半径ワンクリック #02

栗田洋介×土屋泰洋:後編「俺の『いいね!』を『いいね!』するなよ!」

前回に続き、プランナーの土屋泰洋さんが、CBCNETを運営する栗田洋介さんに話を聞き、今インターネットで起きているカルチャーの断面図を描いていきます。

Timothy DeLaGhettoっていうYouTuberを8年くらい観てる(笑)

土屋:最近定期的にチェックしてるものってありますか?

栗田:結構前からなんですけど、 YouTuberにはまっていて。2008年頃にlonelygirl15(※1)という子が話題になったり。個人Youtuberたちはよく見ていますね。

土屋:lonleygirl15! ありましたね。仕掛けだったんですよね。

栗田:そうそう。あれはリアルタイムで見ていました。可愛い女の子が出てきて、みんなに悩みを相談したり人気者になるんだけど、全部演出だってことがバレて。その時YouTuberたちが怒って「僕たちのYouTubeを取り戻せ!」みたいなムーヴメントが起きたんですよ(笑)。Googleが買収したときも、みんながメッセージビデオをアップしたり。そういうムーブメントが誕生した空気感が面白かった。

土屋:気になるYouTuberがいるんですか?

栗田:たくさんいますが、Timothy DeLaGhetto(http://www.youtube.com/user/TimothyDeLaGhetto2)というYouTuberは、もう8年くらい追ってますね(笑)。自分でビデオブログや企画ビデオを頻繁にアップしていて、Youtubeで多くのファンができて、最近ではテレビにも出るようになりました。特にかっこいいとかではなくて、すごいアメリカという感じですが面白いキャラクターなんですよ。

土屋:今も継続してチェックしているんですか?

栗田:定期的に見てますね。彼は、チャンネル登録者が200万人を超えていて、世界中を飛び回ってたり、Yotubeセレブのような感じで、Youtubeドリームを手にしたひとりですね(笑)

土屋:200万人はかなりすごい数ですね!

栗田:そうなんです。フォロワーの数が日本と桁違いなんですよね。ビデオブログの内容は、人生の教訓とかユーザーからの恋バナ相談とかで、結構いいこと言ったりするんですよ。そんな感じでもう8年くらい観ていて、もうこの人の人生をずっと見ているような感じです。

最近は、日本人のYouTuberもたくさん出てきてますよね、瀬戸弘司さんとか好きですね。

土屋:ジェット☆ダイスケさんとか。

栗田:そうそう。テレビをあまり観なくなって、YouTubeを観る時間が増えました。そうするとアメリカや世界のトレンドに詳しくなるんですよ。例えば、MTVヴィデオ・ミュージック・アワードでマイリー・サイラスの踊りがすごい評判悪くて、オックスフォード辞書の2013年注目の言葉に「TWERK」って言葉が出てきて、そういう状況(※2)をリアルタイムで把握できる。

あとは、例えばMacの新しい機種が出ると、いろんな媒体が評価するじゃないですか。でも何十万人もフォロワーがいるYouTuberの3分の解説を観たほうが分かりやすい。ガジェット系だとSoldierKnowsBest(兵士が一番知っている) (http://www.youtube.com/user/SoldierKnowsBest)とか。そんな風にかなり質の良い情報があって、でも映像だから解説の内容はGoogleで検索してもひっかからなかったり、全編英語のものが多いので日本語版のYoutubeだとほとんど上がってこない。

土屋:面白いですね。彼らはこれで生計を立てているんですよね。

栗田:広告収入やスポンサーですね。あとは普通にテレビにも出ていたり。Youtubeは一人で始められるので、プロのミュージシャンや役者を目指してる人も多いと思います。クリエーティブに関して思うのは、彼らはスピード感があるんですよ。撮ってからアップするのに迷いがなくて速い。日本人は演出を考えちゃうけど、この人たちは素だからヘタな演出が要らない。あと日本との違いで思うのが、日本は匿名性のインターネットが普及しているので、YouTubeにビデオを残すのが怖いとか恥ずかしいって思う。Ustreamとかツイキャスみたいなリアルタイムのほうが安心、みたいな。

土屋:たしかに日本だと怖くて残さないかも。「おまえ、前はこう言ってたのに、今はこう言うのか」みたいな細かい矛盾とか激しくつっこまれそうだし。文化の違いなんですかね。

 

通貨のあり方は変わっていくんじゃないかなと思う

土屋:インターネットテクノロジーで、これからどんなことが変化していくと思いますか?

