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大人に人気のガチャビジネスとインバウンドの関係No.1

大人に人気のガチャビジネス、ヒットを生み出した五つのこだわり

2018/08/03

海外から日本への観光客数は、オリンピック・パラリンピック開催の2020年までに4000万人の政府目標に向け、インバウンドビジネスもますます盛り上がりを見せています。

そんな中、電通テックとタカラトミーアーツが展開するガチャブランド「パンダの穴」が手掛ける「JAPANESE CAPSULE TOY GACHA」が外国人観光客の間で大ヒット! 通常の3~5倍を売り上げ、メディア取材も殺到、海外でもガチャブランド「パンダの穴」のイベントが行われるなど、その勢いは止まりません。

なぜこれほどの人気を集めたのでしょうか。JAPANESE CAPSULE TOY GACHAの仕掛け人である、電通テックのシニアクリエーティブディレクターで飯田雅実氏に聞きました。

飯田雅実氏(電通テック シニアクリエーティブディレクター)
飯田雅実氏(電通テック シニアクリエーティブディレクター)

「余った小銭」に着目したガチャビジネス

20年に向けて外国人観光客が増えるということは、当然、空港利用者も増えます。そこをチャンスとしビジネスを成立させるという視点から生まれたのが「JAPANESE CAPSULE TOY GACHA」です。

フックとなったのは、外国人観光客が持ち帰る小銭です。仮に1人1000円とすれば、なんと年間で

1000円×約2800万人(17年の外国人観光客数)=約280億円

にも上ります。そこで、1回200円のガチャで「あまった小銭をオモチャに!」と訴求することで売り上げにつなげられるのではないかと考えました。

16年6月に限定イベントとしてガチャを空港に設置したところ、売り上げに加え、メディア取材も多く、これはいけるという手応えを感じました。

現在は全国20の空港に展開を拡大している他、今年の6月には台湾で「パンダの穴」の展覧会など一大イベントが開かれるほど、海外でも知名度が上がっています。

6月22日~9月16日、「パンダの穴」のキャラクター展覧会「扭蛋星球(ガチャプラネット)」が台北市と高雄市で同時開催。台北・高雄の2会場合計 59850人(2018年7月15日現在) 動員し、台湾での人気を裏付ける

6月22日~9月16日、「パンダの穴」のキャラクター展覧会「扭蛋星球(ガチャプラネット)」が台北市と高雄市で同時開催。台北・高雄の2会場合計で59850人(2018年7月15日現在)を動員し、台湾での人気を裏付ける

ヒットを生み出した五つのこだわり

今回のターゲットは空港を利用する外国人観光客。とはいうものの、ほとんどの外国人の方はガチャを知らないか、知っていても「子どものチープトイ」というイメージを抱いています。そこで、素通りされないようにいろいろと工夫しました。

1.違和感を生み出す

まずは、ガチャの存在に気がついてもらわなくてはいけません。そのためにガチャを1台ではなく、ずらっと並べることを思いつきました。空港はパブリックな空間なので、見慣れないものがスペースを取っていると違和感が生まれます。すると「あれ何だろう?」と通りがかる人の注目を集めることができるのです。

2.多国語でコミュニケーションを取る

次に、近づいてくれた人に対してちゃんとコミュニケーションが取れるように、「あまった小銭をオモチャに!」と「なぜか日本で売れています」というメッセージをいろいろな国の言葉でデザインしました。海外に行って、自分の国の言葉があると自然と目がいくため、必ずそこはキャッチされると思いました。

3.大人向けにデザインする

空港は大人の利用者が多いため、大人の方が思っているチープで子ども向けのオモチャというガチャのイメージを変えるためには、商品を見せるしかないと思いました。そこで、展示什器は小さな美術館というイメージで商品がアート作品に見えるようなデザインにしました。

色もモノトーンで統一し、先ほど紹介した多国語もプレーンな書体を使うなど、大人がガチャのマシンをじっくり見ていても恥ずかしくないよう意識しました。

4.「200円でこのクオリティー!」というギャップを演出

さらに、じっくり見てみると「思いがけずよくできていて、面白いものがある」というギャップを狙いました。クオリティーについての詳細は後編でお話しますが、実際、200円でこのクオリティーというのは、世界中を探してもあまりないと思います。

5.SNSでの拡散効果を使う

広告予算がなかったので、認知してもらうためにはSNSで拡散するしかないと当初から考え、写真を「パンダの穴」のSNSで投稿していました。その反応に加え、外国人も購入者の方たちが次々にSNSへ投稿してくれたので、自然と拡散につなげることができました。

SNSブームの波にうまく乗れたのも大きかったと思います。特に台湾では写真を撮ることが大流行中。イベントでもどんどん写真を撮ってすぐに投稿するというのを目の当たりにし、ガチャとの相性の良さを感じました。

このように、当初からのこだわりや工夫がヒットにつながったのだと感じます。さらに、空港というマーケットも穴場でした。24時間営業で、そこにいる人たちはフライト待ちで時間を持てあましているためじっくり見てくれる上、小銭も余っていると好条件がそろっています。

また、ガチャの楽しみは世界共通。ガチャガチャと回す面白さや、何が出てくるのか分からないといったドキドキ感は国が違っても変わりません。商品を買うだけではなく、その行為自体も楽しんでいただいているようです。

さまざまな仕掛けや状況が重なり、大ヒットにつながったJAPANESE CAPSULE TOY GACHA。後編はヒットを支えるクオリティーへのこだわりや今後の展望をお届けします。

関西国際空港に並ぶガチャマシン
関西国際空港に並ぶガチャマシン

■電通テック公式サイト「パンダの穴」
https://www.dentsutec.co.jp/next-products/panda-no-ana/
 
■電通テックコンテンツメディアBAE:なぜ外国人旅行者は空港でガチャを買うのか?
(全4回)

http://bae.dentsutec.co.jp/Articles/gacha-01/