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電通ブロックチェーンコミュニティーが行く!No.2

ブロックチェーン革命の鍵は“界隈性”にある!

2018/06/13

<目次>
コミュニティーは“界隈性”を生み出しイノベーションを加速する
DBCCとFINOLABのオープンイノベーション
テレビ、デジタル、コミュニティー…各自の専門領域でブロックチェーン活用
 ・データマーケティングがブロックチェーンで進化する?
 ・プログラマティック広告の課題をブロックチェーンで解決
 ・界隈性を生み出す仕組みをブロックチェーンで構築

コミュニティーは“界隈性”を生み出しイノベーションを加速する

電通ブロックチェーンコミュニティー(以下、DBCC)の蓮村です。

ブロックチェーンは画期的な技術ですが、それ自体が何らかのサービスを人々に提供するわけではなく、あくまでも「さまざまなサービスを支える」インフラです。

このインフラを使って何ができるか、ということについては、技術ありきで考えても良いアイデアは浮かびません。

つまり、ブロックチェーンでイノベーションを起こすためには、「ブロックチェーンと、既に自らが取り組み深く理解しているビジネスや業務とを掛け合わせると、どんなイノベーションが起こせるのか」という発想が必要です。

そのため、あらゆる部署にまたがった電通社内横断組織として発足したのがDBCCです。さまざまな領域に専門性を持つ社員たちが、自身の領域にブロックチェーンを活用することを考える組織です。

DBCCの立ち上げは、筆者と、電通ラジオテレビ局の岸本渉さん、電通デジタルの村山亮太さんで行いました。

私たち3人は当社グループの経営人材の育成プログラムであるDentsu Management Institute(DMI)の同期で、7カ月間、実に濃密な時間を共にしました。

Dentsu Management Instituteに集った社員たち
Dentsu Management Instituteに集った社員たち

その間、専門分野の違う3人が、それぞれの領域に先端技術、特にブロックチェーンを活用してゆくと、どのようなイノベーションにつながるのかを議論する日々を持つことができました。

以前、電通報にも寄稿しましたが、私はイノベーションの源泉は“界隈性”にあると考えています。つまり、「開かれた有機的なコミュニケーション」と「異なる分野の出会い」です。

※界隈性とは?
もともとは、建築や不動産業界で用いられる専門用語。地元民や来訪者も含めた多種多様な人々が往来し、つながり、コミュニティーを形成している街の状態を「界隈性がある」という。転じて、「イノベーションが起きるのに足る有機的かつ濃密で開放的なネットワークやコミュニケーション」が存在するコミュニティーを「界隈性がある」と蓮村が定義した。
思えば、育成プログラムを通して経営について広く深く学んだこの「場」は同時に、先輩・後輩も関係なく、電通鎌倉研修所で同じ釜の飯を食べ、さまざまなことを何日間も語り合えた、正に“界隈性”を体現した空間でした。

そしてこの経験が後にDBCCの発足につながっていきます。

FINOLABとDBCCのオープンイノベーション

ブロックチェーンという次世代社会インフラ、「価値のインターネット」と称される技術に関心のある社員で“界隈性”を形づくるのが、DBCCの趣旨であり機能になります。

DBCC発足のリリースを出すと同時に、決起会をFINOLABのミートアップに交じる形で実施しました。FINOLABとは、筆者が企画から運営に携わる日本初・最大のFinTechコミュニティースペースで、50社弱のFinTechスタートアップが参画しています。

DBCCのプレスリリースに掲載の通り、電通社員とFINOLAB会員との有機的交流を促し、オープンイノベーションを促進することも、DBCCの目的の一つです。

決起会の日、偶然FINOLABに居合わせた日本を代表するブロックチェーンスタートアップや、仮想通貨関連法制の第一人者のFINOLABメンターも、流れでDBCCの決起集会の2次会に参加してくださり、非常に深いディスカッションができました。

