電通流 デジタルマーケティング #05

6限目:デジタルで、イノベーション発想を豊かにする

  • Profile tanizawa
    谷澤 正文
    株式会社電通デジタル データアナリティクス事業部長/マーケティングディレクター

このコースでは、これまで電通の現役プランナーが実践しているデジタルマーケティングの課題解決手法や発想方法を体系的に紹介してきました。今回の第6回ではデジタルを使った新しい発想についての話をしました。本日は、その講義の復習と受講生からの質問に答えたいと思います。

講義では、まず初めに今までの講義のおさらいをしました。この部分に関してはSchooの講義や、電通報の復習編をご覧ください。

今後、マーケティングのデジタル化はどこを目指すのか

 

ウィンドウズ95の発売から数えても、デジタル化とか、マーケティングのデジタル化というものは実は20年ほどたっていて、「アドテクノロジーの進化」「マス広告とデジタル広告の最適化」「マーケティングシステムの導入」などについては、多くの企業の方々、マーケターの方々が課題意識を持ち、導入についていろいろトライしているかと思います。そして、このデジタル化による効率化、最適化、それによる業務コストの削減などは、だいぶ方法論も固まってきています。今、さまざまなクライアント企業にマーケティングのデジタル化のお手伝いをしていますが、最近は「デジタル化による効率化、コスト削減は最低限目指すとして、もっと売り上げに貢献する方、ブランドとして愛されているか」「新規顧客が増えているか、既存顧客を維持できているか」「ファンが増えているか、結果として売り上げが増えているか」について、実現するためにはどうしたらいいかという話をする機会が多くなっています。

つまり「企業目線のマーケティングコストの最適化」だけでなく「顧客目線でのサービスの満足化」にデジタルはどこまで貢献できているのか、貢献できるのかという視点です。「売上-コスト=利益」という話でいうと、コスト削減はデジタル化できるようになりましたが、お客さまに感動してもらい、売り上げを上げる方はどうなの、という議論です。これはまだまだデジタルの世界で少ない気がします。

マーケティングのデジタル化は、マス広告メインのマーケティングと比較して、
Ⅰ.施策の成果が「見える」化され、Ⅱ.各施策の「連携」もでき、Ⅲ.「リアルタイム」で対処することが可能になりました。昔は組織の縦割りやデータが容易に共有しにくいなどから施策の連携は掛け声でしかなかったのですが、最近では、現実にデータやテクノロジーを活用して、実際に連携、共存することが可能になりました。マーケティングを実践していく上で、「長期的ブランド構築」と「短期的売り上げ向上」という、これまでは対立概念に近い感じで語られていたものが融合できるようになってきたということです。マーケティングは全てのものがデータ、デジタルでつながる、「Connectedの時代」の真っただ中にいると捉えることができます。そして、そのConnectedはマスメディア、デジタルメディアのつながり、キャンペーン施策間のつながりだけでなく、マーケティング全体や、その先のビジネス、社会(ソーシャル)にまで影響を及ぼしています。

データを活用してイノベーション発想を豊かにする

 

まずは、マーケティングの領域でのデータ活用のイノベーションの話です。
生活者とブランドとの新しい関係を構築する取組みを紹介しました。「コネクテッドブランディング」と言ったりもします。これまでは、ある商品のブランドイメージを高めるテレビCMを実施しても、その先の販売促進のためのデジタル施策との連携などはうまくいかないケースが多かったのですが、ブランディング施策もデジタル、データ、テクノロジーを活用し実施し、デジタルの販売促進施策と連携していきましょうという考えです。

講義では具体的に六つ紹介しました。

①パーソナライズド動画
既存顧客へのCRMや見込み顧客へのアプローチで、その一人一人の性・年齢、家族構成、商品への興味関心度合い、購入検討商品などを勘案し、その人だけのオリジナル動画を作成し、配信します。営業員などが口頭や書面で商品サービスを説明しにくい保険サービスや銀行サービス、携帯の料金説明、予約した旅行のプラン紹介などでよく利用されているサービスです。お客さまと生涯にわたり、丁寧にそれぞれの人に合った商品紹介のブランディングと資料請求、申し込みまで一貫してできるできる動画生成サービスで、動画によるブランディングと短期の販売促進の両方に貢献する手法です。

