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「届く表現」の舞台裏No.13

俳優 森崎ウィン氏に聞く スピルバーグ作品映画の大役をウィンして

2017/03/27

「『届く表現』の舞台裏」では、各界の「成功している表現活動の推進者」にフォーカスします。今回は、俳優の森崎ウィン氏に、スピルバーグ作品映画(来年公開)の撮影エピソードなどをお聞きしました。

森崎ウィン氏(俳優)
 

LAでの最終オーディションが2015年9月末。その場で初めてお会いしたスティーブン・スピルバーグ監督は、めちゃくちゃフレンドリーでした。緊張で何やってるのかも分からなくなってる僕に対して、“Hi, Win, Good to see you! Thank you for coming!”みたいな。めっちゃ笑顔。その笑顔が赤ちゃんみたいにかわいかった。それが僕のスティーブン第一印象。

最終に残った他の日本の俳優さんたちとも控室で初めてお会いしたんですけど、「ああ、こんな方々と一緒にここまで来ただけでもういいや」って正直思ったんです。だから、その後半年待たされて事務所の人から「おめでとう! 決まったよ」と言われた時は…「え?」って感じでした。人間って、パニックになると本当に“間”が生まれるんですね。初めて実感しました。

頂いた役は主人公の親友役で、日英バイリンガルが役者の条件でした。僕はそれほど英語は流暢に話せるわけでもなかったのですが、ミャンマーにいた小さい頃、おばあちゃんが英語の先生で家で塾をやっていたこともあって体になじんではいました。

撮影は16年の6月から、ずっとイギリスでした。まずは3週間のリハーサル。ゲームの中での話なので、モーションキャプチャー撮影の段取りも入念に仕込まれました。そして約4カ月間の本番の間、僕はいつも誰よりも早くスタジオに行ってました。役者が入る前のスタンドインのチェックから、ずっと見てた。それをスティーブンが褒めてくれたのがうれしかった。「ウィンはいつも一番乗りだ」って。

現場での最大の苦労は、やはり英語でのコミュニケーションでした。自分の意思をスタッフに伝えるのに最初はとても苦労しました。それでも、4カ月もいるうちにだんだん何となくできていきました。滞在最後の方は、人生初めて英語で夢を見ました!

トップ5といわれる主役級が僕を含めて5人。アメリカ、イギリス、中国と世界各地から集まっていて、彼らにはとても触発されました。主役の俳優さんは年下だったんですがお芝居ではずっと圧倒されっぱなしだったな。さすが主役を張るだけのパフォーマンスだったんです。僕も経験を積んでいつか超えたいです。

メインボーカルを務める、ダンスボーカルユニットPrizmaXのメンバーと
メインボーカルを務める、ダンスボーカルユニットPrizmaXのメンバーと

撮影を終えて帰国して振り返ると「あ、余計なことは気にしなくていいんだ」と学んだ気がします。今までは、こうしたらこう見られるかも、のようなことを気にし過ぎていた。もっとラフに素直にいろいろなことに取り組んでいこう、って思いました。上っ面を気にせず、挑戦することに躊躇しないで。

すごく生意気かもしれませんが、今この26の僕がすごく感じるのは、音楽も芝居もベースは一緒だな、ということ。表現の手段にはこだわらず、とにかく「人の心を動かす」表現者になることを目標にしたい。

映画の公開はまだ1年先ですが、原作ものなので世界中にファンも多く、早くもネット上でいろいろ騒がれているようです。僕の役がどんな評価にさらされることになるか、考えちゃうとドキドキです。でも、今回こんな大きなチャンスを頂いたことは本当に感謝です。またハリウッド作品に出たい! 撮影中、新しいパートに進む区切りの時にスティーブンが、“ Yeah! We’re making a movie! ”って意気揚々と盛り上がっていた姿が忘れられません。