ソーシャルデザインの時代を生きる #03

社会のためにデザインする

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    福井 崇人
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

社会は今、これまでに増して、ダイナミックに変化しています。ソーシャルメディアが生まれるまでは、人びとがこんなに簡単につながり、関係性がフラットになるということは想像できないことでした。豊かさや幸せの定義も多様化してきています。

そういった中、私たち自身も、「社会を良くするために何ができるのか」ということを、自らに問い直す必要があるのだろうと感じています。

私はデザイナー・アートディレクター・クリエーティブディレクターとして仕事をしていますが、過去に関わったソーシャルプロジェクトの中で、デザイナーとしての自分の役割を捉え直すきっかけとなった出来事がありました。それまではひとつの作品の中でデザインを完結させることをミッションと考えてきましたが、「世の中をこうしたい(この場合は、世界の貧しい子どもたちを救いたい)」という大きな課題に対しより良い結果を導き出すために、自分のデザインを手放すことを決断したのです。

それは「デザイナーとして、自分ひとりでポスターをデザインする」という発想から、「多くの人たちが関わることでポスターが完成する仕組みをデザインする」という発想への切り換えでした。デザイナーとしてはとても勇気のいる決断でしたが、「何とかして課題を解決したい」という強い想いを持っていた自分にとって、結果としてより多くの人たちを巻き込み、多くの支援を得ることにつながったことは、本当に嬉しいことでした。このことは「課題の解決のためにデザインができることとは何か」という、俯瞰的なものの見方・動き方を身につける、大きな契機となりました。

ソーシャルデザインは、ひとりだけでは完結しません。多くの人たちを巻き込み、成果に結びつけていくことが大切です。その意味で、「プロデュース」という視点を持つことがとても重要なのだと思っています。そこで必要となるのが、「人を結びつけていくこと」です。人びとがフラットに結びつき、想いを共有し、信頼関係を構築していく中に、ソーシャルデザインは生まれてきます。自分ひとりでできることは限られていますから、できないことがあることを知り、いろいろなスキルや個性を持った人たちとつながり合っていくことが、課題解決の大きな力となっていくでしょう。

予測できない未来を前に、私たちは「人間がどのように生きていけばいいのか」という根源的な問いに向き合い続けることが必要なのかもしれません。それは、人生につながる深い話でもあり、可能性を秘めた、希望の持てることだと思っています。

書籍『希望をつくる仕事ソーシャルデザイン』を手にした方が、そういったメッセージを感じ取っていただけたら、嬉しく思います。

プロフィール

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    福井 崇人
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    1991年入社。電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表。NPO 2025 PROJECTの代表理事。クリエイティブディレクター/アートディレクター。カンヌ、NYADC、ADCなど数々受賞。金沢美術工芸大学、熊本大学、上智大学、宮城大学非常勤講師。書籍のプロデュースに 『たりないピース』(小学館)、『Love Peace & Green たりないピース2』(小学館)、『エコトバ』(小学館)、『世界を変える仕事44』(ディスカバー21)、『この子を救うのは、わたしかもしれない』(小学館)、『希望をつくる仕事ソーシャルデザイン』(宣伝会議)。

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