②感情をデータ分析で科学する動画コンサルティングサービス
動画を見ているときの感情を、顔の表情データなどで科学的に分析し、その結果をベースに動画を再編集し配信します。デジタル動画と視聴者の感情のマッチングを精緻に行うことで、デジタル動画上でも狙った感情を高めるブランディング施策を実施することができます。

③検索データの活用
検索データはニーズの塊です。デジタル広告の短期的なSEO対策だけでなく、競合他社と比べてそのブランド訴求していないことや、新たなブランドメッセージを考える際にも活用可能です。Googleサジェスト機能(検索するときにアシストで表示されるもの)を利用してキーワードの関連性を可視化することもできます。その関連語は、季節ごと、時系列で変わっていたりするので、メッセージ発信のタイミングなども検討でき、さらに次のコンテンツの切り口を考えるヒントとして使うことができます。

④コンテンツのテクノロジー配信の進化
さまざまなシーンでコンテンツは大事なのですが、そのコンテンツを運ぶテクノロジーの方も次から次へと面白いものが出てきます。デジタル記事の中でクイズ形式の質問ができ、その結果を拡散できるサービスなどがあります。自社サイトのブランドを紹介するページの中に置いて、そのブランドの内容をクイズ形式で出題して理解を深めてもらい、その結果を、SNSを通じて拡散してもらったり、さらにその先の、具体的な商品申し込み、資料請求してもらったりすることも可能です。コンテンツによるブランド理解から始まり、最後的な刈り取りまでできるサービスです。

⑤顧客獲得のテクノロジーの進化
今、見込み顧客へのアプローチをできるだけ自動化する「マーケティングオートメーション」というサービスが人気ですが、実はメールアドレスを取得できてアプローチできる見込み顧客候補は1%にすぎないといわれています。残りの99%のUnknown と呼ばれるまだ名前もアドレスも知らない状態から、サイト来訪などのクッキーベースのデータを使ってユーザーを把握し、アプローチ可能なサービスがあります。メアドを取得していない人とメアドを取得している人の管理などがとても分かりやすいシンプルなダッシュボードがあり、ある条件の人は契約の確度が高そうなので、積極的に具体的に販促のアプローチをしよう、この条件の人はまずブランドそのものを好きになってもらおうなど、プロモーションとブランディングのアプローチを同じダッシュボード上で管理できます。

⑥マスとデジタルの見える化サービス
今では、CMOやマーケティング担当者から、マーケティングに関するあらゆるデータをまとめて見てみたいという要望も増えています。日々の売り上げデータと、テレビCM出稿データ、ウェブ出稿データを一緒に時系列でならべ眺めるだけでもそれぞれがどのように関係したのか、全くしなかったかどうかが分かります。またテレビCMの直接の売り上げへの影響だけでなく、それによるデジタル行動への影響(サイト来訪など)なども見える化できます。それぞれの売り上げへの直接効果、間接効果が分かるので、それぞれのROIなどを算出でき、結果、ある売り上げ目標に対して、テレビCMとデジタル広告の最適な配分などもだいぶリーズナブルな価格で提供できるようになりました。

次に、さらに発想を広げ、データ、テクノロジー、コンテンツを活用したビジネスそのもの、社会そのもののイノベーション発想について紹介します。

ビジネスのイノベーション

 

タクシーをスマホで呼べるUberや、使っていない部屋を旅行者に貸したりできるAirbnbなどは日本でも有名になってきていますが、まさに、位置データやマッチングデータ、新しいテクノロジー、コンテンツを活用して成功したビジネス事例かと思います。講義では、図表1のようなビジネスクリエーションのための発想フレームワークを紹介し、顧客とブランドの関係を、どんなデータを使ってイノベーションするかの発想のヒントを紹介しました。

