グローバル化ってなんだろう? #05

「起業家精神」は学べるのか?(後編)

前回の記事に続いて、IEビジネススクールでEntrepreneurship(起業家精神)を教えているParis教授のインタビューをご紹介します。
後編では、「大企業の中での起業家精神」について聞いてみました。

Paris教授と私

 

波部: 電通の企業スローガンは「Good Innovation.」です。 イノベーションを生み出すためには起業家精神も大切だと思いますが、大企業の中で起業家精神を育てるには、どうすればいいのでしょうか。

Paris: 大企業で働いている人の全員が起業家になる必要はありませんが、起業家のように考える必要はあります。つまり、「曖昧さ」や「不安定さ」を「ビジネスチャンス」として捉えないといけません。型にはまらずにクリエーティブに考えるというイノベーションの文化は、企業の中の全員がIntrepreneur(企業内起業家)になることで生み出されます。

波部: そのためには、特別な研修が必要でしょうか。日々の仕事で身につけていくべきでしょうか。

Paris: 両方必要です。「型にはまらない考え方」 を学んだうえで、実際にビジネスで使わなければいけません。私はある日本企業 において、まずIntrepreneurshipを教えたうえで、それをビジネスで実践するという プロジェクトをつくったことがあります。

波部: では、社内でイノベーションを生み出す際に、金銭的なインセンティブ、またはリスクは必要でしょうか。

Paris: ほとんどの人はお金のためだけに イノベーションを生み出すわけではありません。「認める」ことが、インセンティブよりも大切です。人がリスクを取りたがらないのは、失敗が自分のキャリアに悪い影響があると感じているからです。企業は、失敗も認める必要があります。失敗を罰してはいけません。

波部: 「認める」ということは、具体的にどういうことでしょうか。

Paris: 例えば、イノベーションを生み出した人をプロジェクトのリーダーにしたり、新しい部署をつくるなど、様々な方法で「認める」ことができます。自立性を与え、任せるということです。

波部: 大企業では、日々の業務も大切です。例えば、電通ではクライアントのために毎日遅くまで働いています。 本来の業務を損なうことなく、イノベーションを生み出すことはできるのでしょうか。

Paris: より長い時間働く必要はありません。勤務時間をより効率的に使う必要があります。日本人の働き方や考え方はよく知っています。 とても長い時間働きますし、人間関係も大切です。でも、同じ量の仕事をより効率的に行うやり方を考え、イノベーションのための時間をつくり出さなければいけません。

波部: 大企業とスタートアップの関係はどのようにお考えですか。

Paris: 大企業はスタートアップのような小さな会社と関わって、柔軟さを学ぶ必要があります。昨今、多くの大企業が、第三者として起業家を助けるアクセラレーターやインキュベーターとしての機能を持ち始めています。これは、スタートアップのような小さな会社と関わりを持つためには非常にいい取り組みです。

波部: 最後に、教授として、起業家として、日本の印象を教えていただけないでしょうか。

Paris: 実際に日本で教えたりアクセラレーターとして活動した経験から、日本の一番のチャレンジは「失敗への恐れをなくすこと」だと思っています。大企業で働いているだけで安心してはいけません。中国では、特に若い人たちはとてもクリエーティブです。 日本の若い人たちも変わる必要がありますし、大企業もそのために大きな役割を担っています。

私の印象として、日本には多くの可能性があります。日本のビジネスマンは責任感が強く真面目ですし、日本のデザインにおけるクリエーティビティーは世界一だと思っています。世界に誇れる企業もたくさんあります。繰り返しになりますが、「 失敗を学びとして捉える」という考え方を若い人たちが身につけられるか、ということがチャレンジです。

波部: 中国の話が出ましたが、中国と日本の若い人たちの違いは何なのでしょうか。

Paris: 例えば、中国で私が若い人たちに起業家精神について講演を行うと、2時間は質問が続きます。日本では、10分で終わります。質問をすること自体が恥ずかしいようです。

中国で若い人たちと話していると、「自分の未来は自分でつくらなければいけない」という強い責任感を感じます。これはすごく大切です。日本では、若い人たちはまだ政府や企業や家族が自分たちの面倒を見てくれると考えているような印象を受けています。そう考えているうちは、リスクを取ることはできません。そこが、変わらなければいけないポイントです。時間は待ってくれません。高齢化は進んでいき、若い人たちへの責任はますます大きくなっていきます。日本人として未来を生き抜いていくために、考え方を変える必要があります。

波部: 「未来を自分でつくる」と考えることが大事なのですね。

Paris: その通りです。

波部: 最後に、「若い人たち」とは何歳をイメージしていますか。

Paris: 40歳以下です。

波部: ありがとうございました。

Paris: ありがとう。

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最後の点については、南米出身の友人も、「自分の国の歴史は、家族に聞けば全部分かってしまう。長い歴史がある日本がうらやましい。僕たちはこれからつくっていかないといけない」と言っていたのを思い出しました。

まだしばらく「若い人」でいられるうちに、私も失敗を恐れずにチャレンジしていこうと思います。

プロフィール

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    波部 篤男
    株式会社電通 経営企画局

    2005年入社。7年間営業として、国内・外資系の様々なクライアント業務を担当し、2012年に経営企画局に異動。社の資本政策や投資案件に関わった後、2013年より、社内の「海外留学生派遣制度」でスペインのマドリードにあるIEビジネススクールに留学中。

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