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ビッグデータは、広告会社にとって敵なのか?味方なのか?No.1

広告会社から見たビッグデータとは

2014/01/14

「×××は、我が社にとって敵なのか?味方なのか?」
これは、目の前に現れた未知なる物象の正体を大まかに判断するために、社内で何かと耳にする問いかけです。そして今まさに、電通のみならず広告業界全体でも、この問いに対してのアンサーを模索している物象の一つに「ビッグデータ」があげられるのではないでしょうか。
本コラムは、主に「広告会社にとってビッグデータとは何か?」をテーマに進めていきたいのですが、
「何か?って、メディア接触データやソーシャルデータや購買データを掛け合わせて、高度統計手法を用いてモデリングを行うことでしょ? もうすでにウチではビッグデータに取り組んでるよ」
というお声が聞こえてきそうです。

その通りです。
現在広告業界では、主にメディア投資効果のアカウンタビリティーとして、これまでのパネルベースのデータ分析の延長として、行動ログなどの全数データを分析対象にしたビッグデータへの取り組みが活発化しており、また競争領域となっています。

そのなかで本コラムは、ビッグデータに関して新たに広告会社が目指すべき事業ドメインやマーケティング施策を、その実現の種となりそうな事例をご紹介しながら考えていきたいと思います。

大容量が特性なのではなく、3つの特性により“結果的に”大容量

まず、ビッグデータを活用して広告会社が目指すべき事業ドメインとは何なのでしょうか?
総務省がビッグデータビジネスを「ビッグデータを用いて社会・経済の問題解決や、業務の付加価値向上を行う、あるいは支援する事業」という定義を紹介している(※1)ように、「クライアント業務の付加価値向上を行う、あるいは支援する事業」と言ってもよいのかもしれません。
そもそも、約3年前に突如として現れた「ビッグデータ」。いまだ正しい意味の伝わらないバズワードが、これほどまでに市民権を得たのも珍しいのではないでしょうか。とはいえビッグデータの意味を曖昧なまま進めるわけにもいきませんので、本コラムでは総務省が紹介している「高解像」「高頻度」「多様性」という特性をベースとします。要はこの3つの特性から、ビッグデータは“結果的に”大容量な可能性があるのであって、特性として「大容量」というのは本質的な説明ではありません。
この理解を間違えていると、大規模データを処理する技術論ばかりに焦点があてられ、あれよあれよという間にHadoop(※2)をはじめとする大規模データ処理システムが社内に構築され、後になって「一体ビッグデータでどのような事業価値を見いだすのか?」と議論を始めるような、本末転倒な展開に陥ってしまいます。

センサー由来のデータが新たな事業やマーケティング革新を起こす可能性

広告会社にとっての付加価値向上を実現するには、具体的にどのようなデータがあるのでしょうか。
個人的には、センサー由来のデータこそが、新たな事業やマーケティング革新を起こすのではないかと期待しています。スマートフォンとともに、ウェアラブル系を含む「ネットワークに接続されたセンサー技術」が一般普及し始めています。下の写真は、私が所有する「ワイヤレス体重計」です。この体重計に乗ることで、私の日々の体重や体脂肪率など“多様”なデータが、自動的に“高頻度”でクラウド環境にアップロードされ、数値遷移が様々なデバイスを通じて確認できます。

このようにセンサーから収集され、クラウド環境にアップロードされた個人に関するビッグデータを、“個人の了承”のもとにサービス事業者同士が連携し活用し合うことで、より魅力的なサービスが提供できるようになります。例えば医療事業体にとっては、患者の動体データや睡眠の状態を表すデータにより、異常をリアルタイムで感知するなど、質の高い医療サービスを提供することが可能となります。
マーケティングの大局観が「リアルタイム&パーソナライズ」へシフトするなか、センサー由来データによるCRMマネージメントには、われわれ広告会社にとって大きな可能性があるのではないでしょうか。

次回は、マーケティング視点で、センサーデータ活用の可能性についてお伝えしたいと思います。

(※1)総務省 情報通信白書24年版 ビッグデータとは何か
(※2)Hadoop 大規模データを効率的に分散処理・管理するためのオープンソースミドルウェアのこと。