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Dentsu Design TalkNo.85

メンタリストDaiGoとファンドマネージャー房広治が語る「コンサルティングの心理学」(前編)

2017/01/13

メンタリストのDaiGoさんは、心理学のプロフェッショナル。最先端の心理学を使って、ビジネスからエンターテインメントの領域まで、幅広く活躍しています。一方の房広治さんは世界の金融界で活躍するファンドマネージャー。英国オックスフォード大学留学中には、当時オックスフォード在住のアウンサンスーチーさん宅に下宿するという珍しい経験の持ち主です。その後は金融界の花形であるインベストメントバンカーとして大型投資案件を数多く成功させ、現在はアウンサンスーチーさんと再会し、ミャンマーの成長に向けたコンサルティングや投資を手がけています。今回のデザイントークでは、二人を知る電通ビジネス・クリエーション・センターの能勢哲司さんが聞き役となり、「コンサルティングの心理学」について語り合います。

(左から)房広治氏、DaiGo氏
 
 

 

DaiGoがオックスフォードに惹かれる理由

能勢:本日のデザイントークのテーマは「コンサルティングの心理学」です。なぜそのテーマでDaiGoさんと房さんのコンビなのか、まずは自己紹介を兼ねてお話しいただけますか。

DaiGo:日本テレビ系列のテレビ番組「アナザースカイ」で、オックスフォード大学に行く機会があり、同地に当時在住していた房さんを紹介してもらいました。房さんは大学との関係が深く、そのお陰で普段は入ることのできない施設も案内してもらえました。それ以来、仲良くさせてもらっています。

房:オックスフォード大学は、アメリカの大学に倣い、10年ぐらい前から卒業生を中心に寄付を集めて、さまざまな研究施設を設立しています。現在、発生生理学及び再生医学研究所の設立が決定されており、私はそのスペシャル・ストレートジック・アドバイザーという肩書をもらっているのです。簡単に言えば、寄付を手伝っているのです。

DaiGo:僕の自己紹介をサクッとしますね。最近の小学生は、僕がババ抜きをするお兄さんだと思っているようですけど、ババ抜きの専門家ではございません(笑)。

本職は心理学を使って、プロダクトやオンラインサービスの開発など企業のお手伝いをすることです。また、医療系大学の特任教授としてリハビリテーション心理学専攻を開設したり、本を書いたりもしています。今日は房さんと僕でプレゼンテーションや、コンサルティングに生きる心理学的な考え方やテクニックをご紹介したいと思います。

房:よろしくお願いします。

DaiGo:まずは房さんと僕の共通の話題であるオックスフォード大学の話からです。僕はオックスフォード大学にすごく惹かれていて、将来的には移住したいと思っています。

オックスフォード大学の「学びに対する考え方」は、これからのビジネスに生きるはずと考えているからです。最近、「AIが発達すると無くなる仕事」というニュースを見ませんでしたか?このニュースは、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授の論文『未来の雇用』からの引用です。仕事を「AIにとって代わられる仕事」と「人間に残る仕事」に分けており、オリジナリティが必要な仕事は残っています。実はオックスフォード大学ではオリジナリティを発揮するための教育を何百年も前から行っています。

房:オックスフォード大学では、あと数年もすると、大学1年生で学んだことの半分が4年生になった時には陳腐化していると言われ始めています。今まで常識だと思われていたことが、今よりももっと早いスピードでひっくり返るようなことが起きていくというわけです。

ただし、いくらAIでも人間がプログラミングしなければ解決策は出せません。例えば、人間には「気づく」という能力があります。世の中の人が常識だと思っていることに対して、「それは違うのではないか」と思う行為です。オックスフォード大学の副学長と話している時に、「人類史上で2つの大きな気づきがあったが、このような気づきをAIができるようになるには、まだまだ時間がかかるだろう」と言っていました。この2つの気づきとは、コペルニクスの地動説と、ダーウィンの進化論のことで、彼らは、当時の世界の常識と真逆のことが真実であると気づいたのです。ただし、人間自身もまだこの「気づき」のプログラムを解明できておらず、AIにプログラミングしようがない。オックスフォード大学では、こうしたオリジナルな考え方を教育で実現しようという試みを行っています。

 

会社は副業を禁止した方がいいのか?

DaiGo:オックスフォード大学では、インディペンデント・シンキングというゼロからつくる考え方と、オリジナル・シンキングという独立した観点での考え方を徹底的に叩き込まれます。また、ペンシルベニア大学で最年少終身教授の称号を持つアダム・グラントさんは、著書の中でオリジナリティをつくるための方法について書いています。それによると、成果を求める欲求が強まると、失敗を恐れて自由な発言や創造性が減る傾向にあるそうです。オリジナリティの観点からは「副業」した方がいいようです。創造性を発揮して、大きな事業や成功を掴んだ起業家のほとんどは、副業からスタートしています。アダム・クラントの調査では、会社を辞めて、全てをなげうつようなリスクを取った起業の方が失敗に終わる可能性が高いことがわかっています。逆にリスクをとらずに、副業でスタートした場合の倒産リスクは33%も減ります。安心できる本業があった方が、創造的なことにチャレンジできるのです。

房:投資の世界も同様に、あたかもリスクをとっているように見えるものが、実際にはリスクを軽減させているということがよくあります。Calculated Riskと言われますが、投資に対してのリスクを分析し、自分がとれる範囲のリスクがどれぐらいになるかを計算して、リスクをとり、利益を出すという手法ですね。

DaiGo:それは面白いですね。自分がどうなるのか分からない状態を本当のリスクと言うのかもしれません。安心できる状態で副業にチャレンジして、そこで得た創造性を本業で活かせば、社長も社員もうれしい。それが、心理学的観点から言える結論です。サラリーマンで安定しているのなら、リスクをとった方がいい。

僕が運営している「ニコニコ動画」の番組で、ディー・エル・イーのファウンダーである椎木隆太さんに出てもらった時に、「僕がもし生まれ変わったら、中学生で起業する」と言っていました。「中学生で起業すれば、失敗しても高校生で起業できるし、高校生で失敗したら大学生で起業できる。大学生がダメだったら就職すればいい。リスクを取れる時に取っておけば、失敗してもつぶしがきくのに、なんでみんなつぶしがきかなくなってから挑戦するのだろうね」というわけです。視点が面白いですよね。

房:DaiGoが言った、インディペンデント・シンキングは、同じような人間が集まっているところでは起こりえません。全く違う業種の、全く違う考え方をする人間が集まると、人間同士の化学反応が起こり、新しい考え方が生まれる。そこで経営の視点でも、同業で働くことを除けば副業をしてもいいという規定にした方がいいのではないか。その方が、従業員の生産性、独創性があがり、企業に貢献できると思う。

日本企業は、あまりにも労働者が転職をしようとしない、すなわちモビリティが無い労働市場である。特に大企業になればなるほど、社員がずっと同じ会社にいるという風潮がある。それでは、オリジナルな考え方や独立的思考は起こりません。しかし、それを起こさないとAIが進出してくるこれからの世の中ではかなり厳しい立場になるでしょう。

DaiGo:続いては、M&Aにおける心理戦について聞いていきたいと思います。

※後編につづく
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