スポリューション #03

スポーツ×ウェアラブル 

ウェアラブルで生活が変わる・・・

ブレークの鍵は?!(後篇)

  • Noguchi
    野口 嘉一
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター プランニング・ディレクター
スポーツコンテンツをメディア枠と捉えるだけではなく、ソリューションとしても捉えることで、新しいビジネスチャンスを生み出す ことにトライしているソリューションユニット「SPOLUTION(スポリューション)」チーム。そのチームメンバーたちが、それぞれの視点から、これか らのスポーツ関連のビジネスチャンスについて、リレーコラム形式でご紹介します。

「スポリューション」チームの野口と申します。前回に引き続き、【スポーツ×ウェアラブル】の話をします。

<今回のコンテンツ>

(4)あくまで「例えば」ですけど

(5)【スポーツ×ウェアラブル】の可能性

(4)あくまで「例えば」ですけど

ユーザーにとって、生活の中でその商品/サービスを使う「意味」がなければ需要はありません。

使う「意味」が分かりやすくなければ需要は広がりません。

だから、ブレークの鍵は、その「意味」をわかりやすくするようにUXをデザインして話題化をすることです。

前章でそんなことを書きました。ではその、「UXデザイン&話題化」のやり方を、仮想的な例で説明します。

心拍数を測れるウェアラブル機器はいろいろ出ています。

運動をやっている最中に、ブルートゥースでスマホにトばして、リアルタイムでどれくらい心拍が上がっているのかが分かるわけです。

スポーツクラブのトレッドミルで、耳たぶで心拍数測るのよりは、大分スマートになって、リストバンドやら胸や背中の運動の邪魔にならない所にセンサーや発信器をつけて、まあ、スタイリッシュにはなってきています。

リアルタイムでスマホに飛ばして心拍数がピー・ピッピッと見えるのです。

これだけでもテッキーは萌えます。

でも、SO WHAT?

何がうれしくて、心拍数なんか見ないといけないんでしょう?

「心拍数をリアルタイムに詳細に測れることの生活の中での意味」を設定しないと、ブレークする可能性は生まれません。

その「意味」が分かりやすく、明確で、人々の話題に上りやすくなってはじめて、ブレークの端緒が見えてくるわけです。

どんな「意味」を設定できるか? どんなふうにUXをデザインし、話題化できるか? 「スポリューション」チームで、ブレストをしてみました。

いくつかアイデアが出てきましたが、ここでは例として一つだけご紹介します。

UXアイデア例 「弱トレ(ヨワトレ)  ~体の弱い人にもスポーツの喜びを」

心拍数を測ることの意味を、単なる「トレーニング管理」だけではなく、「今までスポーツと縁のなかった人がスポーツの喜びを生活に取り入れる手段」と、位置づけし直すアイデアです。

本当に心臓に爆弾を抱えている人は、運動など危険なのかもしれませんが、もし常に詳細に心臓の状態を把握できるのであれば、危険を避けながら汗を流すこともできるのではないでしょうか?

心臓が弱い人のみならず、一般に、体が弱い人やお年寄りは、ともすれば危険だからと運動などに手出しをしませんが、実際やってみると、汗を流すのは結構キモチがよく、シアワセな気分になることがあります。

つまり、「体の弱い人やお年寄りが、病院に担ぎ込まれるリスクを負わずにスポーツの喜びを味わえるようにする」というところに、この機械の「意味」を置いてみます。

このように置いてみると、この機械が「トレーニングのやり方を変える機械」から、「生活を変える機械」に位置づけし直されるわけです。

<この機械のインターフェースデザイン(案)>

この「意味」を体現するには、どんなインターフェースがふさわしいでしょう?

