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セカイメガネNo.16

混じり合って、進化し続ける

2013/09/18

私はたいがいのマレーシア人と同じように英語、中国語、マレー語を覚えて育った。でも、いま街を歩けば数え切れないほどの外国語が耳に飛び込んでくる。どこのレストランに行こうとホテルに宿泊しようと、サービスを提供してくれる人はもはやほとんどマレーシア人ではない。ウルドゥー、インドネシア、タガログ、ミャンマー、タイ、ベトナムなど何十ものアジアの言葉がそこでは話されている。クアラルンプールにはリトルコリアがある。そこに住む韓国人は多国籍企業で働き、学校に通い、レストランやコンビニエンスストアの経営者になっている。

マレーシアの人口は3000万人に満たない。そのうち外国人が占める割合は政府発表では約10%だ。違法滞在者を含め20%を超えているとの指摘もある。外国人の移住は1990年代から始まり、多くの業界の労働力需要に応えてきた。マレーシアの構造はアメリカ合衆国に似ている。いくつかの民族が力を持ち、それ以外にたくさんの国からやって来た民族が混在している。マレーシアはいつも混在の歴史だった。入れ替わり外国人がやって来ては住み着き、貿易を始め、国を支配した。英国、オランダ、日本、ポルトガル、アラブ、中国、インドネシア、インド、スリランカ、アフガニスタン、ネパール。彼らの国籍を挙げていけばきりがない。

600年前、ここはマジャパヒト王国の一部だった。さらに歴史を遡(さかのぼ)ればシュリービジャヤ王国の一部だ。57年に英国から独立を獲得したとき、あらたに3種類の民族が国を支配した。マレー人、中国人、インド人だ。それ以外に50を超える民族が暮らしてきた。現在のマレーシア観光促進キャンペーンのタグラインは、「マレーシア、真実のアジア」である。この言葉は私たちの現実を見事に凝縮している。マレーシアでは社会も文化も劇的な変化がずっと続いてきた。こうした変化に対する感情は、正直、ちょっと複雑だ。多様性を受け入れ歓迎する人たちもいる。一方で過剰な変化が私たちの未来に与える影響を憂慮する人たちもいる。

結局は愛国心の問題に行き着く。書類上でその国の住人になることと、感情的にも市民になり切るのとでは話はまったく違う。ここに住む外国人たちが自分の利益や都合ばかりを考えているなら心配だ。けれどもこの国を、機会を提供し未来を約束するわが家なのだと彼らが心から受け入れるならば、私の心配は無用になる。マレーシアが進化を永遠にやめない、興味深い国として存在し続けることになるからだ。

(監修:電通イージス・ネットワーク事業局)