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「地方発のクールジャパンを世界に発信」第2回

FROGMAN氏

2014/03/17

東京から移り住んだ島根からAdobe Flashで作った「菅井君と家族石」を配信し、大きな注目を浴びたFROGMAN氏。そして、「秘密結社 鷹の爪」で大ブレーク。地方発のクリエーティブ、自身の作品や発想法などについて語っていただきました。


第2回
「クールジャパン」が本格的に起動するのはこれからだ

 
地方発の映像製作・発信の事例はいくつもありますが、例えばアニメの「Peeping Life(ピーピングライフ)」。作者の森りょういちさんは福岡に生まれ、福岡の大学を出て、いまも福岡在住です。福岡にはモーショングラフィックス、アニメ、CG製作を行うクリエーティブ・スタジオ「KOO-KI」(空気株式会社)もあります。福岡も大都市ですが、ほぼ東京の一極集中だった時代に比べると、クリエーターが地方に広がる動きは顕著です。
 
こうした動きが、もっともっと広がってほしいと僕は思います。地方に生まれた若者が、自分の育った場所で、コストをかけずに製作した映像が、中央か地方かという枠を飛び越えて、世界まで配信できる環境が整っている。僕らの時代は、夢を抱えて上京したものの、東京での生活はカツカツで、才能があるにもかかわらず、生活できなくなって諦めてしまう。そんな人をたくさん見てきました。地方から配信できれば、若い才能を惜しい形でつぶしてしまうことも少なくなると思います。
 
よく「クールジャパン」といいますが、本格的に始動するのはこれからでしょう。海外からのお客さんが、東京を目指すのではなく、直接地方を目指すようになってほしい。実は以前、「秘密結社 鷹の爪」(「鷹の爪」)がフランスのケーブルテレビで放送されていた時期があります。すると翌年、島根県の方の話では「フランス人の観光客が6倍に増えた」と。直接の因果関係は定かではありませんが、フランスから島根って相当にアクセスしづらいはずなのに、実際に増えたのですから、何かあったのは間違いない。
 

地方からクールジャパンをどんどん発信していけば、東京を経由して、全国に海外からの観光客を呼び込めるかもしれないし、可能性は高いと僕は思います。海外の人にしてみれば、東京のスタジオでつくろうが島根でつくろうが、どっちも「メード・イン・ジャパン」。島根でつくっているアニメだから見ない。そんな外国人はいませんよね。「この映像は面白い。スタジオがあるシマネというのはどんなところなんだろう」。そう思ってもらうことがクールジャパンを深化させる第一歩だと思います。
 
地方で製作するメリットは、そこに住まないと分からない空気感でしょうか。パブリックイメージの裏には、その地域でしか感じられないものがたくさんあります。画一的な都市計画のおかげで、全国どこでもそれほど差異がなくなったといわれますが、ハードの面では確かにそうでも、暮らし、風俗、文化など、ソフト面では地域ごとの差は歴然です。「ゆるキャラ」が象徴的で、今求められているのは、きれいにパッケージングされたものではなく、多少雑多でもローカル色がぷんぷん感じられるもの。そういう時代です。

 

 

東京と地方。それぞれのメリットを合わせた創造活動へ


地方だからこその難しさもあります。製作は東京でも地方でも同じようにできますが、ビジネスに乗せようとするとき、いわゆるマネタイズできるプロデューサーが地方にはいないし、ある程度、東京で経験を積んだ人でないと難しいかもしれません。
 
僕自身、島根で映像をつくり、DVD化するまではできましたが、そこから先を考えると、やはり一人では限界があります。そこで映像製作・プロデュース会社のDLEとジョイントすることにしましたが、地方で、一人でやり続けると意固地になっていたら、DVDが少し売れた程度で終わったかもしれない。
 
ライセンス先が東京に集中し、出版でも放送でもそうですが、スポンサーも東京など大都市に集中しているので、地方でプロデュースするというのもやっぱり限界はあるなと思います。地方のクリエーターと中央のプロデューサーが、二人三脚で信頼関係をつくってマネジメントする。そういう取り組みが今以上に必要になると思います。
 
クリエーターは常にいろんな情報を仕入れていくというか、感性を磨く作業も必要です。ちょっと前の、僕が島根にいたころに比べると、情報も地方に伝わりやすくなっていますが、街を歩いて得られる空気感、人との会話で得られる刺激には、東京と地方ではまだまだ差があります。地方を拠点にするとしても、クリエーターは感性磨きのために東京に出かけ、いろんな場所に行き、人と接する機会を持った方がいい。それがモチベーション維持にもつながると思います。
 
一方、地方は東京のようにごちゃごちゃしていないので、思考がクリアになるという面はありますね。島根で暮らしているとき、あまりにも暇なので、自分探しではないですが、腰を落ち着けて物事を考える時間だけはたっぷりあり、あれは本当によかった。
 
両方必要なのですが、クリエーターのものづくりという面でも東京は飽和状態。今後、面白いことは地方から生まれていくと思います。

第3回へ続く)