スマホの次はヒアラブル! #01

ここ1年、「スマホの次は何か?」ばかり考えてきた

  • Nittou pr
    日塔 史
    株式会社電通 イベント&スペース・デザイン局 エクスペリエンス・テクノロジー部 シニア・マネージャー

ディズニーランドに家族で向かっていたときのこと。満員電車で2歳の子どもを両手で抱えていたら、同じく両手に荷物を抱えた妻から「今日の天気知ってる?」と聞かれました。

私はスマホの天気アプリを見るべく、「右ポケットだったかな? 左だったかな?」と子どもを右に左に持ち替えながら、ジーンズの奥深くに眠るスマホを手探りし、同じポケットに入っていた定期入れを落としそうになりながらやっとの思いで取り出し、ロック番号を片手で不器用に入力し…(以下省略)。

「私は天気を知りたいだけなのに、一体何をやっているのだろうか? こんなときに手を動かさずに天気が分かったら何て便利だろう!」と心底思いました。

5年以内にスマホをしのぐようなデバイスが生まれる?!

iPhoneが発売されたのが2007年1月。あと数カ月でスマホが誕生して丁度10年になります。たった10年でこれだけ世界を変えたのは本当に驚くべきことで、当分の間スマホがなくなることはありえません。しかし一方で、もしかしたらこれから5年以内に、スマホをしのぐような世界を変えるデバイスが生まれるかもしれません(技術進化のスピードが加速していることを考えると、決して不自然ではないと思います)。

実際、スマホをけん引する二つの代表的企業はスマホの「次」にすでにチャレンジしているようです。グーグルは「Google Glass」(2012年頃~)を、アップルは「Apple Watch」(2015年4月~販売中)を開発しました。しかし、グラスは現在一般発売を停止中、ウォッチもまだiPodやiPhoneに比べると爆発的な広がりには至っていない様子です。

そのような中、一体どのようなデバイスが次に来るのでしょうか? ここ1年以上、そのことが頭を離れません。

まず考えたのが、スマホの不便な点でもある「手」と「目」の機能を奪われないこと。そのためには、ウェアラブルなデバイスであることが必須です。そしてウェアラブルであるならば、次の三つの条件を満たすものこそが、「スマホの次」を担うにふさわしいデバイスであるという仮説を思い付きました。

カツラ、指輪、コンタクトレンズ…365日24時間身に着けられるものは?

 

私の考える、「スマホの次」を担うために必要な条件となる三つの仮説はこちらです。

ウェアラブルの3仮説 ①小さいほどよい ②体(顔や脳)に近い方がよい ③より長く身に着けられるとよい

「顔」に近い方がよいのは、その付近に感覚を司る(=情報をインプット/アウトプットできる)器官が集中しているからです。

また、それらの情報を処理する機構が「脳」であり、将来的には脳から直接情報のやりとりができる可能性もあるからです(例えば、脳波によるコミュニケーションや、脳内にイメージを思い浮かべるだけのアプローチなど)。

もっと言えば、最終的にデバイスはウェアラブルやインプラント(埋め込み)を通り越すでしょう。赤血球ほどの小さな「ナノボット」となって体内に入り、病気を治すものになるので、「人間は死を超越する」といった極端な(?)議論もあります(気になる方はレイ・カーツワイル『シンギュラリティは近い―人類が生命を超越するとき』などを読んでみてください)。

ちょっと話が脱線しましたが、この仮説に照らすと、グラスはスマホより小さいかは微妙ですし、ウォッチもスマホより顔や脳に近いかは微妙に感じられます。一方で、双方ともにより長く身に着けることは可能ですが、寝るときなどはスマホの方が枕元に置いて寝られるので、使いやすいかも知れません。

やはりここは、三つの仮説全てに対して完璧に応えるものを探したい。そこで私は、「カツラ」「ネックレス」「指輪」「つけ爪」「イヤリング」「入れ歯」「コンタクトレンズ」…さまざまな可能性を出来る限り網羅的にマッピングしてみました。

ウェアラブルデバイスマッピング

 

こうして考えていった結果、先に示した三つの仮説は、私の中で次のように転換されていきました。

ウェアラブルの新・3仮説 ①小さいほどよい⇒ 最終的にはナノボットになる ②体(顔や脳)に近い方がよい ⇒ 最終的には体の内部に入る ③より長く身に着けられるとよい ⇒ 違和感なくいつも体内に存在する

これらはまだ空想上の遊びに近く、仮説レベルではありますが、ある日、私は現在の技術水準で、この中間的なものがあることに気が付きました。それが聴覚のウェアラブル化です。

スマホの次はウェアラブルではなく、「ヒアラブル」だ!

では、聴覚のウェアラブル化とはどんなものでしょうか?

以前より、人工知能によって「音声認識」が発達している(=文字入力が音声で出来るようになっている)ことに注目していたので、私はすぐに「声による情報のインプットとアウトプットがよいのでは」と思いました。

また、自分が日常使っているウェアラブルなものは、指輪とイヤホンしかない。「そうだ! 指輪から話しかけて(インプット)、イヤホンで聞けば(アウトプット)どうだろう?」と、ひらめきました。

早速後輩のY田くんにそのアイデアを話したところ、「そんなのダサイっす! そんなことやる人なんて絶対いません」と容赦ない厳しいツッコミが…。

その夜、意気消沈しながら子どもをお風呂に入れていたときに、「待てよ、別に指輪はいらないかもしれない。イヤホンから直接、音が拾えればいい」と気付きました。

さらに「補聴器は声を拾って、デバイス内部で増幅して、聞こえやすい音にして出す。あれ? これはインプットもアウトプットもできているじゃないか。すごい!」と思い至り、思わずお風呂で「ユリイカ!」と叫びました。

耳の「穴」に入れるイヤホン(補聴器)は、ウェアラブルとインプラントのちょうど中間的なものです。

「暗い耳の穴の奥に、脳が見えるのではないか?」と思うほどに脳に通じているようにも感じられました。そしてもちろん、手も目も奪われません(他にも鼻孔や眼孔に何かを入れることも想像しましたが、かなりイヤな感じがしますよね)。

翌日、Y田くんに話してみると、今度は悪い反応ではなく「確かに」といった感じです。

さらにその数日後、日経新聞に「補聴器、スマートに」という記事が掲載されました。補聴器がスマホ連動で便利な機能が増え、耳の穴に収まるほどに小さく進化していることを知りました。もちろん「ドヤ顔」でY田くんに記事を見せたことは言うまでもありません。※日本経済新聞2015年9月17日夕刊、電子版はこちら(出典:「NIKKEI STYLE」)。

その後、ある方から聴覚のウェアラブルは欧米では「ヒアラブル」(Hear+Wearable)と言われていることを教えてもらい、国内外で「ヒアラブル」がさまざまな動きを見せることとなりますが、その話はまた今度に。

プロフィール

  • Nittou pr
    日塔 史
    株式会社電通 イベント&スペース・デザイン局 エクスペリエンス・テクノロジー部 シニア・マネージャー

    「体験価値マーケティング」をテーマにしたソリューション開発を行う。
    日本広告業協会懸賞論文「論文の部」金賞連続受賞(2014年度、2015年度)。

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