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OOHのニューノーマルNo.4

LIVE BOARDで見る「プログラマティックOOH」の今

2021/11/09

LIVE BOARD

OOH(Out of Home:屋外広告・交通広告)は、現在、デジタル広告のように、“ヒト”基点で柔軟に出稿され、効果検証までワンストップで行えるように進化しています。

DOOH(Digital Out of Home:デジタルサイネージを活用した広告)をネットワーク化し、取引や配信を柔軟に行い、広告の枠・指標・配信が一括管理できる「プログラマティックOOH」について、LIVE BOARD社の髙山晋太郎氏が紹介します。
LIVE BOARD社
NTTドコモと電通によって2019年に設立されたジョイント・ベンチャー・カンパニー。OOH領域において国内で初めてインプレッション(広告視認者数)に基づく配信を実現。コロナ禍のような人流変化が起こりやすい状況下でも、“そのとき、その場所で、その広告を”見ると仮定される人数をもとに、限りなく実態に即した広告配信および課金体系を展開している。加えて、屋外・屋内、電車内、駅構内など日本全国の多様なDOOHを束ねた独自ネットワークに国内最大級キャリアのビッグデータを掛け合わせることで、性・年代別によるターゲティングなど、従来のOOHでは難しかった“ヒト”基点による配信を可能にした。


 

国内OOH領域への黒船来航

私自身、LIVE BOARD社に加入するまではデジタル領域への関わりしかなかったこともあり、正直なところ、デジタルの当たり前が通用しないOOHをよく分からないものと捉えていました。

そんな中、OOHが今も昔も変わらず生活に溶け込む形で存在し、大型かつ多様なスクリーンで訴求可能なユニークなメディアであることを知って、他媒体にはない魅力を感じるようになりました。先進的なテクノロジーを掛け合わせ、新たな価値を生もうとする「プログラマティックOOH」の取り組みにも大きな意義を感じていて、いち早く日本市場に浸透させるべく試行錯誤しています。

OOHの先端をいく欧米など海外の企業と仕事をする機会も増えました。彼らとのディスカッションや、業界イベント、およびソーシャルメディアなどを通じた発信に触れるほど、OOHが実は世界的な成長領域であることを肌で感じています。それをけん引するのが「プログラマティックOOH」という新しいコンセプトであり、ここ数年で欧米を中心に浸透しつつある印象です。そして日本にも、グローバルプレーヤーと呼ばれるような世界的な広告配信事業者が続々と進出を始めています。

なくなりつつある海外との垣根

「プログラマティックOOH」の波とともに、OOH領域において、日本に海外からのバイイング需要が押し寄せています。

これまで日本国内のOOHは、あまたある“枠”への個別問い合わせに象徴されるような煩雑さに加えて、その広告効果も明らかにしづらいものでした。それが、海外からの広告出稿依頼ともなれば、なおさら仲介する広告会社の負担が大きかったものと想像します。ここで、海外からのインバウンド需要において「プログラマティックOOH」の柔軟性が発揮された、当社の事例を2つ紹介します。

日本国内での出稿機会に際して、某広告主より、カナダ・モントリオールの当社パートナー・Hivestack社経由で、今すぐにでもOOH訴求を開始したいという依頼を受けました。私たちに連絡が入ったのは木曜の朝でしたが、出稿することができる期間が3日後の日曜までと決まっていたため、同日の夕方前にはスクリーン選定やクリエイティブ考査などすべての手続きを終え、関連性の高い都心エリアで広告配信を開始しました。

これはさすがに極端な例かもしれませんが、柔軟性は「プログラマティックOOH」の大きなストロングポイントです。入稿から広告配信までに必要なステップの多くを私たちのSSP(※1)で一元管理できることにより、これまでのOOHでは考えにくかったデジタル広告に近いスピード感を実現しています。もしかすると、日本からニューヨークのタイムズスクエアの広告枠を数時間後に買い付けるのと同じようなことかもしれません。このように、「プログラマティックOOH」によって海外との距離的・時間的な垣根は明らかに低くなっているように感じます。