栗田:Bitcoinが大きな話題となり、去年のTechCrunchなどのテクノロジー関連のカンファレンスでもよく取り上げられていました。Facebookの訴訟でも有名なウィンクルヴォス兄弟も初期の段階で数億円単位でbitcoinに投資していたり、多くの投資家たちがBitcoinを買いだしていて、バブルのように価値が上がりました。

でも、Bitcoinは不安定な部分もあって。Tor(※3)というソフトでしかアクセスできないSilk Roadという匿名性がとても高いサイトで、違法な売買がBitcoinで行われていたという側面もあります。

Bitcoinの流通量は2100万Bitcoinで終わるように設計されていると言われています。政府が管理する通貨みたいに、必要だから発行するのではなく、流通量と稼働率で発行数が決まるというアルゴリズムがあるらしくて。実際に、何十億円何百億円っていう規模でBitcoinが流通することで何が変化していくのは見ておきたいですね。

土屋:僕は未だにBitcoinを身近に感じることがないんです。誰か持ってる人いますか?

栗田:実験的に自分は買ってみました。

土屋:あ、買ったんですか!

栗田:でも微々たるものです。まだ使ってはいなくて。ウォレット移動したり、仕組みだけはちょっと理解しました。0.1 Bitcoin位ですが、相場変動が激しいので価値になるとは思ってないです。

土屋:すごい!

栗田:日本でも、NHKが特集したり、Bitcoinが使えるカフェとかお店が増えてきたと聞きますね。これからもっと増えていくと思いますよ。それに手数料が安いのも特徴です。数億円単位の取引が実際に行われてるというのはすごいですよね。Bitcoinはマイニングと呼ばれる採掘方法などの仕組みを含めてSFの世界のようで。もちろんBitcoinが現在の通貨に取って代わることは無いでしょうけど、クラウドファンディングも徐々に浸透してきたこともあるので、今後は通貨のあり方や消費の仕方も変わっていくんじゃないかなと思います。

土屋:そこは気になるところですね。

栗田:実際Bitcoinの人気のある国は、アルゼンチンなど財政事情が厳しい国だと言われてます。銀行がいきなり破綻するかもしれないからBitcoinが使われている。日本人は多分、儲かりそうだからという理由で手に入れている人が多いと思いますけど、結構リアルに困ってる人たちの役に立っていて、そういう価値の変容がどんどん起こっています。

土屋:たしかにお金の価値が変わっていくのかも。

 

ユートピア感があると、つまんなくなると思うんですよ

栗田:最近思うんですけど、電車に乗ると、みんなスマホを見てるじゃないですか。ちょっと異様に感じませんか? 携帯依存症みたいなことは増えていて、ミーティング中とか食事中でも触ってしまったり、自分もそういうことがありますが、こういった行動が僕らのコミュニケーションにどう影響を与えていくのかは気になりますよね。

土屋:僕の友だちの子どもが2歳なんですけど、スマホのロックを解除して、アプリでおばあちゃんの写真をサーっと探して見せてくれるんですよ。そういうの、びっくりしますよね。

栗田:常に触っている状態になると、これからどういうことが起きるんだろうって思う。僕はこの前iPhoneの機種を変えてから、ほとんどアプリを入れなくなってしまいました。なんか新陳代謝モードに入ってるのかもしれない。

土屋:面白いですね。

栗田:Facebookやtwitterも使い始めてもう5年以上経つじゃないですか。友人の萩原(俊矢)君が「どうでもいいね!ボタン」(http://idpw.org/porto/w/000001/)というChrome拡張機能をつくって少し話題になったりしましたが、Facebookのアルゴリズムには違和感があって。なんか、友人の投稿が広告みたいな見え方するじゃないですか。それと、「いいね!」を増やすための、閲覧数と滞在時間を長くさせるというFacebookの作戦があらゆるところにあって。例えばInstagramでLikeすると、それが初期設定のままだとFacebookに通知されるんですね。それをさらに「いいね!」してくる人がいて、「俺の『いいね!』を『いいね!』するなよ!」みたいな(笑)。