偶然と場の流れで、このような機会を得ることができるのも、FINOLABがこの2年半で形成してきた界隈性によるものだと感じております。

テレビ、デジタル、コミュニティー…各自の専門領域でブロックチェーン活用

DMIのおそろいのパーカーを着たDBCC発足メンバー
DMIのおそろいのパーカーを着たDBCC発足メンバー。左から電通デジタル村山亮太さん、BD&A局蓮村俊彰、ラジオテレビ局岸本渉さん

DBCCは設立から日が浅いですが、既に多くのメンバーがおり、それぞれの専門領域へのブロックチェーンの活用について取り組んでいます。ここでは、共同発起人の三人の活動に少し触れたいと思います。

データマーケティングがブロックチェーンで進化する?

ラジオテレビ局の岸本さんは、ディープラーニングを用いたテレビ視聴率予測システム「SHAREST(β版)」や、テレビとデジタルを横断する統合マーケティングプラットフォーム「STADIA」の利活用に長年携わってきました。

岸本さんは、ブロックチェーンが生み出す新しいサービスを生活者に提供することを通して、生活者の利用許諾を得たテレビの視聴ログデータやDMPデータなどを広く集積することができないか、検討を進めています。

また、ウォレットIDを核としてさまざまなIDを統合するマーケティングの仕組みや、個人情報・行動履歴の流通を事業者側ではなく生活者側でコントロールする仕組みを、さまざまな先行事例をリサーチしながら検証しています。

SHAREST(β版)
岸本さんが手掛けるSHAREST(β版)では、放映前の番組の視聴率を事前予測できる。

プログラマティック広告の課題をブロックチェーンで解決

現在電通デジタルに出向中の村山さんは、良質なデジタル広告媒体・広告枠で運用される「電通プライベートマーケットプレイス」(電通PMP)の起案・立ち上げや「アドベリフィケーション推進協議会」の起案・推進を行い、健全なプログラマティック広告の発展のために従事してきました。

また、「People Driven DMP」の構築に携わり、さまざまなデータ連携を通して、新たな価値を提供できないかを模索してきました。

彼は、日本のプログラマティック領域における大きな課題であるデータ量やデータ精度の問題をブロックチェーンなどを使った「データシェアリング」で解決できないか、具体的な検討をパートナー各社とスタートさせております。

さらに、広告などによる態度変容や実際のアクションに対する寄与度を可視化する(=アトリビューション)プロジェクトをスタートさせ、その解決策の一つとしてブロックチェーンの利用を考えています。

村山さんの記事
主にテクノロジーやデータの領域で精力的に活動する村山さんは、ウェブ電通報にも多くの寄稿をしている。

界隈性を生み出す仕組みをブロックチェーンで構築

そして私蓮村は、2016年から運営しているFinTech産業拠点FINOLABの企画者で、設立発起人の一人です。設立以来、FINOLAB会員スタートアップと電通とのオープンイノベーションを推進してきました。

産業創造やエコシステムプロデュースといった領域において、デジタルアセットやトークン、スマートコントラクトをどのように生かすと、より一層、産業創造やエコシステムプロデュースが捗るのかという点を日々考えています。

以前の連載でも言及しましたが、「場」を物理的に用意しただけでは「界隈性」は生じません。かといって、そこにスタートアップや有識者、企業担当者をただ招き入れただけでも、まだ足りず、有機的交流は生まれず、界隈性に至りません。その“もう一歩”につながる仕組みとして、「ブロックチェーン」を活用した仕組みを試してみようと現在検討を進めております。

日本のフィンテックベンチャーが集う一大拠点として機能しているFINOLAB。蓮村が企画から運営まで携わっている
日本のフィンテックベンチャーが集う一大拠点として機能しているFINOLAB。蓮村が企画から運営まで携わっている

ここで紹介した話やそれ以外も含めて、今後DBCCとしてPOC(概念実証)などに取り掛かっていく予定です。次回はそうした取り組みの一つを紹介できればと思います。