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仕事の創り方を変えよう!No.2

山本憲資×廣田周作:リスクテイクする覚悟がある人の仕事術

2014/01/30

近未来の予測もできないほど、変化の激しい今の時代。前例、慣習にならうのではなく、自ら社会の中に新しい役割、働き方を見つけていく必要があります。広告業界に限らず、そんな新しい働き方を見つけ、実践する方に電通プラットフォーム・ビジネス局の廣田周作さんが話を聞きに行きます。

工学部出身の経歴も生かし、ソーシャル上のデータから消費者ニーズ、情報拡散の流れなどを分析。さらにその知見をコミュニケーション活動、クリエーティブ開発に生かしてきた廣田周作さん。現在は電通の中で、「コミュニケーション・プランナー」という新たな仕事のスタイルを開拓しようとしています。そんな廣田さんが今回、対談相手に選んだのは、モノを通してつながりを生み出すソーシャルメディア「Sumally(サマリー)」を立ち上げた、株式会社サマリーの代表、山本憲資さんです。新卒で電通に入社後、コンデナスト・ジャパンに転職し雑誌「GQ JAPAN」のエディターに。編集者としての経験も持ち、現在は経営者として新しいサービスデザインを動かす山本さんの目に映る今の電通とは、広告会社のあり方とは。

Theme① 「Sumally」を立ち上げたきっかけは?

山本:元々、僕はモノが好きなのですが、例えばナイキのスニーカーの全モデルを見ることのできる場所がパブリックにないということをもったいなく思ったのがきっかけです。スニーカーもそうですが、人間がつくったモノを整理して残していく場所をつくるのも、人間のミッションのひとつなのではないかと思って。そこでまずはモノの百科事典をつくれないかと考えました。

では2010年代の百科事典ってどんなスタイルになるだろうと考えていった結果、写真があってそれが何かが分かるということはもちろん、加えて「誰がそれを欲しい」と言っていて、「誰がそれを持って」いて、「誰がそれを売っている」のかも、モノをアイデンティファイする上で非常に重要な情報じゃないかなという考えに行きつきました。その次のステップとして自分の趣味に合う人をフォローして、その人たちの「want」「have」したものが流れてくる、自分が「want」したら、自分のフォロワーにも流れていく、というようなコミュニケーションの形があるんじゃないか、と思いました。
そこに人が集まり、そこに充実したモノのリストができることによって、結果的に現在のコマースの構造改革もできるのではないか。それをできるところまで行きたいっていうのが僕らが今、描いているビジョンです。

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経営者としてサービスをつくる側に立った山本さん、エージェンシーで働く人々のリスクテイクについての考え方に言及し、覚悟の必要性を説きます。廣田さんも働き方が変わりつつあると感じているようです。

Theme② どこまでコミットするか

山本:電通にいる知り合いが、フィーをもらった上でさらに成果報酬をもらうというビジネスモデルをやりたいと話していたのですが、事業をやっている身からしたら「なんで広告会社に成果報酬払わなきゃいけないんだ」と感じる部分がとうしてもあります。失敗したらリスクをとる成果報酬ならいいけど、そうでないなら主体者意識として、どうしても大きな差が出てきてしまうのではないか、と。

廣田:どこまでコミットするかという問題ですね。そこは僕らの働き方のスタイルにも影響してくることです。僕のイメージでいうと、ペイドメディアだけでなく、オウンドメディアへとコミュニケーションの領域が広がる中で、今後は広告会社は人材派遣業だというのもあるのじゃないかと思っています。例えば、3年間はその会社の社員としてオウンドメディアにちゃんとコミットして、UX(ユーザーエクスペリエンス)とかにも責任も持ちます、っていうような形に。それではじめてフィーみたいなことが言えるのかなっていう形で、働き方も変わらざるを得ないというか。

山本:広告会社が成果報酬型のビジネスモデルに移行するのもひとつの方向性だとは思います。ただ、リスクを取らずに成果報酬というのは同意を得づらいですよね。

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経営者として、仕事に対するスタンスに主体者意識を求める山本さん。廣田さんは、そんな山本さんやサマリーが求める人材、必要な素養について質問します。

Theme③ サマリーに必要な人材とは

廣田:自社の社員に求める素養って何ですか。

山本:まだ会社が小さいので、まずは優秀なエンジニアと優秀なデータアナリストですね。

廣田:チームの最小単位はどんな構成になりますか。

山本:まずは、エンジニアが一人。次に必要なのは解析する人、データアナリスト。で、最後がストーリーテラー。でも、ストーリーテラーがいないと何も始まらないことも多い。僕はここですね。

廣田:僕らの場合には、そういう感覚でサービスデザインまでやってこなかったという実感があります。

山本:組織として考えたときにPDCAサイクルをどのレベルで、どのレイヤーで見るか。いろんなレイヤーがあるんですけど、基本機能としてPDCAを回し、つなげていくという構造がウェブサービスには最低限必要になります。

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PDCAの重要性を改めて感じる廣田さん。山本さんは、その考え方を必要とするのはプラットフォームをつくる場面だと話します。ここでもやはり、覚悟を持って取り組むということが重視されています。

Theme④ 既存のリソースを最大化できるプラットフォームをつくる

廣田:僕は今、毎朝クライアントの会社に行って昨日の活動の成果を検証し、PDCAを回し続けています。その継続の中で、なぜこのクリエーティブはワークしたか、ワークしなかったのかというユーザーインサイトをずっと貯め続けていて、成功の確率をちょっとでも上げていくみたいなことをやっています。つまり、コミュニケーションの領域で運用型というか、山本さんが「Sumally」で日々やっているようなPDCAを回して改善していくスタイルを模索しています。

山本:従来の広告キャンペーンは打ち上げ花火型ですよね。そこでPDCAを回す必要はなくて、いかに綺麗な花火を打ち上げるかが大事。積み上げの必要はあんまりないところだと思います。広告会社の仕事で、積み上げの必要があるとしたら、それは新しい仕組みをつくる、ルールをつくるときかな、と。

廣田:広告会社でも「Sumally」のようなサービスをつくっていける可能性があるのかな、と思いますが。

山本:一般ユーザー向けのサービスを広告会社がつくるのが適切なのかどうかは分からないですね。広告会社でつくるサービスだったら、テレビCMの効果をちゃんと計測し、改善を重ねることで、投資対効果をほぼ自動で最大にするシステムとか。

廣田:今、持っているリソースを最大化するってことですね。

山本:今からFacebookやGoogleのようなサービスをつくれるかといえば、難しいと思いますし。しかもこれまでの広告会社は、クライアントの求めに応じて仕事をしてきました。自社が音頭をとってサービスをつくっていくには、ビジョンとストーリーが必要ですよね。

廣田:あと覚悟が必要ですね。

山本:電通4代目社長の吉田秀雄さんは当時、登場したばかりのテレビというメディアに着目し、今のテレビ、テレビCMのプラットフォームをつくりあげた。現在のように、クライアントの求めありきで、それに適切に応じていくという業態であるのも理解しつつ、リスクを取ってでも時代のプラットフォームを創ることにコミットしていく割合が増えるとますます面白い会社になるのではないかと思います。

廣田:自ら語るストーリとしてのビジョンだったり、コミット感だったり…。自分からアクションを起こす覚悟みたいなものが、今の広告会社にまだまだ必要なのかなと思いました。ありがとうございました。

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