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イノラボが生み出す協創のカタチNo.5

ソーシャルシティプラットフォーム「+fooop!」が実現する、世界最先端の街

2014/03/03

株式会社電通国際情報サービス(ISID)のオープンイノベーション研究所(イノラボ)は、いま、ITを利活用したまったく新しい街づくりにチャレンジしています。

連載5回目の今回は、ソーシャルシティの仕掛人、イノラボ研究員・鈴木淳一さんに、世界初のITプラットフォーム「+fooop!」についてお聞きします。

「+fooop!」から生まれた、街を育てる「コンパスサービス」って?

――ソーシャルシティプラットフォーム「+fooop!」について教えてください。

鈴木:「+fooop!」は、ISIDが新たに事業化した街のITプラットフォームのブランド名であり、同時にイノラボが主体となって進める研究開発プロジェクトのコンセプト名でもあるんです。「+fooop!」プロジェクトの第1弾である大型複合施設「グランフロント大阪」は、この二つの要素が同居する、まさに「+fooop!」そのものと言える事例。街のコミュニケーション基盤「コンパスサービス」として、ISIDが街の運営事業者と共同で企画・開発したシステムが実装されているわけですが、確立された機能やサービスを提供しているだけではなく、最新のテクノロジーをいち早く実装し、試すことができる、巨大な実証実験場でもあるんです。

「コンパスサービス」は、ユーザー一人ひとりのニーズに合った情報を提供する、街のナビゲーションツールであり、コミュニケーションツールです。施設内に設置されたタッチパネル式デジタルサイネージ「コンパスタッチ」と、スマートフォンアプリ「コンパスアプリ」から利用することができます。「コンパスアプリ」は、スマートフォンにダウンロードしていくつかの設問に答えると、個々のタイプに合ったナビゲーションキャラクター「クピ」が登場します。「クピ」の案内に従って店舗を訪れるも良し、アプリの「まちツイ」機能でお店や施設のレビューを投稿するも良し…。「まちトモ」機能を使って街の中にいる友達とつながることができ、またFacebookやTwitterと連携させることで、SNSからソーシャルグラフをインポートすることも可能です。

「コンパスタッチ」は、「グランフロント大阪」内に設置された36台のサイネージに、ICカードをタッチすることで、より楽しく利用できます。こちらもログインすると「クピ」が登場し、ユーザーを知るためにいくつかの質問をしてきます。スマホがなくても、「クピ」とのコミュニケーションを楽しみながら、街の最新情報やイベント情報を取得できるようになっています。「コンパスアプリ」と連動させることで、どちらの端末からでも自分に合った情報を確認することができます。

ユーザーから見た「コンパスサービス」は比較的シンプルなのですが、裏ではかなりいろいろな情報が動いているんですよ。12種類の「クピ」は、私たちが作った数千に及ぶ人物類型をわかりやすく大別したものですし、36台のサイネージの他に、商業施設だけでなくデッキスペースや庭園、ブリッジといった単位でものすごい数のスポットIDを割り振っています。すべての情報が蓄積されリンクすることで、「コンパスサービス」が、個々のユーザーの行動特性を学習するようになっているんです。

12種類の「クピ」

 

チェックイン機能、張り巡らされたスポットIDへのタグ付けで、消費行動の先を読む

――「グランフロント大阪」では、具体的にどのようなデータを収集、蓄積しているのでしょうか?

鈴木:まずは来店履歴ですね。お買い物をすると100円で1ポイントたまるシステムになっているんですが、ポイントをためるタイミングでチェックをしています。それから、FacebookやTwitterでおなじみのタグ付けやチェックイン機能のようなもので、誰とどこに行ったかの行動履歴を取得しています。「グランフロント大阪」の場合、先ほどお話ししたように街中いたるところにスポットIDが振られているので、お店だけでなく、広場や階段といった場所にもチェックインして思い出を刻むことができるんです。しかも、記録をする際に、なぜその場所に来たのか、8つの選択肢から選べるようになっていて。例えば、金曜の夜に「記念日だから」という理由でレストランにやってきたAさんと、そこにタグ付されているBさんには、深い関係性があることがわかります。関係性が切れていなければ、次の年の記念日に来店してくれる可能性があるわけで、街やお店側は、そこに向けたアプローチやサービスを展開することができますよね。

他にも、スマートフォンの正確な位置を計測するために、ISIDのグループ会社であるクウジット株式会社のセンシングデバイスをあちらこちらに配置しています。これによって、3~5メートルの誤差でスマートフォンの位置が測れるようになり、来訪者と同伴者がどのぐらいの距離を取って、どこを移動しているかがわかるようになりました。1時間も滞在してもらえれば、その人が知人とふたりで来ているのか、団体なのか、それともひとりなのかが把握できる。こうしたさまざまなデータを蓄積、分析し、生かすことで、「グランフロント大阪」はまだまだ進化していくと考えています。

「グランフロント大阪」を、向こう5年間、世界最先端の街にする!

――データが街づくりに生かされていることはわかりましたが、ここまでいろいろな情報が知られてしまうとなると、拒否反応を示す方もいるのでは…?

鈴木:データ取得については、すべて許諾を取って行います。また、チェックイン情報などは公開範囲を友人のみとするか、全て公開するか、友人からのお誘いを許可するか否かといったレベルで細かく設定することができるようになっています。また、出せば出すだけメリットがあるようなサービスを展開していますので、来訪者の方も「それなら」と十分納得してくださっているように感じますね。

それから、NFCやセンシングデバイスなどによって私たちが集めた情報は、匿名型のIDに基づいて関連付けがなされます。IDに紐付く形で特徴を分類し、その類型化された特徴を、IDにつながるようマーケティング展開する。「港区の青山さん」といったような個人情報とは決して結びつかないようになっているので、その点は、心配しないでくださいね。

――なるほど、安心しました(笑)。では、今後「グランフロント大阪」は、どのように発展していくのでしょうか?

鈴木:街の運営事業者からは「ここを向こう5年間、世界最先端の街にしてください」と言われています。「グランフロント大阪」の強みは、来店履歴が取れて、移動履歴が取れて、SNSとも連携しちゃう、「ICTの専門家である我々としてはなんでも提案できちゃうね」と言いたくなるような基盤が整っていること。まだイノベーター層しか手を出していないようなテクノロジーやビジネススキームを見つけ、それを「グランフロント大阪」のIT基盤や情報を生かしてアレンジし、積極的に取り入れたいと思っています。なにかすごい技術を見つけたら、まず「グランフロント大阪」に実装してみるつもりですので、今後の展開を楽しみにしていてください。

第6回に続く)