また、昨今は技術の進化で、日本でも超小型衛星をつくれるようになり、実は衛星データのビジネス活用にも注目が集まっています。

ウェザーニューズは、自社で衛星を購入し北極海の氷の解け具合を常にウオッチし、北極海ルートで船で物資を運べるかチェックし、運べそうなタイミングを海運会社に連絡します。例えば、東京からヨーロッパまで船で輸送する際は、南回りルートよりも北極海ルートの方が距離が2分の1で、輸送コストも半分になるので、海運会社にとってはありがたい情報なのです。

このような超小型の衛星データは他にも農業、林業、流通などで使われています。農作物の収穫や、肥料のタイミングを衛星データを使って最適化したり、森林の面積を把握したり、山火事の早期発見や海外出店先の交通量の把握、都市の渋滞解消など一企業にとどまらない社会課題の解決にも活用されています。さまざまな産業、地域が一緒になって、データ、テクノロジーを活用できたとき、もっともっと世の中が便利になり、幸せな社会が実現できるのではないかと思っています。

今回は、人とブランドの新しい関係を常に考え、そこでどんなデータが入手できるのか?どんなテクノロジーが使えるのか?そこに載るコンテンツはどんなものをつくればいいのか?をお伝えしました。また、それにより、さまざまなデータが見える化され、戦略と施策、ブランディングとプロモーション、顧客の新規獲得と既存維持などが連携して対応することができることを知っていただけかと思います。今後、デジタル化の目指すところは、コスト削減、効率化だけではなく、顧客目線の満足化をめざし、そのブランドが好きになり、売り上げの方を高めていくことだと思います。また、マーケティングのデジタル化自体も、今後もさまざまなデータがつながり、見える化されていきますが、単につながるだけではなく、AIなどの人工知能の活用などにより、より賢くなったり、人の手がかからなくなる世界が来るでしょう。デジタルの現在は、「ConnectedからIntelligence」の世界に突入しています。

受講生からの質問

 

最後に、本講座受講生の方からたくさんの質問があったので、代表的なものにいくつかお答えして終わりにしたいと思います。

質問1:NPS(ネットプロモータースコア:顧客の推奨度指標)は、デジタルでどうやって測るのでしょうか?

回答1:昔は既存顧客に郵送アンケートなどで測っていましたが、今ではメールであったり、商品のサイトに来訪した方へのポップアップのアンケートなどで容易に実施できるようになっています。

質問2:デジタルものは日本より海外(米国とか?)の方が進んでそうなイメージがあります。実際はどうなのでしょうか?

回答2:確かに「0から1」を生み出す新しいサービス(Facebook、YouTubeなど)は海外発の方が多いかと思います。しかし、日本は「9から10」に仕上げる能力は高いので、海外発のサービスを応用してサービス品質を高める工夫などを目指すのも一つの方向かと思います。

質問3:機械学習や分析・統計技術がこれからのデジタルマーケティングで重要だと学びました! データサイエンティストに向いている人の傾向や必要なスキルを知りたいです。

回答3:データ分析のスキル向上はもちろん大事で、日々精進ですが、それ以上に人間理解、顧客理解の方が大事な気がします。特にビジネスに関しては、顧客データの分析結果の裏側には、必ずその行動をとった「人」が存在しているからです。データ結果がどんな生活者、顧客の深層心理、行動から発生しているのかを発見できるデータサイエンティストが、ビジネスでは今後ますます必要とされるかと思います。

今回は以上になります。講義がこれからの何らかのお仕事のヒントになれば幸いです。デジタルの領域は日々進化しています、私自身も日々勉強し続けなければと思います。皆さまありがとうございました。

プロフィール

  • Profile tanizawa
    谷澤 正文
    株式会社電通デジタル データアナリティクス事業部長/マーケティングディレクター

    2002年電通入社。以来、さまざまなクライアントの社長プロジェクト、CMOプロジェクトに参画し、広告領域にとどまらず、経営・事業戦略やブランドのコンサルティング、最先端のデータベースマーケティングから、統合キャンペーンプランニングまで、戦略から実施の両輪をこなすコンサルタント&グロースハッカー。商学修士。
    プランニングモットーは「緻密に計算し、大胆に実行!」。

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