreeだけど、社内やグループ内ではbe aligned。「グローバルネットワークで働くということ」(http://dentsu-ho.com/articles/4419)の記事にも書きましたが、グローバルのバーチャルチームで仕事をしているときに何が一番重要かといえば、この「be aligned」な状態です。

例えばグローバルのクライアントさんを相手にする場合、DANの中でグローバルチームとリージョナル・ローカルチームがalignされていないと、「言ってることが違うね」状態に陥りやすい。そして中身も勿論ですが、同じレベルのパッションを持っていることが重要だと感じます。

align

他地域・他領域への横展開が可能=Scalable

日本語英語の「スケール」は「サイズ」や「規格」を指すこと(この眺めはスケールが大きい、というような使い方)が多いと思います。ロンドンで形容詞のScalable(スケーラブル)は、それは「他地域(または領域)への横展開が可能な」という意味合いで使われることが多いです。

例えば、ロンドンで、あるインダストリー向けのデータマネジメントプログラムを開発した場合に、それがScalableかどうか、つまり他国や、他のインダストリーへの展開が可能かどうか、といったように。

逆にいえば、DANの人たちは皆Scalableであることを常に意識して仕事をしているように思います。最たるものはDANの独自消費者調査データベースであるCCS(The Consumer Connection System)ですが、世界50以上のマーケットで、総サンプル30万以上というデータベースを保有しています。調査自体はかなりシンプルですが、それ故に世界どの国でも実施できるように設計されており、グローバルクライアントのさまざまな指標で地域間の比較をしてみたい、というニーズに応えています。そもそも「Scalableかどうか」を問うというより、如何にして最初から「Scalableにするか」に力点を置いています。

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日本だけで育って、横への転用など全く考えずに独自にカスタマイズして行くことに慣れていた自分にとっては非常に新鮮な考え方でした。これまで電通は日本国内でさまざまなGood Innovation.を起こしてきましたが、今は如何にそれらを日本以外でScalableなものにしていくのか、が必要になって来ていると強く感じています。

今回の連載を通じて、日本の同僚からは「そりゃお前ロンドンと日本は違うし、参考にならないよ」という意見や、一方で「思わず膝を打ったよ!」という賛同の言葉ももらいました。日本で当たり前のことが、一歩外に出るとそうではない、ということに、少しでも多くの皆さんが気付くきっかけとなったのであれば幸いです。ロンドンでの経験を糧に、今後もさまざまなクライアントの課題解決のお手伝いをさせてもらいながら、電通の真のグローバル化に少しでも貢献できれば、と思う次第です。

また、みなさんとどこかでお会いできるのを楽しみにしています。