※1 SSP:サプライ・サイド・プラットフォーム/広告枠を提供するメディア側のプラットフォーム。


 

世界横断のプログラマティック配信を実現

もうひとつの事例も、海外からのインバウンドの取り組みです。某世界的ラグジュアリーブランドの世界横断キャンペーンがありました。

ロンドン、ニューヨーク、ミラノ、シンガポール、そして東京のDOOHにて横断的な配信を行うべく、ロンドンの広告会社によって各都市のビルボード、ストリートファニチャーなどグローバル広告枠の一元的な買い付けが行われました。当社からはHivestack社のDSP(※2)を通じて都内の高所得エリアに位置するビルボード広告枠へのアクセスを提供しており、これは実質的に世界で初めての世界横断「プログラマティックOOH」キャンペーンとなりました。

東京においては約3カ月の期間中に複数のキャンペーンを連続展開し、代わる代わる掲載された広告クリエイティブ数は30を超えます。柔軟なクリエイティブの差し替えはOOHの性質上、簡単なことではありませんが、当社では各キャンペーンに応じたダイナミックなクリエイティブの差し替えおよび配信スクリーンの切り替えを、それぞれ1日足らずで実現しています。「プログラマティックOOH」では標準化・自動化された要素がとても多いため、いち早くクライアントニーズに応えることができるのです。

ここまで2つのインバウンド事例を紹介しましたが、これは当社と連携している各メディアのオーナーにとっても純粋な機会増であり、海外の大手ブランドからの買い付けによる空き枠の有効活用というさらなるメリットを提供できるものです。これからも、日本の多様なDOOH広告枠をそれぞれの都市やロケーションの魅力とともに広く海外へアピールしていこうと思います。

※2 DSP:デマンド・サイド・プラットフォーム/デマンドサイド(広告主側=需要側)が使用する広告配信ツール。広告主による広告効果の最大化を支援する機能を担う。


 

“ヒト”基点のOOHは、国内でも進んでいる

「プログラマティックOOH」は、すでに国内での取り組みも加速しています。個々人の携帯端末に割り振られたMAID(モバイル広告ID)を活用した、オーディエンスターゲティング(※3)の事例を紹介します。

某大手ゲームメーカーから、“野球好き”な人へ広告を配信したいという依頼を受けました。そこで、ロケーションベースでMAIDを抽出することにより、ターゲットの行動パターンに基づいたDOOH配信を実現しました。

まず、野球好きな人々が多くいるであろうロケーションを検討。たとえばプロ野球のホーム球場には観戦層が集まるでしょうし、野球用品専門店にはプレーヤー層が通っていそうです。このような考え方で選ばれた各地点にジオフェンスと呼ばれる境界線を設定し、特定の期間中、エリア内に任意の回数以上現れたMAIDを抽出します。

そして、彼らの日常的な行動パターンをもとにスクリーンごとのターゲット含有率をスコア化、“野球好き”と定義されたターゲットが周辺に多くいるであろうスクリーン×時間帯で自動的に広告枠の買い付けが行われるという、まさにプログラマティックな取り組みでした。

LIVE BOARD
これはロケーションデータを活用した一例ですが、今では、クライアントや広告会社にて保有されている1stパーティデータや3rdパーティデータを活用した、さらなる“ヒト”基点でのDOOH配信も現実のものとなっています。

ここまでお伝えしたとおり、より柔軟かつ、よりデータドリブンな「プログラマティックOOH」は世界的な成長領域です。国内パートナーとともに手探りで始めた取り組みも、今や世界中のパートナーとの取り組みにまで広がりつつあります。

太古の昔の壁画が起源とされるOOHを再発明するようなものですから、トライアル・アンド・エラーの連続ですが、これからも従来の常識にとらわれないOOHのニューノーマルを創造していきます。

※3:オーディエンスターゲティング:オーディエンス(ユーザー)の属性や行動履歴情報などを組み合わせたデータをもとに広告を配信するターゲティング手法。


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