土屋:「いいね!」の連鎖が起きるんですね。

栗田:そう。そういうのはなんですかね…。でもたまに、人の「いいね!」を「いいね!」したいときがあるじゃないですか。すごい絶妙な「いいね!」したな! みたいな。

土屋:ありますね、これに「いいね!」ってことは、そういう意味だよね、って。

栗田:そうそうそう(笑)。俺には分かるよっていう。ひとつの「いいね」という仕組みが浸透すると、当初は無かった違和感や不快感も出てくる。

土屋:確かに、すべてのステータスに「いいね!」が付けられるっていうのは、なんか違和感あるかも。

栗田:今のSNSって、さっきのタイムズスクエアみたいな、ユートピア感が漂ってると思って。ユートピア感があると、なんかつまんなくなると思うんですよ。「アプリを世界中の人に売れます」「いろんな消費者にリーチできます」「ここで全部できます」、逆に「これをやったらアカウント削除しますよ」みたいな、そういう作られたユートピア感をつまんないと感じる人たちがいて、そういう人たちが次のカルチャーを作っていくわけじゃないですか。そこを追っていたい。

土屋:ユートピアにアンチの人たちが、次のオルタナティブなカルチャーを作っていくという図式ですね。

栗田:自分はグラフィティとかスケートボードとかヒップホップとかパンクとか、そういうユートピアから外れているものに影響受けているのもあると思いますが、例えばスケートボードの醍醐味は、手すりを滑るトリックがあるように、普段歩いている街を新しい視点で捉えて、そこに新たな解釈を作っていくところだと思うんですよ。インターネットやアートでも、テクノロジーの本来の用途ではない間違った使い方から新しい表現が生まれてくることがあったり、やっぱりそういった視点で活動してる人が気になりますね。

土屋:インターネット自体が、ハッキングというか、仕組みをちょっとずつ良くしていく文化的な土壌がありますよね。ユートピアの裏をかいて「こうすると俺はもっと楽しい」みたいな主張をする人が出てきて、そっちが良ければ人はそっちに流れていくっていう。そういう土壌で、今後どんな文化が生まれていくのかとても気になります。

今回は面白いお話が沢山聞けました。ありがとうございました。

取材場所:グランドベース

 

(※1)lonelygirl15:インターネットムービー
lonelygirl15はYouTubeのユーザー名。2006年に実在するビデオブロガーとして登場し高い人気を得るが、一部のユーザーによりlonelygirl15がフィクションであると明かされ炎上。現在も番組は継続し、さまざまな動画共有サイトで新作が公開されている。

(※2)TWERK(トゥワーク):足を広げ腰を激しく振るダンス
ディズニー出身のアイドル、マイリー・サイラスが、2013年のMTVビデオ・ミュージック・アワードでTWERKをした瞬間、ツイッターのつぶやき数が急上昇し「アイドルなのに下品だ」と炎上。その後New York Times、Guardian、Washington Postなども騒動を報道、2013年の検索ワードトップに上がり、「TWERK」はオックスフォード辞書に追加された。

(※3)Tor:米海軍調査研究所が開発した通信システムをベースに、オープンソースで作られた匿名通信システム。

プロフィール

  • Profile kurita
    栗田 洋介

    GRANDBASE Inc.代表。ウェブデザイン、グラフィックデザイン、CI/VI計画などのデザイン制作全般を中心にデザインポータルサイト「CBCNET」やデザインカンファレンス「APMT」の企画・運営を行なう。またそうした活動から、デザインプロ ジェクトのディレクションやアーティストのコーディネーションなども広く手がけている。

    http://www.cbc-net.com/

    http://www.grandbase.jp/



    Yosuke Kurita

    Born in 1981. Started a multidisciplinary design studio "GRANDBASE INC." in 2005.
    Works in wide range, from web design, graphic, to CI/VI planning. Also produce a Japanese design portal web “CBCNET”, design conference “APMT”. With these projects we collaborate with designers and artist from around the world.

    http://www.cbc-net.com/

    http://www.grandbase.jp/

  • Portrait
    土屋 泰洋
    株式会社電通 CDC

    1981年神奈川県生まれ。広告制作プロダクション勤務を経て、2006年より電通 関西支社、2012年より本社コミュニケーション・デザイン・センター 次世代コミュニケーション開発部に所属。新規事業開発やデジタル技術を利用した広告企画に従事。東京インタラクティブアドアワード金賞、スパイクスアジアシルバー、Yahooインターネットクリエイティブアワード特別賞など受賞歴多数。

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