ソーシャルデザインの時代を生きる #07

可能性に目を向ける社会に

  • 29
    福井 崇人
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

ソーシャルデザイン最新国ロンドンの可能性を中心に紹介してきましたが、一方で私は、今回の視察を通じて、日本人の可能性について改めて実感し、たくさんの勇気をもらってきました。カンヌでは世界の人たちから「日本人はクールだ」と繰り返し言われてきましたし、実際、世界のレベルで通用する、才能あふれる日本人は沢山いると思います。カンヌライオンズでも、日本人のプレゼンテーションが世界の人たちから拍手喝采で迎えられるシーンを何度も目にしました。

もともと日本には、江戸時代から「三方よし」という哲学があり、世のため人のために助け合って生きるという精神性が大切にされてきました。世界で活躍しているスポーツ選手も、プレイばかりではなくその精神性が評価されています。東日本大震災の時にも、暴動も起こさず互いを思いやる日本人の姿に、世界の人たちは感銘を受けたといいます。日本人は、世界に評価されるソーシャル性を昔から持っているのです。

現在の日本社会は、そういったソーシャルな素養を十分に活用しきれていないのではないかと、私は考えます。偏差値偏重型の教育や社会的重圧の強い社会は個性を狭めてしまいがちです。それは、非常にもったいないことです。

世界のトップクリエーターと出会って感じる共通点は、彼らの持つ人間力の大きさです。本人に特別な自覚がなくとも、ごく当たり前のように、社会のことを考えている。そんな懐の深さを感じるのです。書籍『希望をつくる仕事 ソーシャルデザイン』でインタビューさせていただいた漫画家の井上雄彦さんも、まさにそういった生き方を体現している方でした。

ソーシャルデザインは、自分にないものを無理して求めることではなく、自分を見つめ、生き方を追究することから、自然と生まれてくるものです。日本では採用の際に即戦力や技術を評価する傾向が強いですが、「社会に対してどのような関心を持っているか」といったヒューマンな視点から人の可能性を評価することが、企業の本質的な価値を高めることにも結びつくのかもしれません。

今年のカンヌライオンズ受賞作のほとんどがソーシャルをテーマにしたものでした。世界ではソーシャルがビジネスの牽引力となっていることは間違いありません。今後世界は益々、ソーシャルの方向にシフトしていくでしょう。だからこそ、今はチャンスの時だと私は考えます。世界で活躍する人たちと出会い、ソーシャルデザインは、希望をつくる仕事であると、改めて感じました。ロンドン、そしてカンヌで受けた刺激を胸に、日本の社会からソーシャルデザインが生まれるしくみづくりに取り組んでいきたいと思います。

プロフィール

  • 29
    福井 崇人
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    1991年入社。電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表。NPO 2025 PROJECTの代表理事。クリエイティブディレクター/アートディレクター。カンヌ、NYADC、ADCなど数々受賞。金沢美術工芸大学、熊本大学、上智大学、宮城大学非常勤講師。書籍のプロデュースに 『たりないピース』(小学館)、『Love Peace & Green たりないピース2』(小学館)、『エコトバ』(小学館)、『世界を変える仕事44』(ディスカバー21)、『この子を救うのは、わたしかもしれない』(小学館)、『希望をつくる仕事ソーシャルデザイン』(宣伝会議)。

バックナンバー

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