出てきた発想は、「リハビリ・トレーナー」です。

何やら地味な感じがするかもしれませんが、この機械の意味は、「スポーツ慣れした人を応援する」のではなく、「今まで縁のなかった人がスポーツを生活に取り入れることを支援する」ことにあります。

ユーザーには、きっといろいろ不安があります。

健康上の不安、トレーニング上の不安、様々な不安に対しては、優しくかつプロフェッショナルなアドバイスが求められます。

必要なのは、「元気に応援するチアリーダー」でもなく、「厳しく管理する鬼コーチ」でもなく、「優しくかつプロフェッショナルなリハビリ・トレーナー」です。

危険は避けながら、でもある程度の負荷をかけながら、しかも相手を励ましながらリハビリを支援する理学療法士の役目を、この機械には担ってほしい。

であれば、その画面やスイッチには、どんなデザインでどんなインタラクションがあるべきなのか? そういう発想で、インターフェースをデザインすべきなわけです。

<この機械のネーミングと、話題化の文脈(案)>

こうした「意味」を話題化するためには、まず、この機械に「体の弱い人向きのスポーツトレーナー」を意味する名前をつけて世に送り出します。

仮に「弱トレ」と名付けてみましょうか。

そして、「ユニバーサルデザイン」や「高齢化社会」の話題が出るたびに、さまざまな番組やメディアコンテンツの取材機会を捉えて、そこに取り上げられるように仕組むわけです。

ユニバーサルデザインを標榜するにふさわしいアスリートに使ってもらうようにすると、そうした仕組みが活性化されます。例えばパラリンピアン、例えばシニア競技の世界チャンピオンが使用している様子は、多くの関心を集めるコンテンツになり得ます。

ユーザーインターフェース、ネーミング、コンテンツ発信…これら全てがUX(ユーザー体験)です。

つまり、このアイデアは「体の弱い人の生活にもスポーツの喜びを」という「意味」を軸に「話題化できるようにUXをデザインする」アイデアなわけです。

アイデアは他にもいくつも考えられますが、ここでは「話題化できるようにUXをデザインする」というのがどういう作業かは、お分かりいただけましたでしょうか? まとめます↓

<「話題化できるようにUXをデザインする」作業の考え方>

使う「意味」がなければ需要はありません。

使う「意味」が分かりやすくなければ需要は広がりません。

「意味」→UX

「分かりやすくすること」→話題化

どんな「意味」を設定し得るか、

その「意味」を感じさせるユーザーインターフェースとは、どんなデザインなのか

その「意味」が話題になるようにする言葉や文脈(コンテクスト)とは、どんなことなのか

 

私たち「スポリューション」チームは、そうした発想のお手伝いをしています。

(5)【スポーツ×ウェアラブル】の可能性

【スポーツ×ウェアラブル】で、生活が変わるかもしれませんね。

ウェアラブル機器を介して、生活の中で、今までなかったところに、スポーツの喜びが入ってくるわけですから。

「喜び」というところがまた、とてもいいですね。

「やらなくてはならない」「やるべきである」といって生活に入ろうとするものは、なかなか広がっていきません。でもこのスポーツというものは、「やると楽しい/うれしい/格好良い」といった、ポジティブなスタンスで入ってきます。だから余計に、ブレークする確率は上がってくるわけです。

「トレーニング」や「ダイエット」「フィットネス」といったマーケットは、入り口にすぎません。

「ウェルネス」や「メディカル」の方向に目を向ければ、そこには、「ユニバーサルデザイン」「未病対策」「高齢化対策」等々の成長市場が見えてきます。

 

‘ウェアラブルでスポーティーなユニバーサルデザイン’

‘ウェアラブルでスポーティーな未病対策’

‘ウェアラブルでスポーティーな高齢化対策’

 

「楽しい/うれしい/格好良い」ポジティブな世界が広がりますね。

商品カテゴリーとしても、「健康器具」「健康食品」「サプリメント」「薬品」「メディカルサービス」等々に広がっていきます。

「ウェアラブル&スポーツ」という「スタイル」が、新たな自己表現の形態として多くの人に広がることを考えると、そこには「おしゃれな人全般」をターゲットとした大きなマーケットが見えてきます。

