対談「2013年話題・注目商品」

消費の深層トレンドからみえてくること

第3回

【第3回】

現実が期待を超え、「真の21世紀」が始まる

袖川: これまで触れていただいた五つのトレンドを踏まえ、「動き始めた未来~真21世紀元年」という言葉で、2014年を展望する消費キーワードとしているのですが、これについてはどのような印象をお持ちですか?

三浦: 時代の気分というのは、例えば1980年代が80年と同時に始まるかというと、決してそうではない。時代の気分としては70年代が残っているものです。実際、振り返ってみても、80年代らしさが出てきたのは、83~84年頃です。テーマパークしかり、テレビの人気バラエティー番組しかりです。

21世紀も2001年からすぐに始まったのではなく、暦の上では21世紀になってもまだ20世紀を引きずっているところがある。僕の感覚では、2015年頃になってようやく本格的な21世紀らしさが見えてくるのではないかと思っています。

袖川:「話題・注目商品2013」リポートでは、2013年を「現実が期待を超えた年」としていました。株価にしても、これほどまで上がるとは政府関係者でさえ思っていなかった。車の衝突防止支援システムや3Dプリンターにしても、まだ先と思っていたら急に商品化されました。そして、「もう手に入るんだ」と多くの人が驚いた。現実が期待を超えた驚きですね。そういう流れを考えて、14年は、いよいよ「真の21世紀元年」になるのではないかと考えたわけです。

三浦: 可能性はあるかもしれませんね。期待も込めて、21世紀らしさが生まれる元年になってほしい。

ポジティブなら、きっと「新しい時代の元年」になる

三浦: やはり、社会には「成功体験」が必要で、そもそも日本人はオリンピックのような国を挙げてのイベントは得意なはずです。1964年の東京オリンピックのとき、僕は6歳で、新潟でテレビを見ながら「すごい」と思った。そのときの印象が強烈に今でも残っています。

しかし今の40歳以下の人はそういう体験がない。だからといって、おじさんたちが若者をつかまえて、「おまえら、生のオリンピック知らないだろう。えっ、万博も知らない?

そうか、バブルも知らないんだよな、かわいそうだねぇ」なんて言っても始まらないのです。やはり若い人に、実際に成功体験を味わってもらうしかないんですよ。

袖川: リアルな体験の大切さですね。

三浦: 2016年のオリンピック招致のときは冷めていたのに、今回の2020年招致ではあんなに盛り上がったじゃないですか。「リアル」のさわりを実感したわけです。

実際に2020年にオリンピックをやれば、「やってよかったね」という話に必ずなる。それから十数年、何十年たっても、「あのときは仕事で忙しかったね」とか、「給料上がったよね」などと懐かしそうに振り返るはずです。

そんなポジティブな思いを、生のオリンピック体験のない小学生から40歳代までの何千万人という人がきっと抱く。人口が減り、超高齢社会まっしぐらの多難な時代に活力を持て生き抜いていくには、その成功体験が絶対に必要なはずです。

袖川: とても共感できるお話ですね。それでは最後に、三浦さんは、14年にどんな期待を持ちますか。

三浦: 景気が本格的に回復して、「本物感」が出てくるといいですね。消費税の増税や地震の心配もあるけれど、先ほどの五つのトレンドは明るい14年の底流になると思います。いろんな困難があったとしても、目標を持って、ポジティブにやっていけば、「新しい時代の元年」になるのではないでしょうか。

袖川: 実感できるお話を頂き、ありがとうございました。 〔完〕


 

三浦 展

(みうら・あつし)
カルチャースタディーズ研究所主宰
1982 年パルコ入社。マーケティング情報誌『アクロス』編集長などを務める。その後、三菱総合研究所を経て、99年カルチャースタディーズ研究所設立。著書 に、80万部のベストセラーとなった『下流社会』のほか、『第四の消費 つながりを生み出す社会』『データでわかる2030年の日本』『日本人はこれから 何を買うのか?』など。

 

 

袖川 芳之

(そでかわ・よしゆき)
電通総研研究主幹
1987 年電通入社。マーケティング局、電通総研主任研究員、内閣府経済 社会総合研究所政策企画調査官などを経て現職。多摩美術大、慶應義塾大大学院で非常勤講師を務める。専門分野はマーケティング・コミュニケーションおよび 家族研究、世代論、ヒット商品・トレンド分析など。著書に『クリエイティブ頭のからくり』など。

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