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セカイメガネNo.22

台湾、市民意識に目覚める

2014/03/19

まるで過去数年の眠りから覚めたようだ。台湾ではこのところ市民意識に関する話題で持ちきりだ。熱心な論争が起こり、一般の人たちが参加し、メディアや法律にも影響を与えている。
 
食品を例に取ってみよう。これまで台湾の人々は、食品といえば味にしか関心がなかった。今では、その食品にどれだけ添加物が含まれているかに着目している。天然酵母使用で人気のあったベーカリーが、人工香料を使っていることを暴露された。以来、顧客の足はこの店からすっかり遠のいた。行列のできていたレモンティー持ち帰り店が、一杯の紅茶に14個の角砂糖を使っていることが発覚した。それを知った人たちは、もう二度と買わない。
 
インターネットでライブ実験映像を公開する生活者が現れた。溶けないアイスクリーム。カビの生えないパン。卵を使っていないタマゴプリン。果汁ゼロのフルーツジュース。肉と無縁のミートソース。食品添加物の使用自体は違法ではないが、生活者はだまされたと受け止める。ブランドへの信頼がすっかり傷ついてしまった。
 
台湾第4の原子力発電所建設も近頃議論が多い。映画監督たちが組織した「人間として私は原子力に反対」運動は大勢の俳優、歌手から支持されている。代替エネルギーによる解決手段が今すぐあるわけではない。けれども、安全性に対する人々の懸念は止められない勢いだ。
 
市民がどんな話題に注目しているかは、台湾製作の映画ラインアップを見れば分かる。ドキュメンタリー作品がこれほど幅広い層から支持されたことはかつてなかった。環境保護を訴える「台湾が見える」、捨てられた犬たちの生と死を描いた「十二夜」、ある小さな町が台風被害から復興していく記録「明日に架ける橋」、難治性疾患の子を持つ親たち6人のバンドを追った「ロックで月まで連れてって」。そうした作品が興行記録を次々と塗り替えた。
 
台湾の人々が市民意識に目覚めたことに加え、インターネットとソーシャルメディアの役割、影響が大きい。大企業はもはや社会的責任を逃れるわけにはいかない。企業ブランドにとって、「真に誠実であること」が最良の広告だ。生活者の健康、幸福にきちんと貢献できる企業だけが、人々の気持ちをつかまえ、コミュニティーから支持を得られるのだ。
 
(監修:電通イージス・ネットワーク事業局)