 

‘ウェアラブルでスポーティーなライフスタイル’

‘ウェアラブルでスポーティーなファッション’

 

商品カテゴリーも、「ファッション」、「アパレル」、それらを使用する「場」としての「住宅」「インテリア」「自動車」、それに関連する「食」や「飲料」、それらを供与する場としての「外食」や「モール」、それらを提案するさまざまな「コンテンツ」等々、と、大きく広がっていきます。

「やるスポーツ」のマーケットだけでなく、「見るスポーツ」のマーケットにもチャンスがあります。

ウェアラブル機器で「トップアスリートたちの卓越したパフォーマンスを見える化する」ということは、「彼ら自身のパフォーマンス向上」のためになると同時に、「スポーツ興行」や「放送コンテンツ」など、「メディア」や「イベント」「エンターテインメント・コンテンツ」の世界でのビジネスチャンスも広げていきます。

例えば日本代表のサッカー選手が、どれくらいの距離をどれくらいのスピードで走って、どれくらい息が上がっていて、相手とのフィジカルコンタクトはどれくらい強くて、そんな中でもシュートを打つときにこんな角度でこんな回転をかけて、といったことが全部見えてくれば、見る楽しみは随分変わってきます。得点や失点や、試合展開の予測なんてものも、そのあたりのデータから見えてくるかもしれません。

 

‘ウェアラブル・スポーツ・データ・エンターテインメント’

 

それを見るためにその会員制サイトに登録する人、その放送チャンネルと契約する人が現れるかもしれません。これらのデータをソーシャルメディアでシェアし、議論する、新しいタイプのコミュニティーが生まれるかもしれません。

もっと大掛かりなことも考えられます。

ある試合の、各選手の記録を全てデータ化し、再構成して、ホログラフィーやプロジェクションマッピングの技術を使えば、別の場所でやった試合を、スタジアムで、3Dで再現できたりもするかもしれません。

「ワールドカップの日本戦を国立競技場で再現!」「セリエAで活躍中のあの選手のゴールシーンをスタジアムで再現!」…データですので、ズームアップも俯瞰も自由自在。カメラで捉えられなかったアングルも再構成して見ることができます。新しい興奮、新しい楽しみがそこに生まれます。そうしたイベントには大きな集客力がありそうです。

さまざまなクライアントのさまざまな商品に可能性があります。さまざまな技術がそこにからみ、さまざまな新しいものが生まれてきます。

その中で、ユーザーの生活の中に新しい「意味」を生じさせ、生活を変えた商品がブレークするのだと思っています。

私たち「スポリューション」チームは、この【スポーツ×ウェアラブル】の、広がりのある可能性に注目し、「UXデザイン+話題化」の切り口から、商品やサービスのポテンシャルを引き出し、ビジネスの可能性を広げるお手伝いができるように準備をしています。

★「スポリューション」チームとは?

スポーツコンテンツを、「メディア物件」として捉えるだけではなく、事業課題や、プロジェクト課題を解決するための「ソリューション」として捉え、企画する電通社内ユニットです。
チー ム内には、スポーツプランニングの実績が豊富な、戦略プランナー、プロモーションプランナー、コピーライター、アートディレクター、テクノロジスト、コンサルタント、プロデューサーなど、多種多様な人材をそろえており、ソリューションディレクター制によって、「表現のアイデア」だけでなく、「解決策のアイデ ア」を、ワンストップでご提供いたします。

プロフィール

  • Noguchi
    野口 嘉一
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター プランニング・ディレクター

    戦略プランナー/コンサルタントとして、IT系・外資系クライアントの担当を歴任。昨年から、スポーツをソリューションにするユニット「スポリューション」チームのプロデューサー。低成長・高齢化社会の中で、数少ない大きなビジネスチャンスとしてスポーツを捉えており、日本を、そして日本企業を、スポーツで元気にする野望を抱いている。

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