JAXA宇宙飛行士 野口聡一氏 「21世紀型宇宙飛行士の役割と未来をつくる力」第3回

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    野口 聡一
    JAXA宇宙飛行士

「21世紀型宇宙飛行士の役割と未来とつくる力
  ― 国際社会への貢献を目指して」 第3回

JAXA宇宙飛行士 野口聡一氏

 

求められる多文化適応力

 

このように、宇宙飛行士の活動は非常に多岐にわたり、その全てが全地球的なものです。故に、資質としては、各国の関係者と協働できる多文化適応力が非常に求められます。専門的な知識や技術力、危機管理能力などは訓練を通じてみっちり鍛えられますが、これからの宇宙飛行士には、多様な文化や個性に的確に対応できるコミュニケーション力や人間力がより求められるはずです。

 

国籍や文化の違いだけではなく、年齢や世代、性別、国内の生まれた地域の違いも超えた、多種多様な「個」(パーソナリティー)と向き合いながらミッションを遂行できる能力のことです。これこそが、21世紀型の宇宙飛行士に求められる資質と言っていいでしょう。ISSでのリーダーシップのスタイルにもいろいろあります。協調や「和」を重視する人もいれば、先導的に力を発揮する人もいる。また、それぞれのリーダーのタイプに応じた部下のフォロワーとしての能力も重要。いずれも、多様なパーソナリティーと向き合う適応能力が不可欠です。ビジネス社会で求められる対人能力と同じです。大事なのは、リーダーや部下のタイプがどうあれ、チームとして機能を完璧に果たすことです。あらゆる組織で危機管理が重要課題となる中、これからの国際的な相互依存社会でも欠かせない視点ではないかと思います。

2009年12月から約5カ月半、長期滞在クルーのフライトエンジニアとしてISSで任務を遂行。
10年4月には、山崎直子さんらも到着。写真中央上部で逆さ状態になっているのが野口氏、その左側3人目が山崎氏。

 

現在、私は先に触れた広報や啓発活動、国際貢献活動の他に、人が宇宙に行ったときに経験する内面的な変化を考察する認知学・心理学分野の研究もしています。宇宙飛行士が宇宙から発信したツイートや日記を分析して、宇宙空間への適応過程における、自己表現の仕方や対人関係への影響を調べるものです。意外に思われるかもしれませんが、このような研究も宇宙飛行士としての活動の一環なのです。

 

もちろん、私もまだ現役の宇宙飛行士です。3度目のフライトを目指して日々訓練をしています。私自身の夢は、2020年の東京オリンピックで聖火を宇宙に持って行き、国立競技場に持って帰ること。これからも夢を持って、チャレンジし続けていきたいと思っています。 (完)

プロフィール

  • Noguchi soichi profile
    野口 聡一
    JAXA宇宙飛行士

    東京大大学院修士課程修了。1991年石川島播磨重工業(現IHI)に入社、航空宇宙事業本部に所属しジェットエンジンの設計などを担当。96年、NASDA(現JAXA)が募集していた宇宙飛行士候補者に選定さ れる。2005年、スペースシャトル「ディスカバリー号」に搭乗し、国際宇宙ステーション(ISS)組み立てミッションに参加。3回に及ぶ船外活動のリーダーとして任務を果たす。09年から10年にかけて、ISS第22次・23次長期滞在クルーのフライトエンジニアとして約5カ月半ISSに滞在し、日本実験棟「きぼう」でのロボットアームの子アームの取り付けや実験運用などを実施。現在、JAXA宇宙飛行士グループ長を務める。

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