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女性オーディエンス・インサイト特集No.1

興味を持つコトバ、親近感を持つコトバ

2020/03/31

情報メディア環境が目まぐるしく変化する中、私たちが使うコトバも生き物のように変化し続けています。電通メディアイノベーションラボは2019年11月、女性を対象に、最近のコトバについての興味関心度や親近感を調査。加えて、女性のデジタルデバイス利用状況や各世代の特徴を表す価値観を調べました。

第1回は、最近のコトバと女性の関わりを世代ごとに見るべく、10代刻みで興味関心や親近感を抱く人の割合を分析した結果を解説します。コレスポンデンス分析と階層的クラスター分析を行い、項目ごとの関係性も可視化しました。

図表2 調査対象とした親近感ワード一覧

女性が興味関心を抱くコトバは?

今回調査した項目の中では<収納術>が、全ての年齢層で50%を超えトップとなりました。溢れるモノを片付けるという動機は、女性の大きな関心事のようです。次いで<オーガニック>。10代で若干低いですが、どの年齢層でも高いことが分かります。「食べ物から見直す」という、近年の美容意識と健康志向の高まりがうかがえます。

単位は%。「非常に興味・関心がある」と「やや興味・関心がある」の合計

このデータでコレスポンデンス分析を行うと、図表3のような集計表からは見えてこない項目同士の関係性(近さ)を一覧化することができます。今回は、青の点がワードの項目、赤の点が年齢層の項目になっており、緑の枠が階層的クラスター分析によって同じクラスターに属するワードを囲んだものです。

図表4の分布図の中では、<野菜ソムリエ>と<オーガニック>の距離が近い、すなわち関係性が近いということは、「健康的な生活を送りたい」「年を重ねても常に美容を志向する」という女性の潜在的な意識を反映する項目同士であるといえるでしょう。

なお便宜上、年齢層とワードという異なる次元の分布図を重ねてあるため、特定の年齢層とワードが図上で近いとしても、必ずしも相関しているわけではありませんのでご注意ください。

図表4 女性が興味を持つワードの関係性
コレスポンデンス分析:行と列で構成されるクロス集計表などについて、項目同士の関係(近さ)を視覚的に把握する方法。相互に関連性の高い項目は、原点から見て同一方向に置かれる

女性が親近感を抱くコトバは?

次に、親近感を抱くコトバについては、近年、若年層の間で使われているものを中心に集めました。結果的には、10代と20代のスコアが順当に高くなり、実際の会話やSNSなど日頃のコミュニケーションで使用されているであろうコトバに親近感を抱く傾向が強い、という結果となりました。

ただ、<ヤバい>というコトバは、比較的上の年齢層においてもスコアが高くなりました。<ヤバい>は良い意味でも悪い意味でも使われ、男性で使う人も多く見かけますが、その使い勝手の良さからか70代という上の年齢層までもが親近感を抱くコトバになっています。

諸説ありますが、このコトバの語源は、江戸時代の牢屋で看守が近づいたことを仲間に伝える隠語であったということです。何らかの要因や刺激によって、心がザワついて<ヤバい>と表現するという意味では、昔も今も同じなのかもしれません。

図表5 年齢階層別の親近感ワードの割合
単位は%。「非常に親近感を感じる」と「やや親近感を感じる」の合計

親近感を抱くワードのコレスポンデンス分析結果ですが、この中で、<虫歯ポーズ><シミラールック、シミラーコーデ><すこ>が近いことが分かります。これは若年層において各ワードの親近感スコアがそれぞれ高いことが反映されています。

<虫歯ポーズ>は、手を頬に当てることで小顔に見えることから特に女性の間で広まりました。<シミラールック、シミラーコーデ>は、彼氏と同じファッションやコーディネートをすることで親密さを表現する気持ちを反映するものです。<すこ>は、もともとニコニコ動画での変換ミスから、好きというコトバが変化したもので、特に若年層の間で広まりました。こういったコトバの拡張性はどの時代でもあるもので、「すこすこのすこ」、すなわち、好きなものの中でも特に好き、ということを表現するものまで現れました。

図表6 女性が親近感を持つワードの関係性

 

流行するコトバの原動力はやはり若年女性

以上見てきたように、コトバへの興味関心と親近感を切り口に女性のメンタリティーを探っていくと、新しいコトバが生まれては消えていく際、特に若年女性の役割が大きいことが分かりました。新しいコトバは、若年層向けのコミュニケーションでは有益ですが、より上の年齢層に対しては意図したメッセージが正しく伝わらない可能性もあるため、届けたい相手に対してある程度の使い分けが必要になるでしょう。

新しいコトバというものは若い世代が生み出していくことが多いですが、その若い世代はSNSなどを通じてコトバを広める原動力も併せ持っています。彼女たちが今後、社会の中核となるにつれ、その世代の特徴として同じコトバを使い続けることもありますし、時代や年齢につれて使うコトバが変質していくことも考えられます。そういった意味で、こうした世代論的分析は今後も注目される手法といえるでしょう。

次回は女性のデジタルサービス利用状況について解説いたします。

【調査概要】
●調査名:女性年齢階層12区分調査
●対象エリア:関東(東京都/神奈川県/埼玉県/千葉県)、中部(愛知県/岐阜県/三重県)、関西(大阪府/京都府/兵庫県/奈良県)
●対象条件:15~74歳女性
●サンプル数:3,000ss
●調査手法:インターネット調査
●調査期間:2019年11月1日~5日
●調査機関:ビデオリサーチ