ネットがもたらす新しい価値 #03

【古田秘馬×馬郡健 対談】SNSは人とのつながりを変えたのか?前編

  • Himafuruta02
    古田 秘馬
    株式会社umari プロジェクト・デザイナー
  •   pcpr
    馬郡 健
    株式会社電通 デジタル・ビジネス局

【前編】情報よりも体験に価値がある

さて、今回と次回にわたっては、Facebookの「いいね!JAPANプロジェクト」にて私がご一緒している、株式会社umari代表の古田秘馬さんを迎えた対談をお届けします。古田さんは「いいね!JAPANプロジェクト」以外にも、「丸の内朝大学」などさまざまな企画のプロデュースを手がけ、特に地域活性化の取り組みで知られています。ちなみに対談は、農家の生産者さんが来店客の前でお話しする“農家ライブ”が楽しい、古田さんが運営するレストラン「六本木農園」で行いました。

 

SNSがコミュニティーを生み出すわけじゃない

馬郡:この連載は「ネットがもたらす新しい価値」をテーマにしていますが、古田さんが手がけられているさまざまな企画では、特にSNSをうまく活用されていますよね。今回は、そのあたりの意図をうかがいながら、コミュニティー内やコミュニティー間のつながりにデジタルがどう働いているのかを一緒に考えてみたいと思っています。

そもそも「いいね!JAPANプロジェクト」を一緒に企画することになったのは、私がFacebookの担当になり、これが地域からの情報発信ツールとして有効だろうと思ったことから、地域関係のプロジェクトを多く企画されていた古田さんを紹介してもらったんですよね。

古田:僕らは元々自分たちのプロジェクト管理にFacebookを使っていましたし、地域のソーシャルプロジェクトでもすごく有効だと思っていました。Facebookがあれば、せっかくその土地を訪れた人とそれっきりにならず、つながり続けていられるので。

でも、Facebookはあくまでコミュニケーションを補完するツールで、ツールからコミュニティーが生まれるわけではありません。リアルなコミュニティーがあってこそ、生かせるツールだと思っています。

 

 

馬郡:Facebookがあると、コミュニティーをゼロからつくれそうな気がしてしまいますが、そうじゃないんですね。

古田:逆にリアルな関係がないと、興味を持てないと思うんですよね。行ったことのない飲食店に「いいね」を押して情報が出るようになっても、またクーポンが来た、くらいにしか感じませんし。

100万件の「いいね」を獲得しているバーチャルなコミュニティーがひとつあるより、10人のリアルなプロジェクトが何万件も動いている方がおもしろい。SNSって情報の拡散が注目されがちですが、Facebookでは拡散よりもむしろ、ある程度区切られた中に投稿できることに価値が出てきているような気がします。

馬郡:リアルに出会う場所が発端になっているから、コミュニケーションの密度も濃くなるんですね。

古田:そうですね。オンラインのコミュニティーとリアルのコミュニティーがレイヤー構造になっていて、それがプロジェクトの数だけあるイメージです。その2つのレイヤーの間にも、Webサイトや派生企画なんかのレイヤーがある。

SNSというレイヤーがあることの利点は、人と人との共通項が見えるのと同じように、プロジェクト同士の共通項も見えてくるところです。今まで気付かなかった可能性が顕在化する。だから連携もしやすくて、気付くといくつもの新しいつながりが生まれているんです。

オンラインに広がった「居場所」と「出番」

馬郡:プロジェクト同士の共通項が見えてくると、事例のシェアもしやすいですね。それぞれの場でリーダーシップをとっている人がちゃんと輝いて、ネットワークの中で皆がつながっていい循環が生まれる。

「いいね!JAPANプロジェクト」も、そんなふうになっていました。データベースとしても、例えば企業や官公庁が、何らかの地域プロジェクトと組みたいというときに役立っていますし。

古田:それぞれの地域でリアルな活動をしている人が脚光を浴びる場をつくれたことは、ひとつ大きな成果だったと思います。

コミュニティー形成で僕らがよく言うのは、「居場所」と「出番」が大事だということです。「いいね!JAPANプロジェクト」では、自分が認められる居場所がオンラインにもでき、プロジェクトのサイトを通して知った一般の人たちも共感してくれて、場が広がった。そこに自分にしかできない役割、つまり出番が果たされていました。

まだ発展途上のプロジェクトも取り上げて、プロセスを含めて“見える化”したので、関与できる余地がたくさんあったのも良かったんでしょうね。

馬郡:そうですね。Facebookで「いいね!」を押すだけでなく、そこでやりとりをしたり、実際に行ってみたり、という関わりが多く見られました。

古田:逆説的ですが、ネットが当たり前になったことで、体験することがすごく重要になっています。情報はネットで何でもシェアできるようになったので、情報自体にはあまり価値がない。それを体験できる“場”を用意することが、コミュニティーの充実や、コミュニケーションの濃さにつながると思います。

馬郡:確かに、インフォメーションをただFacebookに投稿してもあまり拡散しませんが、体験したことに対してだとけっこうコメントがついたりします。

体験価値をしっかりつくって、心を揺り動かすと投稿の内容も変わってくる。そうすると、その投稿からまた広がっていきますね。

古田:インフォメーションより、コミュニケーション。さらにもうちょっと深めてリレーションを築けると、今度はソリューションが生まれます。情報発信ばかりに目がいきがちですが、そんなイメージで向き合うと、SNSの良さを生かして継続的なコミュニティーをつくれるんじゃないかと思います。

 

後編は3月25日に更新予定です。

プロフィール

  • Himafuruta02
    古田 秘馬
    株式会社umari プロジェクト・デザイナー

    プロジェクト・デザイナー。東京都生まれ。東京・丸の内「丸の内朝大学」などの数多くの地域プロデュース・企業ブランディング・コミュニティーデザインなどを手がける。農業実験レストラン「六本木農園」や、日本の神話を伝えるニッポン西遊記、在日外国人コミュニティーで日本を世界に伝えるJLICなどプロジェクト、食で世界を繋ぐPeace Kitchenプロジェクトなどを展開。日本中の美味しいものを探して1 年の半分は旅をしている。株式会社umari代表。

  •   pcpr
    馬郡 健
    株式会社電通 デジタル・ビジネス局

    YouTubeなどを活用したソーシャルメディアプロモーションやARや画像認識技術を使った企画開発を手がける。その後、Facebook社との提携に参画し、公認ナビゲーションサイトFacebook naviやソーシャルを活用した地域活性プログラム「いいね!JAPANプロジェクト」を立ち上げる。また、母校である慶應義塾大学の體育會水泳部競泳部門監督も務める。

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