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インサイトメモNo.33

テレビとネットの同時利用と

マルチスクリーン型メディア行動

2014/01/16

近年、スマートフォンやタブレット端末の普及を背景としてインターネットの利用がますます身近になってきました。

第26回では、家庭内でのテレビ視聴と各種ネット利用端末の関係についての調査データをご紹介しました。今回は、テレビ視聴とネット上のサービス利用の関係について、オリジナル調査の結果の一部をご紹介します。

 

■テレビを「見ている時」と「見ていない時」のネット利用行動の違い

これは当然といえば当然のことですが、ある瞬間に「①テレビを見ながらネットを同時に利用している人」と、「②テレビを見ずにネットを利用している人」の割合を調査してみると、ほぼどのような調査をおこなっても後者(②)のほうが多くなります。

ここで、テレビを見ている時と見ていない時で利用されるネットサービスの内訳の違いを探ってみましょう。すると興味深いことが分かってきます。同じネットを利用している状況でも、テレビを見ている時のほうが見ていない時より利用率が高まるネットサービスがあることが分かってきました。

図表1は、調査回答者がインターネットを利用していた時間帯のうち「テレビを見ていた時(実線)」と「見ていなかった時(破線)」で利用率に違いが見られたいくつかのサービスを取り上げたものです。

図表1 主なネットサービスの利用率

(テレビ視聴時・非視聴時別)

 

検索サイト、ニュースサイト、ソーシャルメディアの3分野のサービス利用率は、実線が破線を上回っています。つまり、テレビを見ていた時の利用率のほうが高いことが分かります。逆に、動画共有サイトは、テレビを見ていなかった時の利用率のほうが高い、という結果になりました。

■テレビ視聴がネット利用の内訳に影響

どうして、テレビを見ている時と見ていない時とでは、いくつかのネットサービスの利用率に差が出るのでしょうか。

図表2は、さらに詳しく、先ほどの「①テレビを見ながらネットを同時に利用している人」について、利用率が高かった「検索サイト」「ニュースサイト」「ソーシャルメディア(閲覧・書き込み)」の3つの利用状況をさらに調べてみたものです。各サービスの2本の横棒がサービスの利用率を示していますが、上の横棒はテレビ視聴と関連のある内容のネット行動をしていた人、下の横棒はテレビ視聴と関連しないがたまたまテレビを見ながらネット利用していた人について集計したものです。

図表2 ネットサービス利用率(全時間帯平均)

(テレビ視聴とネット行動の関連の有無別)

これらのサービスの利用率は、テレビ視聴と関連のある内容のネット行動をしていた人の場合、たまたまテレビを見ながらネットを利用していた人よりも、顕著に高いことが見て取れます。ここで取り上げた「テレビ視聴と関連のある内容のネット行動」とは、たとえば「テレビ番組やCMについて興味を持ち、ネットで情報検索してみる」「テレビ番組で知った最新ニュースについてネットのニュースサイトで調べてみる」「テレビ番組の感想をソーシャルメディアで友達と共有する」などの行動を指します。

このように、調査の結果からみると、テレビを視聴することがきっかけとなり、検索サイト・ニュースサイト・ソーシャルメディアなどのネット利用が同時に活発になる場合が確かにあることが分かります。

■「マルチスクリーン」型サービスへの注目

ご紹介した調査では、家庭内でのネット利用が進むにつれてテレビなどの従来メディアとネットのあいだに相互に影響関係がみられるようになったことを、生活者のある1日・1時間の具体的な行動から確認しました。

テレビとネットの両方にまたがる同時接触を起こす時間の長さやその頻度は、それぞれ片方のみに接触する時間の長さや頻度と比べると限られていますが、今後、スマートフォンやタブレット端末など手元で利用するネット端末の利用が自宅でも更に盛んになるにつれ、テレビとネットの同時利用は増えていく可能性があると思われます。

現在、私たちにとって等しく身近な存在になったテレビとネット端末の画面を組み合わせて利便性や楽しみを提供する新しい多画面(マルチスクリーン)型サービスが構想されていますが、これが、今後、どのように利用の広がりをみせるのか、大いに注目されます。


※当コンテンツは、これまで電通WEBサイトで連載してきましたが、今後はWEB電通報にて連載してまいります。
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