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インクルーシブなDXを。「越境」が生み出す新たな価値No.1

デマンド、サプライ、エンジニアリングをつくるDX。電通グループと富士通が異分野の強みを生かし実現へ

2022/11/17

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生活者と企業をデータでつなぐDXが、いま次のステージに進もうとしている。多様化・複雑化し続ける生活者の消費動向を正確につかみ、商品の開発や生産に生かすことができれば、「売れるモノを、売れる時に、売れる場所で、売れるだけ作る」ことが可能になる。余剰商品を減らせば、企業活動の最適化と社会課題の解決を同時に実現できる。

グループ企業にエンジニアリングチェーンに強みを持つ電通国際情報サービス(ISID)を持ち、マーケティングを中心としてデマンドチェーンのDXを進めてきた電通グループと、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンのDXを進めてきた富士通が手を組み、理想の実現に乗り出した。両者のキーパーソンがプロジェクトの意義を語る。

※このコンテンツは日経ビジネス電子版SPECIALからの転載です。https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/ONB/22/dentsu0826/

 

生活者と企業の双方に変革。企業活動のジレンマを一掃

「生活者と企業の双方に変革が起きている」と、富士通の水光氏はいう。生活者にスマートフォンが普及し、接触する情報量が増えた。その結果、消費行動が多様化・複雑化し、変化のスピードも加速している。

企業側も、利益だけを追求すればよい時代は終わった。サステナビリティやSDGsといった社会課題への対応が求められている。その実現は、勘と経験に頼る従来型の経営では不可能だ。「消費者の変化に機敏に、かつ柔軟に対応できるデジタルトランスフォーメーション(DX)が必要です」(水光氏)。

富士通 水光淳氏
「そのためには、業務や組織ごとにシステムが分断されている今の状況を変える必要がある」と、電通の渡邉氏は述べる。「企業活動全体をデータでつなぎ、協働しなければ、企業は本来のポテンシャルを発揮できません」(渡邉氏)。電通グループと富士通が手を組む最大の目的は、生活者と企業を分断してきたジレンマを一掃することだ。

需要と供給をデータで統合。経済活動の無駄をなくす

電通グループと富士通は、3つのバリューチェーンをDXで統合しようとしている。価値の源泉を生み出し、技術リソースを提供する「エンジニアリングチェーン」。最適なリソースで価値を実現する「サプライチェーン」。ニーズ発掘・需要喚起により価値を最大化する「デマンドチェーン」。この3つをつなぐDXは、需要と供給をつなぐ画期的な試みであり、経済活動全体の最適化につながる挑戦だ。国内外にも、ほとんど例がない。

売れる商品を売れる分だけ市場に流し、余剰商品を減らすことで、企業は無駄のないビジネスが可能になり、売り上げ向上とコスト削減を同時に達成できる。もし余剰在庫が出そうなら、そのデータをデマンドチェーン連携し、エリアやメディアを絞り込んだ機動的なマーケティング施策によって需要を喚起し、売り切るようなことも可能になる。

食品ロスに代表されるように、余剰商品は資源を無駄遣いするだけでなく、回収にかかるコストや焼却処理で発生する温暖化ガスなど、二重三重の課題を生む。逆に、需要に対して商品の供給が追いつかなければビジネス機会の損失となり、顧客の利便性や満足度を低下させる。あらゆる場面で無駄を減らすことができれば、経済活動全体、ひいては社会全体の最適化につながるのだ。

需要予測から需給双方の最適化へ。2社の強みを生かす挑戦

「まずは需要予測を起点に、商品の需給バランスを最適化するサービスから始めます」(渡邉氏)。

電通が保有するデマンドチェーンの膨大なデータを活用し、類似商品や競合の過去の広告出稿データや最新の需要動向を把握する。そのデータをインプットすることで、より精度の高い需要予測を行いサプライチェーン側で生産計画を策定する。一方、デマンドチェーン側では在庫情報など今まで組織の分断で連携が難しかった情報も加味して、マーケティング施策の最適化/チューニングを行う。効率的な運用により、クライアントの営業利益の最大化を目論む。

「サプライ側とデマンド側をデータでつなぐこと自体が新しい取り組みなので、それだけでも効果は出ます」(渡邉氏)。

電通 渡邉典文氏 
水光氏は、「富士通の強みは大きく2つある」という。1つは、多種多様な業界のサプライチェーンを支援してきたノウハウだ。もう1つはテクノロジーである。「当社自身が製造メーカーである点も大きいです。生産や在庫管理など、最適化に関する技術を磨いてきました」(水光氏)。

電通グループの強みにも、3つの側面があると渡邉氏はいう。「1つはマーケティング領域のデータとノウハウ。2つ目は業界のネットワーク、そして3つ目はISID社がグループ内にいるということです」(渡邉氏)。電通は消費者と市場に関するビッグデータを持ち、放送を中心とするマスメディアからインターネット・プラットフォーマー、そして6000社を超えるクライアントとのネットワークがある。そして、エンジニアリングチェーンに強みを持ち、クライアントのDX推進を支援するISIDがグループ内にいることで、エンジニアリングチェーンにおける富士通との協業が可能になっている。

「両社の強みを生かし、『3つのバリューチェーンをつなぐ』という前人未到の取り組みに挑戦します」(渡邉氏)

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3つのチェーンにおける、ISIDを含む電通グループと富士通の強み。両者が協力することで全サイクルがデータでつながり、効果的なDXが可能になる。

企業と消費者をつなごうとしている電通グループ。「Fujitsu Uvance」※を新たな企業ブランドとして、サステナブルな世界を目指す富士通。両者の協業は、企業の未来に新たな希望をもたらす挑戦となろう。

※富士通の新事業ブランド。「多様な価値を信頼でつなぎ、変化に適応するしなやかさをもたらすことで、誰もが夢に向かって前進できるサステナブルな世界をつくる」という目標を掲げている。
 
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