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「地方発のクールジャパンを世界に発信」第4回

FROGMAN氏

2014/03/20

東京から移り住んだ島根からAdobe Flashで作った「菅井君と家族石」を配信し、大きな注目を浴びたFROGMAN氏。そして、「秘密結社 鷹の爪」で大ブレーク。地方発のクリエーティブ、自身の作品や発想法などについて語っていただきました。

 

第4回
読後感から考える、逆算の発想でストーリーに落とし込む

 
よく「FROGMAN流の発想法は?」と聞かれることがありますが、正直、人様に聞かせるような特別なものはありません。自分で決めているのは、まずネタ帳をつくらないこと。一時期、ネタ帳を書いていた時期もありましたが、忘れっぽいのか、後で見返しても、これってどういうつもりで書いたんだろうと、自分で分からなくなってしまう。それが大きな理由の一つです。ネタ帳に書いた時点で、安心してしまうのかもしれません。
 
それよりも、例えば「野球」、そして「雨」というテーマがあり、この二つを合わせて何か面白いものをつくりなさいといわれたとき、パッとアイデアがひらめくような瞬発力を鍛えた方がいいと思っています。芸人が、ものでボケる一発芸のような感覚です。そもそも、どんなお題が舞い込むか分からないので、ネタ帳をつくっても意味がない、というのもありますね。
 
発想法といえるか分かりませんが、何か考えるとき、逆算で発想するようにはしています。映画なら、本編が終わった後のエンドロールで、「お客さんにどんな気持ちになってほしいのか」から考える。何か釈然としないものが残り、この矛盾だらけの社会に対して怒りを覚えるような気分で帰ってほしいのか。面白かった、痛快だった、こんなヤツらと仲間になりたいなと思って帰ってもらうのか。キュンと甘酸っぱい気持ちで、こんな恋したいという気持ちで帰ってもらうのか。どんな“読後感”を持ってもらうか、というところから考え始めます。
 
ヒーローが主人公の作品で、悪いヤツらにも最後は救いがあって、めでたしめでたしの大団円。例えばそんな印象を持ってもらうとしたら、具体的にどんなオチがあるかを考え、そこに至るために、どういうハードルがあるのかを設定しながら、逆算してつくっていきます。ハタチ前後の人たちに、この商品に対して「かっこいい」というイメージを持ってもらうには、ハタチ前後の人たちがかっこいいと思うものは何かを最初に考える。そして、「秘密結社 鷹の爪(「鷹の爪」)」ならこんなこと、あんなことができると、ストーリーに落としていきます。
 
逆算して考えた方が、アイデアをまとめやすいと思います。頭から考えていくと、どうしても後で行き詰まってしまうことが多いでしょう。物語にしてもそうで、人間は感情的に必ず合理性というのを求めていくので、合理性がなくなると、ある人はシラけたり、ある人はこんなことはあり得ないよと怒ったりする。だから、逆算してさかのぼる方が物語はつくりやすいし、伏線も張りやすいんですね。


 

物語の創造に大きな影響を与えている、山本周五郎作品

 

表現のオリジナリティーにはこだわりますが、基本的なストーリーのオリジナリティーには、さほどこだわらない方かもしれません。というのも、シェークスピアの時代、もっと言えば縄文の時代から、人間の感情そのものは変わっていないと思うから。いつの時代でもどんな世界でも、彼女と別れたら悲しいし、親子が再会したらうれしい。そういう感情は普遍的なもので、かっこいい。若干のディテールの違いはあったとしても、そのかっこいいという気持ちに至るまでのプロセスって、あまり変わらないと思います。
 
映画の世界に入って最初に渡されたのが山本周五郎さんの本でした。「おまえ、山本周五郎作品を読んでないなんてあり得ないぞ」と。「ここには人間の感情の機微というものが全部詰まっているんだから、とにかく読め」と言われて読まされたんですね。それがすごくよかったと思います。古くさいところもあるけれど、こうすると人間は泣くんだな。こうするとうれしいと思うんだな。人間の感情のひな型みたいなものが全部、山本周五郎さんの小説には詰まっている。学ぶところが多かったと思います。
 
そういう意識で映画を見ると、「これは山本周五郎作品でいうところの、こういう方程式の話だな」とか、必ずどこかに収まるんですね。「鷹の爪」はコメディーですが、ショートのくせにストーリーがあり、泣けるところは泣けちゃうという評価は、山本作品からの影響が大きい。こんなことを言うと、周五郎さんファンから怒られそうですけど。
 
今後に関しては、個人的にはずっと「小説を書きたい」と思っています。小説は究極の“ローカロリーコンテンツ”で、文字だけで成立する世界に興味がありますね。もちろんその先に、自分で書いた小説を基に、自分で映像化するという夢を持っています。(完)