ソーシャルデザインの時代を生きる #05

ソーシャルデザインは当たり前のことだった

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    福井 崇人
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

ロンドンで受けた衝撃は、ソーシャルがビジネスやアカデミー、生活といったあらゆる領域において当たり前のこととして受けとめられているということでした。一体、その背景にあるものは何なのか。街を歩き、多く人たちと言葉を交わしながら感じたことがあります。

ひとつは、関係性が非常にフラットであるということです。ビジネスに置いても上司や部下という肩書きや経歴に関わらず、誰でもアイデアを出し、良いものであれば積極的に取り入れられるという雰囲気があります。相手が誰であっても、良いものであれば素晴らしいと賞賛するのです。褒められることで、モチベーションが高まり、益々いいアイデアが生まれてくる。クライアントへのプレゼンテーションや意思決定の際にも、こういった姿勢が重宝されているのだと伺いました。

それから、人と人の結びつきが生まれやすい社会であるということ。実際に私も驚いたのですが、初対面であるにも関わらず、次から次へと「この人に会うといいよ」とその場でアポを入れてくれるのです。彼らは、一個人として人を見て、つながりあっているのだなと感じました。この気さくでフランクな雰囲気の中で、豊かな創造性が育まれるのでしょう。

そして、何より、彼らは自分がどう生きて生きたいのかということを常に真剣に考えて生きているのだということをとても強く感じました。イギリス人は議論好きだと言われますが、仕事を定時に切り上げ、ビールを飲みながら、議論を愉しんでいる姿を、街の至る所で見つけました。自分にとって幸せは何か、社会についてどう考えているか、そういったことを常に意識しているからこそ、ソーシャルという発想が当たり前に染みついているのでしょう。
日本では「ソーシャル」という言葉は「意識の高い人たちのすること」と捉えられる側面がありますが、ロンドンではそれがごく当たり前のことであり、むしろ、彼らの方が僕ら日本人よりも等身大で生きているという印象を受けました。書籍『希望をつくる仕事 ソーシャルデザイン』でも、働き方や人とのつながり方が変わってくると書きましたが、ロンドンで出会った人たちはまさに、ソーシャルデザインが人生そのものとなっていました。

これらが成立する背景として、ロンドンは非常に多くの民族を抱えたコスモポリタン都市であることが大きいと思います。言葉も文化も違う人たちとの共存を図る必要があるからこそ、パブリックやソーシャルへの意識が自然に高まっていくのでしょう。それに、ヨーロッパの多くの国は人口数千万規模の国家ですから、はじめから、自分たちの外側を意識した市場展開の思考を持っています。このことが、ものごとを深く考える視点を育てることに結びついているのかもしれません。

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ロンドンの市内にあちこちあるレンタルバイク

プロフィール

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    福井 崇人
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    1991年入社。電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表。NPO 2025 PROJECTの代表理事。クリエイティブディレクター/アートディレクター。カンヌ、NYADC、ADCなど数々受賞。金沢美術工芸大学、熊本大学、上智大学、宮城大学非常勤講師。書籍のプロデュースに 『たりないピース』(小学館)、『Love Peace & Green たりないピース2』(小学館)、『エコトバ』(小学館)、『世界を変える仕事44』(ディスカバー21)、『この子を救うのは、わたしかもしれない』(小学館)、『希望をつくる仕事ソーシャルデザイン』(宣伝会議)。

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