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セカイメガネNo.53

フォトグラファーが二番目にエライ

2017/02/22

「インドの結婚式を想像してみて」と僕が聞いたらどんな光景を目に浮かべる? 新郎が象に乗って入場してきたり、新婦が全身金ピカで着飾っていたり、米国の投資家ウォーレン・バフェットも仰天の豪華ビュッフェ、その名も「ウォーレン・ビュッフェ」ってとこかな。ほぼ当たってるね。最後のは、ま、冗談だけど。インドのケータリング業者なら抜け目なく発明しかねない。

とにかく、インドの結婚式が豪華絢爛(けんらん)なのは間違いない。年々派手になるばかり。僕が豪華というのは「花びらをまき散らす大砲装備の回り舞台、派手なコンサートで名高いロックグループ・コールドプレイ顔負けの仕掛け花火」って意味だけどね。

一番の見ものは結婚式のフォトグラファー。近所の写真スタジオで見かけるようなおじさんとは違うよ。家族のどんな行事でも代わり映えのしない写真を撮って、結婚式だか葬式だか分からなくしちゃうもんね。今どきのフォトグラファーというやつは、まるで違う。「ソーシャルメディアで見落としたら、後でみんなに何て言われるか分からないよ」って感じのシーンを結婚式にたっぷり注入するんだ。

僧侶の次にエライのは自分だと言わんばかりに新郎新婦登壇のタイミングを決め、二人にいつほほ笑むか指図する。「ごく自然な」写真が撮れるよう、新郎は 「ごく自然に」ひざまずき新婦の手を取るよう命じられる。親友のシーラが求婚されたときの写真が337回のLikeを取ったんだから、こっちも負けるわけにはいかないでしょ。新郎新婦の衣装、式場の装飾、ビュッフェのメニューにも口を出す。ハッシュタグ「おいしいものを食べる快感」を付け、インスタグラム受けしそうな写真を投稿して、友達に見せびらかさないといけないからね。

結婚にまつわる儀式全ての写真アルバムが出来上がる。ヘナ染めボディーアート、ターメリック化粧、頭に巻くターバン…、おっと乗馬の儀式もだ。本番までの写真も重要。カップルは公園や名所旧跡に連れて行かれ、ポーズを決める。パーソナル・ストックフォトだね、いやはや。それやこれや全部準備し終えて、ようやく結婚式。

「ここまでしないといけないの?」って思うでしょ。でも「これからどう進化しちゃうんだろう」って好奇心、そそられない? スナップチャット版結婚物語をプロに作成依頼? 360度見渡せる結婚記念ビデオ? 新郎新婦が見ているシーンを列席者全員にVR技術で(無理やり)共有? そのときは、たぶん、新婦の涙やマスカラも共有してもらえるんだろうね。

(監修: 電通 グローバル・ビジネス・センター)

インドの結婚式